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どんな場所であっても、患者さんを幸せにするための研究を続けていきたい—水野英彰先生の思い

目白第二病院 副院長 水野英彰先生

わが国では、世界にも類をみないスピードで高齢化が進展しています。東京都福生市の目白第二病院で副院長を務める水野英彰先生は、高齢者医療におけるよりよいアウトカムを目指して、経腸栄養管理の方法などを研究・実践されています。そのような研究にかける思いや、大切にされているポリシーについてお話を伺います。


「経腸栄養管理」という分野に携わるようになったきっかけ

2006年に、目白第二病院での勤務をスタートしました。診療のなかで、思うように治療の効果が現れない、あるいは想定よりも合併症や有害事象を認める症例の要因について、考えを巡らせるようになりました。その際、「患者さんが高齢の場合、低栄養によってフレイル(虚弱状態)に陥り、適切な介入がないことにより病気が重症化する、あるいはアウトカムが出にくい状況があるのではないか」という考察に辿りつきました。

 

フレイルがベースにあり、結果的に治療効果が現れないとすれば、そのようなケースに対して、まずは患者さんの栄養状態を改善する必要があります。さらに、経口摂取が難しい方の場合には、経管栄養法などを選択し、栄養状態の改善を目指すべきだと考えました。このような考え方は、現在力を注ぐ「経腸栄養管理の実践」の基盤になっています。

*水野英彰先生が実践する「経腸栄養管理」については、記事1をご覧ください。


なぜ医師を志したのか?

15歳の頃、母が卵巣がんを発症し、他界しました。その出来事が、私に医師を志すきっかけを与えてくれたように思います。それまでは学力に特段の自信があるというわけでもなく、「医者になるなんて、夢のまた夢」と思っていました。

母の死を経験したことで、「医師になって病気を治す、あるいは研究によって病気を解明して人の命を救いたい」という大きな目標ができました。そのような強いモチベーションがあったからこそ、大学入試や国家試験といった厳しいハードルを乗り越え、目標に向かって邁進することができたのかもしれません。


水野英彰先生が大切にしている臨床医としてのあり方

「どんな臨床の場においても、患者さんを幸せにするための研究はできる」

1998年に杏林大学医学部を卒業したのち、同学の第一外科(現・消化器外科)に在籍し、消化器外科医として働きました。そこで、阿部 展次(あべ のぶつぐ)先生という恩師に出会います。阿部先生は、患者さんの身体的な負担が少ない治療を追求し、私たち後進をたいへん熱心に指導してくださいました。

阿部展次先生(写真中央)と、学会での一コマ

 

「どんな臨床の場においても、患者さんを幸せにするための研究はできる」

阿部先生から教えられ、非常に感銘を受けた言葉です。日々の診療のなかで、患者さんのためによりよい治療の可能性を追求すること、アカデミックな視点を忘れずにいること。このような臨床医としてのあり方は、私の医師人生において大切な指針となっています。

阿部先生は、現在、大学病院に勤める傍ら、目白第二病院でも週1回ほど非常勤で診療をしてくださっていて、公私共に大切な存在です。

 

医師という仕事には、さまざまな働き方や道があります。しかしながら、どんな環境であっても、そこに自分の居場所を見出し、目の前の患者さんはもちろんのこと、医療という世界に貢献するために全力を尽くすことが、医師の使命であると捉えています。

*2019年7月時点


印象的だった患者さんのエピソード

これまでにさまざまな症例を経験しました。どの患者さんも忘れることはありませんが、そのなかでも特に、祖母の最期を見届けたことは強く印象に残っています。

祖母は、90歳を過ぎた頃にMCI(軽度認知障害)と診断され、有料老人ホームに入所しました。それから2〜3年の間に、転倒による骨折をきっかけにADL(日常生活動作)が低下し、さらに認知障害が進行していきました。一時的に状態が悪化した際には、当院で診療をしたこともあります。最終的にはものを口から食べることができなくなり、この世を去りました。

 

93歳でしたから大往生とも言えますが、1人の医師として、もっと何か工夫できることはなかったのか、よりよいケアを提供できなかったのか、と思いを巡らせました。もしも自分にもっと知識や経験があれば、祖母のことを少しでも楽にさせてあげられたかもしれない、本人の希望を叶えられたかもしれない、とも思いました。

目白第二病院における祖母との写真

 

祖母の最期を見届けたこの経験を通じて、一臨床家としての未熟さを感じたのと同時に、高齢者医療に関してもっと何か貢献できることを見つけたい、と模索するようになりました。日々の診療のなかでよりよいケア・治療のヒントを見つけ、少しずつ論文を書いたり講演を行ったりする。現在は、このような取り組みに情熱を持っています。そこがどんな場所であっても、患者さんを幸せにするための研究をこれからもずっと続けていきたいと思います。

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