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富家病院における新型コロナウイルス感染症への対応

富家病院 理事長 富家隆樹先生

埼玉県ふじみ野市で回復期・慢性期の患者さんを受け入れ、重症患者さんへの集中的な治療や徹底的なリハビリテーションを提供する富家病院。同院は、新型コロナウイルス感染症による混乱のなかで病院の敷地内に5床の感染症仮設病棟を設置し、陽性と診断された患者さんの対応にあたりました。感染対策を含めて実際にどのような取り組みをされたのか、同院 理事長の富家 隆樹(ふけ たかき)先生にお話を伺います。


新型コロナウイルス感染症による収益面での影響

当院では、新型コロナウイルス感染症のクラスターが現時点で発生していません。陽性者は数名発生していますが、全て単発で済んでおり病棟の閉鎖などがなかったため、収益面での大きな影響はありませんでした。ただ、2020年5月頃には30床の1病棟を5床の新型コロナ対応病床にしていたため、移行期の病床稼働率が低下した時期がありそこでの収益が低下しました。また、同年12月にグループ内のデイサービス施設で職員1人の陽性者が出た際、利用控えが見られ稼働率が低下しました。


出入口における感染対策

元々は病院の出入口が複数あったのですが、感染対策のために出入口を1つにしました。現在は、患者さんやご家族、職員、業者の方など全て、1つの出入口を使っていただいています。業者の方が物を納品される際には、基本的には全て玄関で職員が納品物を受け取り、院内に入る必要がある場合には全員に抗原検査を受けていただきます。また、定期的に当院に出入りする美容師や歯科医師などの方においても、院内に入る前に抗原検査を受けていただくようにしました。出入口では体温測定、手指の消毒を行い、院内ではマスクを着用していただくよう注意喚起を促しています。

 

富家病院 院内の様子


病院の敷地内に感染症病棟を設置し、陽性患者さんに対応

2020年10月、駐車場にプレハブのユニットハウスを設置して個室5床の感染症病棟にしました。元々は病院内で5床確保していたのですが、ゾーニング(清潔な区域とウイルスに汚染されている区域を分けること)の面で完全に動線をほかの病棟と別にすることが困難だと分かり、感染症病棟を別に建てることにしたのです。

開設当初は最低限の設備で、水道やエアコン、酸素配管のみでしたが、動脈血酸素飽和度マルチモニターシステムや電子カルテシステム、インターネット回線などのインフラも整備され、十分な治療を行える環境が整っています。これまでに新型コロナウイルス感染症の軽症から中等症Iとされる30名以上の患者さんを受け入れています(2021年2月時点)。

 

富家病院の敷地内に設置された感染症病棟


面会制限とオンライン面会

当院では2020年3月1日より、入院患者さんへの面会制限を設けています。ただ、1回目の緊急事態宣言が解除された直後の5月末と、感染状況が落ち着いていた11月末には一時的に面会を可能にしましたが、抗原検査で陰性を確認したうえで15分間面会できるというかなり厳しい制限を設けていました。

また、面会制限を行う代わりに、入院患者さんの顔を見たいというご家族向けに“オンライン面会”を拡充しています。当院のオンライン面会は、外来に来ていただき、タブレット端末を使って入院患者さんと面会していただくというものです。

 

富家病院で実施しているオンライン面会の様子


入院時PCR検査

当院では2020年の5月から新規患者の入院時にPCR検査を実施しています。8月には自院で検査ができるように検査機器を導入し、11月にはPCR検査器は2台体制になりました。ドライブスルー形式でPCR検査を行い、陰性を確認後に病棟へ入っていただくようにしています。

 

ドライブスルー形式でPCR検査を実施する富家病院の職員


陽性者の発生報告、感染が疑われる場合のPCR検査の徹底

クラスターの発生を防ぎ、通常の診療や新型コロナウイルス感染症患者さんの対応を円滑に行うためには、陽性者の発生後すぐに報告が上がる管理体制と、感染が疑われるケースを含めてPCR検査を徹底的に行うことが重要です。

実際に当院では、発熱症状のある職員がいた場合、すぐに私のところへ報告が来る体制になっており、すぐさまPCR検査を実施しています。最近あった例では、グループ内の施設利用者がほかのデイサービスに通っており、そのデイサービスで新型コロナウイルス感染症の陽性者が確認されたため、その利用者と、その方と接触したと思われる職員全員にPCR検査を行いました。職員に対しては、現在全職員に月2回の抗原検査もしくはPCR検査を義務づけています。

 

職員に対するPCR検査の実施


職員へのケア

ニュースなどで新型コロナウイルス感染症の患者さんを対応したスタッフに対する差別があったという話を聞くと非常に悲しくなります。病院トップの理事長として、感染病棟で新型コロナウイルス感染症と直接向き合っている職員に尊敬と感謝の気持ちを持っていること、そしてその思いを形で表そうとしていること、さらに感染症病棟で働く彼らが病院にもたらす恩恵について情報をしっかりとグループ内に発信することで、知識や理解を深め、皆が気持ちよく働ける環境を作りたいと思っています。


新型コロナウイルス感染症の治療の経験から学んだこと

「新型コロナは風邪やインフルエンザのようなものだ」と言う人がいますが、実際に治療を経験して思うのは「この病気を軽視してはいけない」ということです。その病態はかぜやインフルエンザとは大きく異なります。発症前の無症候の頃から強い感染力を呈して感染を拡大させます。軽症・中等症Iの方でも胸部CTを撮るとほぼ全例に肺炎像が見られました。また10歳台の若い方でも徐脈性不整脈(正常な心拍数は60〜100回であるところ、1分間の心拍数が60回未満になった状態)を起こす例がありました。退院してPCR検査が陰性になっても味覚障害が残っている方もいます。このようなさまざまな症状や後遺症は、風邪やインフルエンザには見られません。

また、当院は通常慢性期の患者さんを中心に診ていますが、感染症病棟において新型コロナウイルス感染症の患者さんを診療して症例を重ねたことで、治療やケアのノウハウが蓄積されてきました。新型コロナウイルス感染症は、“話でしか聞いたことのない病気”ではなく、実際に対応し学ぶことができました。このような経験は、コロナ禍の最中だけでなく、新型コロナウイルスと共存していくアフターコロナでも生きてくると思います。


全国の医療従事者へのメッセージ

2021年2月17日に日本にワクチンが到着しました。2回目の緊急事態宣言の解除も3月に迫り、コロナ禍の収束への道筋が見えてきております。私たち医療従事者は業務においても私生活においても大変な忍耐と張り詰めた緊張を強いられてきました。しかし、ようやくその終わりが見えてきた今、希望を持ってもう少しだけ頑張りましょう。院内、施設内だけでなく国内における感染制御を成功させるべく、「できることはすべてやる」をこれからも進めていきます。

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