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慢性期医療への思い、内田病院における実践−患者さんに選ばれる病院であるために

内田病院 理事長 田中志子先生

医療法人大誠会は、沼田市にある内田病院に加え、訪問看護ステーションやデイサービスを含めた幅広い事業を展開しています。理事長を務める田中志子(たなか ゆきこ)先生に、慢性期医療に込める思いや内田病院における慢性期医療の実践について、お話を伺いました。


慢性期医療への思い

慢性期医療は、患者さんと対峙するとき自身の人間力を試される
慢性期医療は、患者さんと長い時間を共にし、生活や社会を含めたさまざまな側面からアプローチをしていきます。そのようななかで、患者さんと対峙するとき、私はいつも自身の人間力を試されているような気がしています。なぜなら、言葉の選び方や声のかけ方ひとつで、目の前の患者さんがよくも悪くも変化していくからです。

ですから、私たちは常に人間的に成長しなくてはいけない。そして、「真の思い」で患者さんと接し、患者さんの「真の言葉」を受け止められるように、患者さんや職員、目の前の人に対して、常に誠実に、真摯な態度で向き合うことが大切だと思います。

 

ケアの1つ1つはパーツ。組み合わせなければ意味がない
慢性期医療におけるケアの1つ1つは、パーツでしかありません。それらパーツに横串を刺すようにきちんと組み合わせて、考え、実践しなければ意味がないと思います。

たとえば、美味しい病院食を出していても、排泄ケアが行き届かない状態でする食事は決して嬉しいものではないでしょう。逆に、排泄ケアをがんばっていても、寒いフロアで食事をしていたら、快適とはいえません。

パーツであるケアの1つ1つが適正に行われ、すべてが揃って初めて、包括的なケアが実現し、患者さんの幸せが生まれると思います。


慢性期医療は「チョイス」−患者さんに選ばれる病院であること
救急などの急性期医療は、多くの場合、患者さんが選べるものではありません。命にかかわるような緊急事態のときは特に、患者さんは救急車で運ばれ、救命にフォーカスした医療が行われます。

しかし、慢性期医療は時間をかけて行うものですし、患者さんが病院を選べます。そういった意味で、慢性期医療こそ「チョイス」といえるのではないでしょうか。私たち慢性期病院は、常に「選ばれる病院」であり続ける必要があるのです。

選ばれる病院であり続けるためには、先に述べた、「誠実さ」や「包括的なケア」が大切であると考えています。

 

徹底的に「患者さん目線」を追求する
私たちのポリシーは、徹底的に「患者さん目線」を追求することです。
患者さん目線、と一言でいっても、実現することは容易ではありません。なぜなら私たちはつい「患者さんは、きっとこうしたい・されたいだろう」という予想だけで判断しがちだからです。

本当の意味で患者さん目線を実現するためには、「直接、患者さんの希望を聞く」ことが必要です。ですから私は、日々の回診で現場のスタッフに「患者さんに直接希望を聞いたのか?その判断は本当に患者さんの希望か?」といった点を必ず確認しています。


内田病院における慢性期医療の実践

摂食・嚥下ケア
当院では、2008年頃から歯科衛生士が摂食・嚥下のケアに介入しています。現在(2018年12月現在)は7名の歯科衛生士がおり、ほぼすべてのフロアに配属されて口腔ケアを行っています。また、月に2回ほど歯科の先生をお呼びして、誤嚥しない口づくりの指導や、嚥下造影検査などを実施しています。

 

栄養ケア
当院は「いかに楽しく、美味しく食べるか」さらに「口腔内をきれいに保つ」「体重を落とさない」といった点を重視して、栄養ケアを行っています。
1998年頃から高齢者ソフト食を採用し、刻み食はゼロです。さらに、「転んでも骨折しにくい体をつくる」ために、リハビリや外来通院の段階をも含めて、徹底的に栄養指導を行います。

*認知症ケアについては、次の記事でお話しします。

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