キャリア 2019.06.28
みんなが働きやすい環境をつくるために−芳珠記念病院リハビリテーション室室長の思い
芳珠記念病院 西田好克さん
石川県能美市にある芳珠記念病院において、同院リハビリテーション室 室長として活躍する西田好克さんは、大学を卒業して一般企業に勤めましたが、夢を諦めきれず、理学療法士に転身しました。現在は、芳珠記念病院が属するほうじゅグループの全てのリハビリスタッフの管理者として、ご活躍されています。西田好克さんに、現在の業務やリハビリスタッフの管理者になった経緯などについて、お話を伺いました。
Q 西田さんの現在の業務を教えてください
私が所属するほうじゅグループには、芳珠記念病院、陽翠の里(介護老人保健施設)、ほうじゅ訪問看護・リハステーション緑が丘、共生型福祉施設G-Hillsなどがあります。それらの施設に勤めるリハビリスタッフの管理業務を主に担当しています(2019年4月時点)。
私は2009年から管理業務を担当するようになりましたが、当時、リハビリスタッフは20名ちょっとしかいませんでした。それから徐々に組織が拡大し、現在では52名のリハビリスタッフがいます(2019年4月時点)。
Q リハビリスタッフの管理者になった経緯を教えてください
- 前任の管理者から推薦を受けた
芳珠記念病院で働き始めて2年目が終わる頃に、当時の管理者が退職することになりました。次期管理者は上層部から任命されるものだと思っていたら、「自分たちで話し合って次の管理者を決めて」と言われ、驚きました。そして、退職される方が、私を推薦してくださり、リハビリスタッフの管理者の一人になったのです。
- みんなが働きやすい環境をつくるために管理者になろうと思った
入職からわずか3年目でしたが、もともと一般企業で品質管理業務に携わっていたことから、管理者を務めることに大きな抵抗はありませんでした。ただ、私のような若手が管理者になることによって、リハビリ部門の裁量権が小さくなり、上層部の決定に従うだけになってしまうのは回避したかった。そこで、引き受ける際に1つだけ条件を提示しました。
「私が管理者になるのは、みんなが働きやすい環境をつくるためです。決してトップダウンの決定事項を押し付けるのではなく、現場からの意見をきちんと吸収し、働きやすい環境をつくろうと思います。この取り組みを、応援してください。」
このように、私が管理者になる目的を法人側に伝え、その思いをしっかりと受け止めていただきました。
Q リハビリスタッフの管理者として、取り組んだことは何ですか?
- 現場の仕事と両立は難しく、管理業務に専念することに
理学療法士として患者さんに接したいという思いは強く、管理者になって数年は現場の仕事を続けていました。
しかし、実際に管理業務と現場の仕事を両立することは、とても難しいことでした。たとえば、リハビリ中に管理者としての役割で呼び出され、場合によっては、すぐに対応しなければならないことがあります。そのようなときは、リハビリを中断したり、他の理学療法士に交代したりしてもらうことになります。そのような事態が何度か起き、患者さんに迷惑をかけることが耐えられず、管理業務に専念することにしました。
- 現状の課題解決に向けて他部署との連携を進めた
管理業務に専念してからは、私は、まず現状のどこに課題があるのかを明らかにし、次に、見えてきた課題を解決するため、勤怠管理のシステム化や経営陣・他部署との連携を進めました。
それまでの課題の一つとして、職員の勤務時間に関する意識の低さがありました。一般企業であれば、残業をする際には事前に残業申請が必要ですが、病院には「定時」という概念が、あまり浸透していませんでした。目の前に患者さんがいれば、残業しているという意識なく、業務を続けてしまう傾向があります。ですから私は、まず「定時」や「残業」といった概念を、職員に浸透させることから始めました。
それと同時に、残業時間を可視化するため、勤怠管理の体制を整備しました。また、総務課の担当者とも、就業規則について根気よく話をしました。話し合いのなかでは、労働基準法を前提とした就業規則と現状を照らし合わせ、自分たちの業務をスムーズに遂行しつつ、就業規則を守るための方法を模索しました。これにより、自分たちの組織がどのような状態にあるのかを、関係者に客観的に認識してもらうことで、改善に向けて動きやすくなったと思います。
Q リハビリスタッフの管理者として、いま取り組んでいることは?
- 人(社会人)としての教育に積極的に取り組んでいる
リハビリスタッフにとって、技術や知識を研鑽することは大切なことですが、それとともに、人と協働するためのスキルを身につけることも、非常に重要です。なぜなら、私たちは、患者さんがもとの生活に戻れるようになることを目指し、日々たくさんの人々とかかわるからです。患者さんとだけではなく、一緒に働く職員と、うまくコミュニケーションをとることができなければ、どれだけ素晴らしい技術や知識を持ち合わせている人でも、その力を十分に発揮できないでしょう。
このような考え方から、「人(社会人)としての教育」に、積極的に取り組んでいます。たとえば、新しく入職された方にはホウレンソウ(報告・連絡・相談)の大切さをしっかりと教えたり、リーダー的な役割の方にはマネジメント研修などを受けてもらったりしています。
また、院内での人の呼び方にもポリシーがあり、師長など役職がある方に対しては「〜さん」ではなく、きちんと「〜師長」と役職を意識して呼ぶように指導しています(もちろん役職を把握したうえで、あえて呼び方を変えることは咎めません)。その理由は、役職を認識し、呼び方に反映することで、組織内の立場(上下関係、権限をもつ人物など)を意識し、適切なコミュニケーションが実現すると考えるからです。
これらの学びを通じて、職員一人ひとりが成長し、地域の患者さんに必要とされる存在として活躍してくれることを目指しています。