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志村フロイデグループの取り組み――地域包括ケアを支え、安心して暮らせるまちをつくるために

医療法人博仁会 理事長 鈴木邦彦先生

茨城県常陸大宮市を中心に、医療、介護、在宅医療など複数の施設を運営する“志村フロイデグループ”。その根幹を担う医療法人 博仁会で理事長を務める鈴木邦彦(すずきくにひこ)先生は、中央社会保険医療協議会(中医協)委員や日本医師会常任理事を歴任し、現在は、地域包括ケアを支える法人経営に加え、常陸大宮市のまちづくりにも尽力されています。

「中小病院は、地域と運命共同体」と語る鈴木先生に、同グループのあゆみや現在の取り組みについてお話を伺いました。


志村フロイデグループ――地域包括ケアを支えるために

志村フロイデグループは、1951年に開設された“志村大宮病院”を母体として、医療法人 博仁会、社会福祉法人 博友会、学校法人 志村学園、有限会社いばらき総合介護サービスという4法人で構成されています。

志村大宮病院は、地域包括ケアを支える病院として、リハビリテーション(以下、リハ)、緩和ケア、認知症ケアを中心に、かかりつけ医機能と専門医療を有し、入院、施設の入所から、在宅医療(ケア)まで切れ目ないサービスを提供しています。

 

 

志村フロイデグループは、現在に至るまで種々の変遷をたどりました。

私が志村大宮病院の経営に携わるようになった1990年代は、日本全体で高齢化が進展しており、当院でも、いわゆる社会的入院が増加していました。私はそのとき「もはや医療だけで地域の患者さんを支えるのは難しい。これからは在宅医療や介護が必要だ」と痛感したのです。

それからは在宅医療や、認知症を介護でサポートすることを学び、その後、地域リハビリテーションにおけるパイオニアのお一人である大田仁史(おおたひとし)先生に出会い、私たちが構想していた経営理念が地域リハの考え方とかなり近いことを知りました。そのようななか、当院があるエリアに急性期を担う公的病院を誘致する運動が始まり、突如、機能分化を迫られたのです。

 

このような流れのなかで、志村大宮病院は地域の中で機能分化し、行き場のない患者さんを減らすべく、かかりつけ医機能を備え、リハと介護に特化していきました。2000年には療養病棟、2003年には回復期リハビリ病棟、2015年には緩和ケア病棟が開設されました。そして現在、志村フロイデグループは、介護施設や訪問看護ステーションなどを展開し、地域包括ケアシステム*の一翼を担っています。

 

地域のニーズを読み取り法人全体で対応してきた結果、地域医療構想**や地域包括ケアシステムが提言される以前より、その考え方を実践しながら現在に至ります。

*地域包括ケアシステム:2025年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援を目的として、可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができることを目指す、地域の包括的な支援・サービス提供体制

**地域医療構想:将来人口推計をもとに2025年に必要となる病床数(病床の必要量)を4つの医療機能ごとに推計したうえで、地域の医療関係者の協議を通じて病床の機能分化と連携を進め、効率的な医療提供体制を実現する取り組み


志村フロイデグループにおける“まちづくり”の取り組み

志村大宮病院のような中小病院は、“地域と運命共同体”です。安心して暮らせるまちをつくらなければ人々はほかの地域に流出してしまい、地域の人口が減少すれば、そのまちには活気がなくなってしまいます。ですから私たちは、地域のニーズを読み取り、医療と介護を切れ目なく提供できる体制を整えるとともに、“フロイデDAN”の活動などを介して地域ネットワークを形成し、医療介護連携を通じた地域活性化など、積極的にまちづくりに取り組んでいます。

 

地域活性化プロジェクト“フロイデDAN”の活動

フロイデDANは、当グループ職員有志による常陸大宮市における地域活性化プロジェクトで、2010年に発足しました。プロジェクトメンバーは、作業療法士、介護福祉士、福祉用具専門相談員、介護支援専門員、管理栄養士、看護師などの多職種で構成された“プロボノ”です。プロボノは、公共善のために、社会人が仕事を通じて培った知識やスキル、経験を活用して社会貢献するボランティア活動を指します。

 

フロイデDANの活動の目的は、地域の方々の健康増進、医療や介護に関する啓発、地域のコミュニティ形成に向けた活動、社会参加の機会創出などを通じて、医療介護福祉の視点からまちづくりを担うことです。

 

フロイデDANは、行政機関(常陸大宮市の各課)、教育機関(大学、小学校、保育園など)、市内の農家、商工会、店舗などと連携し、地域ネットワークを構築し、地域の方々に向けた認知症予防カフェ、研究会、まちなかサロンなどの開催、どなたでも立ち寄れる“みんなの休憩所”の運営などを行っています。

たとえば“夏の寺子屋”では、地元の小学生と手習い師匠(高齢の方、障害を持つ方、学生など)が集まり、書道や絵画、工作などを一緒に行います。小学生は、寺子屋に来ると結果的に夏休みの宿題が終わっていて、手習い師匠を担う方々は、小学生をサポートすることで自分が活躍できる場所を見出せるという仕組みです。

 

みんなの休憩所 外観

 

まちづくりの拠点となるコミュニティカフェ“BAHNHOF(バンホフ)”

フロイデDANの活動の一環として、2012年には、まちづくりの拠点となるコミュニティカフェ“BAHNHOF(バンホフ)”をオープンしました。バンホフはJR常陸大宮駅と志村大宮病院の間に位置しており、地域の方々の憩いの場として機能し、さらにリハビリの歩行訓練の機会創出スペース(バンホフまで徒歩で行くなど)や、高齢の方の作品展示ギャラリーとしても活用されています。

フロイデDANのメンバーは、バンホフを拠点に、自治体行政や大学、地元メディア、市内の農家や商店街、芸術家や活動家など、さまざまな分野の地域の方々とのネットワークを構築しました。

 

BAHNHOFではこだわりの品を提供している

 

医療介護の分野で若手人材を集め、働きやすい環境を整備する取り組み

医療介護の働き口があれば、地方であっても若手人材を集められる可能性があります。また、医療介護の分野では一定の資格を取得することで、男女問わず活躍の機会を得やすいと考えました。そこで、私たち志村フロイデグループが率先して産休、育休、保育所設置と短時間勤務を実現し、仕事と子育てを両立させる環境を整備することで、高齢者の医療介護に加えて、地域の少子化対策にも貢献したいと思い、働きやすい環境づくりに向けた取り組みを進めています。

たとえば、病児保育や病後児保育を行う地域型保育所“フロイデキンダーガルテン”を開設し、けがや病気によって集団保育が難しいお子さんを一時的に預かることのできる環境を整えました。

 

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