病気 2018.08.30
永生会における慢性期医療の実践—①認知症ケア
衆議院議員 安藤高夫先生
安藤高夫先生が理事長を務める永生会と明生会は、八王子市や渋谷区を中心に医療介護サービス施設を幅広く展開し、認知症、摂食嚥下、排泄などに対するケアを徹底して行っています。永生会では、どのように慢性期医療を実践されているのでしょうか。
永生会の理念・取り組み
- 医療・介護を通じた「街づくり・人づくり・想い出づくり」
永生会の理念は、医療・介護を通じた「街づくり・人づくり・想い出づくり」です。
永生会は、1961年八王子市に開設した高齢者医療専門の病院を母体とし、八王子市の発展とともに時代のニーズに応じて施設を開設・増設し、現在に至ります。
- 3病院で機能分担を行う
永生会では、永生病院、南多摩病院、みなみ野病院で機能分担をしています。たとえば、永生病院では新しい地域包括ケアシステムを確立しつつ、南多摩病院では救急医療体制の拡充や地域医療連携の強化し、みなみ野病院でリハビリテーションや緩和ケアを行うことによって、地域医療の核となる病院を目指します。
安藤先生の思い
- さまざまなケアの方法をぜひ実践してほしい
次項より、さまざまなケアの方法をお話します。
特に、摂食嚥下ケア、排泄ケアの2つを適切に実施できれば、患者様本人、病院スタッフ、そして在宅へ移行した際の家族や在宅スタッフも楽になります。さらに、結果として日本の医療費を抑制できる可能性もあります。
医療機関の運営に携わる方々には、ぜひ本記事を参考にして、今後さらに重要性を増していく「慢性期医療」の現場で、有用な取り組みを実践していただけたら嬉しいです。
永生会が実践する「認知症ケア」
日本における高齢の認知症患者数は、2012年に462万人でした。これは高齢者(65歳以上の方)の7人に1人が認知症であるということです。さらに、2025年には有病率が5人に1人にまで上昇すると推測されています。
このような背景から、これからの社会において、認知症に対するケアは非常に重要なテーマであるといえます。
- 全職員に対し「ユマニチュード技法」を取り入れる
永生病院では、全職員に対してユマニチュード技法を取り入れ、認知症のみならず高齢者の視点に立ったコミュニケーションに注力しています。
ユマニチュード技法とは、体育学を専攻する2人のフランス人によって考案された、知覚・感情・言語による包括的なコミュニケーションに基づいたケア技法で、ユマニチュード技法導入が職員満足度の向上をもたらし、それが患者満足度のアップにもつながりっています。この他、認知症の向精神薬が減る、ケアの時間短縮を図ることができる、マンパワーを削減できるなど、副次的な効果も期待できます。
- 多職種によるコアメンバーと看護職員による「認知症回診」
2016年に「認知症プロジェクト」を開設し、認知症看護認定看護師、各病棟の看護師が中心となり、認知症の入院患者様に対する適切なアセスメントと具体的なケア方法に関する勉強会を開催しました。
2017年には、認知症ケア委員会として「認知症回診」をスタート。
認知症回診では、多職種によるコアメンバー(認知症サポート医、認知症看護認定看護師、リハビリセラピスト、精神保健福祉士、臨床検査技師)と、各病棟から選抜された看護職員がリンクナースとして回診を行います。他部署のケアの様子、回診メンバーのアドバイスなどを、自病棟での実践に活かしています。
- 「認知症初期集中支援チーム」の一員として地域で活動する
八王子市で活動する4つの「認知症初期集中支援チーム」のうち、1チームを永生病院が担っています。当チームでは、八王子市から在宅における認知症困難事例の依頼を受け、チーム員がその家へ出向き、適切な医療への橋渡し活動を行います。
*認知症初期集中支援チーム・・・複数の専門職が家族の訴え等により、認知症が疑われる人や認知症の人およびその家族を訪問し、アセスメント、家族支援などの初期の支援を、包括的、集中的(おおむね6か月)に行い、自立生活のサポートを行うチームを指します。
- 介護者講習
地域の住民に向けて、認知症をテーマにした講習会を開催しています。講習の内容は、認知症の基礎知識や対応方法、地域内の介護サービスの紹介、認知症の当事者が語る会などさまざまです。2017年には4回の介護者講習が開催され、多数の地域住民が参加されました。