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地域医療における「総合診療医」の存在、現状の課題

東邦大学医療センター大森病院 院長 瓜田純久先生

わが国では、高齢化の進展によって複数の疾患を抱えた患者さんが増加し、これまでの「臓器別・疾患別」という枠を超えた、「総合診療」のニーズが高まっています。総合診療医と地域医療のかかわり、現状の課題について、東邦大学医療センター大森病院 院長、同 総合診療・急病センター(内科)センター長を務める瓜田純久先生にお話を伺いました。


地域医療と総合診療医(総合診療科)−大森病院の例

  • 「何かあれば大森病院へ」と信頼してもらえる存在であるために

当院は、特定機能病院でありながらも、患者さんのおよそ8割が半径5km以内からきており、地域の基幹病院としての役割も担っています。すなわち、特定機能病院としての専門性と、いわゆる市民病院として患者さんを広く受け入れる役割を求められているのです。

 

このような当院の特色を前提に、私たち総合診療科は、各診療科がそれぞれの専門性を活かせるようサポートする役目を担います。記事1でお話ししたように、総合診療科は唯一の「断らないための専門診療科」なのです。さらに、地域の医療機関に対しては、スムーズに患者さんを紹介し合える関係を築くよう心がけています。

 

地域住民や地域の医療機関から「何かあれば大森病院へ」と信頼してもらえるような病院でありたい。そのために、総合診療医の存在は今や、なくてはならないものになっているのです。


地域医療と総合診療医−現状の課題

  • 専門医制度のローテートシステムには課題がある

現在の専門医制度において総合診療医は、研修期間に複数の病院をローテートすることになっています。しかし、このローテートシステムはあくまで医師のスキルアップを目的としたものであり、患者さんにとってはあまりメリットがありません。患者さんがようやく担当医の顔と名前を覚えた頃に、医師がどこかへ行ってしまうという状況は、決して理想的なものではないでしょう。

 

総合診療医の育成には「地域に根ざし、患者さんに寄り添う医師を育てる」という大義名分があることを考えれば、現行のシステムにはまだ課題があると思います。

総合診療医のローテートは義務にせず、逆に1つの医療機関にとどまって長く患者さんと付き合えるスタイルがあってもよいはずです。ローテートをするかしないか、選択制にするということです。

 

現行の制度上、さまざまなスキルを身につけるために病院をローテートするときには、「患者さんや受け入れ先の病院にどれだけ貢献できるか」という視点を持っていただきたいです。そのような視点で学ぶと、結果的にたくさんのことを吸収できると思います。

 

病院を移るとき、「先生、ここにいてください」といってくれる患者さんがいて、しかもそれが複数人だとしたら、きっとその研修医が学んだことは大きいはずです。

 

  • ローテート先の医療機関に基準を設け、実践的な研修を

また、地域医療における総合診療の視点としては、ローテート先の医療機関について基準を設けるべきではないでしょうか。なぜなら、総合診療医を育成するためには、地域に根ざして患者さんに寄り添う医療を提供している、すなわち「総合医」、「家庭医」を体現している医療機関で学ぶことが近道だと思うからです。

 

たとえば、親子3代で地域医療を続けている、長期間勤務している医師が多い、地域多機能型病院として地域に密着した医療を展開している…ほかにもさまざまな条件が考えられますが、そのような場所で学ぶことができれば、きっと総合診療医として、幅広い経験ができるでしょう。

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