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美原記念病院における認知症ケアの取り組み—認知症サポートチームの介入とその効果

美原記念病院 院長 美原盤先生

群馬県の南部、伊勢崎市にある美原記念病院は、1963年の設立以来、脳・神経疾患の患者さんを中心として、急性期からリハビリテーション、在宅復帰まで、一貫した医療・介護を提供するケアミックス型病院です。同院では、「認知症があっても人としての尊厳を保つケアの提供」をポリシーとして、認知症ケアに力を注いでいます。同院で働く認知症看護認定看護師(日本看護協会認定)の清水みどりさんに、その取り組みの内容についてお話を伺いました。


美原記念病院における認知症ケアの取り組み

  • 認知症ケアに対する認定看護師1)/専門看護師2)の介入−困難事例に対するサポートで認知症ケアの質を向上させる

当院は、「認知症があっても人としての尊厳を保つケアの提供」をポリシーとして、認知症ケアにあたっています。2015年に看護部にリソースナース室を立ち上げ、認知症看護認定看護師(日本看護協会認定)や老人看護専門看護師(日本看護協会認定)などを中心として、認知症ケア・看護の質向上に努めています。

1)認定看護師・・・ある特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を有する者として、日本看護協会の認定を受けた看護師

2)専門看護師・・・日本看護協会専門看護師認定審査に合格し、ある特定の専門看護分野において卓越した看護実践能力を有することを認められた看護師

 

ここからは、当院における認知症ケアに対する認定看護師の介入と、その効果についてご説明します。

 

 

認定看護師や専門看護師は、特定の看護分野において知識・技術を活用し、看護の質を向上させるという役割を持ちます。しかしながら、認定看護師/専門看護師が実際に患者さんのケアにあたらず、現場の看護師に助言をするだけでは、現場の看護師との心理的乖離が生まれ、本来の目的が果たせない可能性があります。

そこで、当院では、認知症ケアの困難事例に対して認定看護師/専門看護師が実践的に介入して現場をサポートし、全体的な認知症ケアの質を向上させることを前提に、認知症ケアの知識・技術の普及に努めることにしました。

具体的には、困難事例が発生した際に認定看護師/専門看護師が介入依頼を受け、提供された情報を分析し、問題の明確化と解決策の立案を経て、実際に患者さんのケアにあたります。このように、困難事例に対して認定看護師/専門看護師が実践的にケアを行うことで、患者さんやスタッフはその効果を実感しやすいため、認定看護師/専門看護師の発言に説得力が生まれます。すると、認定看護師/専門看護師が推奨する実践方法が看護計画に反映されるようになり、認知症ケアの質向上につながる、という仕組みです。

 

認知症ケアに対する認定看護師/専門看護師の介入—周囲からの評価

上述のような当院における認知症ケアに対する認知症看護認定看護師(日本看護協会認定)の介入に関して、看護師と看護補助者を対象に以下のようなアンケート調査を実施しました。

 

 

・調査期間:2015年12月10日~12月21日

・調査対象:174名(美原記念病院の病棟に勤務する看護師、看護補助者)

・回答数:161名(回収率:92.5%)

 

アンケート調査の結果、99%が、認知症看護認定看護師(日本看護協会認定)の介入によって認知症患者へのケアに対するストレスが軽減した(「ストレスが軽減した」と「どちらかと言えば軽減した」という回答を合わせたもの)と回答しました。

 

 

認知症ケアに対するストレスが軽減したことで、実際に現場で働くスタッフからは「以前よりも、認知症ケアに対して十分な時間を割くようになった」、「認知症看護認定看護師の助言や実践的なサポートによって、認知症ケアに携わるスタッフ間のチームワークがよくなった」という声が聞かれるようになりました。

 

このような活動をするなかで、2016年4月の診療報酬改定で「認知症ケア加算1」が新設されました。この加算は、身体疾患のために入院した認知症の患者さんに対する、病棟における対応力とケアの質の向上を図るため、病棟での取り組みや多職種チームによる介入を評価するものです。

当院では、以前から認知症ケアの重要性を認識し、認知症看護認定看護師を専従配置した組織横断的なケアを行っていました。そのため、「認知症ケア加算1」が新設された当初から、その取得が可能でした。

 

認知症サポートチームによる臨時巡回—困難事例に迅速に対応する

当院では、週に1回、認知症サポートチーム(DST)が全病棟を巡回しています。当院の認知症サポートチームは、医師、看護師、社会福祉士、薬剤師、リハビリに関わるスタッフ、必要に応じて公認心理師3)と栄養士が加わり、構成されます。

さらに、認知症にかかわる困難事例が発生した場合には、病棟スタッフが「自立度判定チェック表(当院作成)」を用いて患者さんの自立度を判定し、認知症サポートチームへ緊急要請を出します。そして、認知症サポートチームによる臨時巡回が行われます。

このように、認知症サポートチームによる定期的な巡回に加え、臨時巡回を行うことで、困難事例に対して迅速に対応できる体制を整えています。

3)公認心理師・・・公認心理師とは、公認心理師登録簿への登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、心理に関する支援行為。情報提供などを行うことを業とする者

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