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日本の介護をアジアへ――元気村グループにおける海外事業の取り組み

社会福祉法人 元気村グループ 理事長 神成裕介先生

全国で多数の介護事業を展開する元気村グループ。同グループは海外人材の登用を積極的に行うとともに、急速に高齢化が進む東アジアの将来を見据えて日本で培った介護のノウハウを輸出できるよう、海外事業や人材育成に長年取り組んでいます。理事長の神成 裕介(かんなり ゆうすけ)先生に、海外事業の取り組みに込める思いを伺いました。


急速に高齢化が進む東アジアで

団塊の世代が後期高齢者になることで予期される影響、いわゆる“2025年問題”に日本は今まさに直面しています。一方、中国や台湾など東アジア諸国でも高齢化が急速に進んでおり、日本と同じように介護の問題が起こると推測されています。

このような背景を踏まえ、まずは日本での海外人材の登用と育成、さらには高齢化が進む東アジアでの拠点づくりとそこで働く人材の育成に努めています。先の記事でもお伝えしたように、創業者である父が別事業で元々中国との人的交流を行っていた経緯があります。さらに海外での事業展開にあたり、社会福祉法人とは別に株式会社を設立しました。

 

中国大連爽やかな風社区養老センター

 


海外人材の受け入れ

元気村グループの介護施設には、すでに多くの海外人材が在籍しています。特定技能制度によるもの、技能実習生、国際結婚された方など、その背景はさまざまです。

特定技能と技能実習の提携先に関しては、私が実際に見に行き情報を精査したうえで信頼できるところだけに依頼をしています。というのも、外国人労働者が本国で借金を抱えて来日するような仕組みは不合理であり、そのようなケースでは何かしらのトラブルに発展する恐れがあるからです。また、今までは事務総合職での海外国籍の活躍はすでに推進されてきましたが、嬉しいことに2021年6月にグループ内の介護職において初めて海外国籍のユニットリーダーが誕生するまでに海外人財の活躍が推進されています。

 

元気村グループで働く外国籍の職員


寒さに強いモンゴルの方を東北の施設で登用

グループで働く外国の方の国籍としては、ベトナム・モンゴル・カンボジア・スリランカなどが多いです。将来的にはそれらの国々でも介護施設を展開したいと考えており、日本の介護現場で働いた経験や技術が現地で活用できるような未来像を描いています。現地での施設展開に際して、その拠点を任せられるような管理職・施設長候補の育成にもつなげたいという思いがあります。単に日本の介護人材不足を補う労働力として見るのではなく、帰国後に現地で活躍できる人材を育成するという視点は、当グループの海外人材育成における1つのポイントです。

 

元気村グループで働く外国籍(モンゴル)の職員

 

モンゴルから来てもらっているのは、寒さに慣れているからです。一般的に海外人材に多いインドネシアやフィリピンなどは気候が日本よりも暖かく、日本の冬の寒さをつらいと感じる方も少なくありません。当グループには東北にも施設があるので、そのような寒い地域でも働くのが苦にならない国はどこかと考え、モンゴルを選びました。

 

モンゴルの都市部 写真:PIXTA


中国・台湾での事業展開

元々中国とのつながりは深く、1990年代から病院・クリニックの運営(現在は一部撤退)や介護事業などさまざまなプロジェクトを展開してきました。中国国内においては合弁と独資事業で(上海・瀋陽・大連・広州)4つのエリアで介護事業が展開されています。また、最近もっとも力を注いでいるのが台湾での事業展開です。メインは台南エリアで、2つのデイサービスと2つの訪問介護事業所を運営しています(2021年5月時点)。また、台南エリアに介護施設を建設中で来年にはオープンさせるべく取り組んでいます。そのほかにも現地で医療・介護事業を立ち上げるためのコンサルティングの依頼を受けることも増えてきました。


最近は海外での人材育成にも注力

最近ではカンボジアの大学と提携して、大学に国際介護福祉科をつくりました。学生にはそこで日本語と介護の勉強をしてもらい、卒業後には特定技能保持者、あるいは技能実習生として日本の介護福祉専門学校に留学できるルートを整えています。今は学科ができてから1年目で、2年後には日本での実習をスタートできる見込みです。

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