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医療・介護における究極のゴールは「尊厳の保障」−和香会、博愛会における慢性期医療の実践

日本医師会 常任理事 江澤和彦先生

江澤和彦先生は「医療・介護における究極のゴールは、尊厳の保障である」というポリシーに基づき、岡山県や山口県でいくつもの施設を経営されています。実際の医療・介護現場で、「尊厳の保障」はどのように実践されているのでしょうか。記事1に続いて、お話を伺います。


「尊厳の保障」とは?

  • 患者さまが生き生きと暮らすために医療・介護は存在する

記事1でもお話ししたように、私は、医療・介護の究極のゴールは尊厳の保障にあると考えています。尊厳とは、患者さまが自分らしく生き生きと暮らせること、それを保障することが、医療・介護の存在意義だと考えています。

 

たとえば、好きなものを自分で食べる、気持ちよく入浴をする、トイレで排泄するといった日常生活のことを、自宅にいた頃と同じように病院でも行うことが、これからますます大切になっていきます。

 

このような考え方に基づき、私は「患者さまのそれまでの生活にないことをどれだけ現場で排除できるか」という視点で、医療・介護施設を設計し、運営しています。


医療法人 和香会、博愛会における「尊厳の保障」の実践

  • 面会時間の制限を撤廃し、24時間365日面会可能に

20数年前に経営者になってから、まず、病院の面会時間の制限をなくしました。もともと、面会時間が日中に限られていることに疑問を抱いていました。そのような制限があることで、自由な時間に患者さまと家族が会えないわけですし、日中に仕事を休む必要が生じるため、ご家族の負担も大きいと感じていたのです。

 

24時間365日、いつでも面会できることは、好きなタイミングで患者さまとご家族が会えますし、ご家族が患者さまを思う大切な想いを叶えることができます。さらに、お看取りの瞬間がきたとしても、時間を気にすることなく、ご家族は患者さまの最期に寄り添うことができます。

 

  • 患者さまのお誕生日当日にお祝いを

当法人の施設に滞在されている患者さまや利用者の方に対しては、入院・介護施設・ショートステイ問わず、お誕生日の「当日」に、ご希望の食事を無料で提供するサービスを行っています。月に一度のお誕生日会というのでは、足りません。なぜなら、自宅で過ごしているとき、お誕生日は当日に祝うものだからです。それが、患者さまの「日常」なのです。


もちろん、そのぶん手間もかかりますし、たいへんなこともあります。現場スタッフの協力なくして、このサービスは実現できないでしょう。スタッフの頑張りに、いつも感謝しています。お誕生日当日にお祝いをすると、ときに、涙を流して喜んでくださる患者さまがいらっしゃいます。そのようなとき、私も現場のスタッフも、非常に嬉しく思います。

 

  • 全室個室の介護老人保健施設「ぺあれんと」

2004年、山口県宇部市に介護老人保健施設「ぺあれんと」を開設しました。当施設は、全室個室で、すべて異なる間取りになっています。

 

特にこだわったポイントは、ヒノキを使った個浴風呂と、高齢者の体格に合うようオーダーメイドしたテーブルや椅子です。また、起床時刻や食事のタイミングは自由で、部屋には自宅から好きなもの(家具や食器など)を持ち込んでいただきます。

 

さらに、食事をスタッフと一緒につくったり、積極的に地域交流を行ったりすることで、個々の社会参加を促しています。できる限り管理的な要素を減らし、利用者が自然な形で生活できる環境を目指しています。

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