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山本左近さんのこれまでのあゆみ−F1レーサーから医療・介護・福祉の世界へ

さわらびグループ CEO 山本左近さん

愛知県豊橋市にて、1つのエリアに医療、福祉、介護の機能を備えた「福祉村」を運営する、さわらびグループ。同グループCEOである山本左近さんは、もともとF1レーサーとして活躍されていましたが、2012年より医療・介護・福祉の世界に転身されました。これまでのあゆみと今の思いを伺います。


F1レーサーの世界から医療・介護・福祉の道に進んだきっかけ

  • 偶然にまとまった時間ができ、福祉村を訪れる

2011年の冬、欧州に滞在して現役でレーサーをしていた頃、たまたま日本に帰国する予定がありました。本当は次のレースのために渡航準備をしていたのですが、その直前に計画がすべてキャンセルになり、4か月先までの予定が空いてしまったのです。レーサーになってからずっと忙しく過ごしていたこともあり、せっかくまとまった時間ができたので日本で何かしてみようと思い立ち、福祉村を訪れました。

 

  • 「このまま福祉村を終わらせてはいけない」と強く思った

福祉村をまわってみて、私は2つのことに気づき、1つの疑問を抱きました。

まず気づいたことは、これからの日本は高齢社会を超えて、超高齢社会になっていくということ。それから、高齢社会へのアプローチや障害者支援、保育所など社会が求めるものを1つの場所に集約して複合的に提供している、福祉村の価値に改めて気づきました。


1つの疑問は、「みんなの力で、みんなの幸せを」という理念が、果たして福祉村の職員に正しく共有・理解されているのか、ということでした。そのように感じたのは、病院の理念を記した看板がコケだらけで汚れていたのをみたからです。たまたま掃除をしていないだけかもしれない、とも思いましたが、残念ながら、数日経っても看板は同じ状態で放置されていました。

 

レーサー時代にさまざまな人生に触れるなかで、「目的を見失った組織は必ず崩壊する」ということを、目の当たりにしてきました。ですから、コケで汚れたまま放置された理念の看板をみたとき「ああ、この法人はもう終わる」と予感しました。

 

そして同時に「このまま福祉村を終わらせてはいけない」と、強く思いました。これからの日本で必要とされる医療、介護、福祉、そのニーズに応えなくてはならない。そして、福祉村で働く人々や利用者の人生を預かる、この仕事の価値を守らなければならない。この分野で自分にできることがきっとあるはずだ、と思い、福祉村に戻ることを決意しました。

 

  • 本当は8歳の頃に「医師にはならない」と心に決めていた

実は、この日まで病院を継ぐという発想はまったくありませんでした。というのも、話は8歳の頃、病院施設の落成式が行われた日に遡ります。目の前にそびえ立つ大きな建物、たくさんの人々。そのとき、私には、人生のレールがはっきりとみえてしまいました。目の前に敷かれたレールがみえた瞬間に、それには乗りたくないと思いましたし、何より、「このまま医者になっても、父親を超えることはできない」という確信にも近い予感があり、自分は医師以外の道に進もうと決めたのです。


しかし、人生は何が起こるかわかりませんね。何気なく訪れた福祉村で、新たに挑戦するべき課題に出会いました。レーサーをやめたのは29、30歳の頃でしたから、数年の間は「やめるには早い」「もったいない」といった声をたくさんいただきました。

 

一般的にいえば、レーサーをやめるタイミングとしては確かに早いでしょう。しかし、医療・介護・福祉の世界に入ってから、F1レーサーとして挑戦していた頃と同程度、もしくはそれ以上の情熱を仕事に注いでいます。あのときいくつかの偶然が重なって今ここにいられることを、心から嬉しく思います。


福祉村病院に戻ってから

  • まずは理念の看板の掃除を。そして病院史を知ることから始めた

福祉村に戻ってまずしたことは、コケで汚れた理念の看板をきれいにすることです。バケツと雑巾を手に、看板を隅から隅まで磨きました。「みんなの力で、みんなの幸せを」という理念を、これからはきちんと職員みんなで共有していこう、と強く思いました。

それから、創立時からの病院史を読み漁りました。福祉村がこれまでどのような歴史を歩んできたのかを、具体的に知る必要があると思ったからです。

当時、福祉村に新しく入ったというより、戻ってきたような感覚でした。障害者支援施設「あかね荘」や「珠藻荘」には幼少期から知っている顔が何人もいましたし、福祉村で一緒に育った人たちとまた一緒に過ごせる、という気持ちになりました。そのように思えたのは、温かく迎え入れてくださった職員の方々のおかげだと思います。


山本左近さんが考える、慢性期医療の魅力とは?

  • 患者さんとご家族の幸せに携わることができる

慢性期医療は、患者さんはもちろんですが、ご家族とかかわる機会が多くあります。たとえば、認知症の患者さんの場合、患者さんの背景や思い、希望などを知るためにご家族に介入していただいたり、ケアに関する協力を仰いだりすることがあります。

このようなとき、しっかりとよい慢性期医療を提供することで、患者さんとご家族の幸せを支えられる。このように、「一家族の幸せに携わる」ことが、慢性期医療の魅力だと考えています。

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