介護・福祉 2019.01.28
「大誠会スタイル」の認知症ケア−身体拘束ゼロ+脳活性化リハ5原則
内田病院 理事長 田中志子先生
医療法人大誠会は、群馬県沼田市にて医療・介護施設を中心に、複数の事業を展開しています。特に認知症には注力しており、パーソンセンタードケアを基本とした身体拘束ゼロ+脳活性化リハ5原則による認知症ケア『大誠会スタイル』を実践しています。
大誠会グループが進める認知症ケア「大誠会スタイル」とは?
パーソンセンタードケアを基本とした身体拘束ゼロ+脳活性化リハ5原則
私たちは、「パーソンセンタードケアを基本とした身体拘束ゼロ+脳活性化リハ5原則」による認知症ケアを精力的に行ってきました。
「パーソンセンタードケア」とは、認知症を持つ方をひとりの人として尊重し、ご本人の立場で考え、ケアを行うという考え方です。
また、「脳活性リハ5原則」とは、以下を指します。
1. 快刺激
2. 褒める
3. 双方向コミュニケーション
4. 役割
5. エラーレス(失敗を防ぐ支援)
パーソンセンタードケアを基本とした身体拘束ゼロ+脳活性化リハ5原則を行うことで、患者さんの自律性・自立度の向上、BPSD(認知症に伴う行動・心理症状)の軽減が期待できます。さらに、ケアの効率化・適正化によってスタッフの負担は軽減し、患者さんが適切な場所に帰れるようになります。
私たちは、この認知症ケアを「大誠会スタイル」と呼んでいます。
大誠会スタイルによるケアのアプローチ方法をご紹介します。
まず入院して1週目くらいまで患者さんは「混乱」の状態なので、信頼関係を構築し混乱を軽減するアプローチを試みます。そこから患者さんが「そわそわ」や「ふれあい」の時期に移行したら、患者さんができることや好きなことを探り、役割をみつけるようにします。さらに、患者さんが環境に「適応」する頃には、その役割を定着させ、他者との交流を推進していきます。
ケア提供時の基本原則は、「自分がされていやなことはしない」「患者さんにどうしてほしいかを聞く」ということです。これら基本原則は、たとえ新人の職員でも徹底して守ることにしています。
また、慢性期病院は生活の場としても機能するため、環境調整も非常に大切です。当院では、病院内の明るさや温度、香り、ものの配置などにこだわり、すべてに「そうなっている理由」があります。
大誠会スタイルを広めていきたい
私たちは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)と共に「大誠会スタイル」によって実際にどのような成果・効果が出るのかといった研究を、2017年より実施しています。また、2018年には、第60回全日本病院学会にて一般演題として発表の場をいただきました。
私たちは、このような活動を進めることで、大誠会スタイルが別の病院でも実践できることが証明され、より多くの認知症患者さんに対し適切な認知症ケアが提供できる状況をつくりたいと考えています。