介護・福祉 2021.06.14
“世界一の高齢社会”となった日本――グラフで見るその現状
原土井病院 理事長 原寛先生
1980年代頃から高齢化が急激に進み、2005年以降、世界の先進諸国でもっとも高齢化率が高くなっている日本。今や“超高齢社会”や“人生100年時代”という言葉は社会に浸透しつつあり、そのなかで人口構造の変化による社会保障制度の問題や介護人材の不足などが指摘されています。今回は、健やかで生きがいを感じられる生き方を広めるべく“元気100倶楽部”の活動に尽力する原 寛(はら ひろし)先生(原土井病院 理事長)に、我が国の高齢化の現状と課題について伺いました。
※元気100倶楽部の詳細はこちらをご覧ください。
世界一の高齢社会、日本
日本では1980年代頃から急速に高齢化が進み、2005年には先進諸国の中でもっとも高齢化率の高い国となりました。高齢化のスピードは主要国の中でも非常に速いです。たとえば高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)が7%から14%になるまでに要した時間を比較すると、フランスで115年、スウェーデンで85年、アメリカで72年かかっていますが、日本は24年という速さです。そして、1994年に高齢化率が14%となってからも高齢化は進展し、2020年には28%を超えました。
参考:https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/gaiyou/pdf/1s1s.pdf
一方、韓国やシンガポール、中国などアジアの主要国では、日本を上回るスピードで高齢化が進んでいるという事実もあります。このようななかで、世界一の高齢社会である日本が今後どのような社会を作っていくのか、そして高齢化の進む他国を先導する見本になれるのか――それが今の日本における課題の1つではないでしょうか。
延伸し続ける平均寿命
高齢化が進むと同時に、日本人の平均寿命は延伸し続けています。今からおよそ120年前の1900年代、平均寿命は男女共に44歳くらいでした。今でいう働き盛りの世代ですね。しかし、1950年には平均寿命は男性が58歳、女性が61.5歳に延び、2015年には男性が80.75歳、女性が86.99歳となりました。
参考:https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_1_1.html
このように右肩上がりで平均寿命が延びていく日本。将来推計では、2065年には男性の平均寿命は84歳を超え、女性は91歳を超えると見込まれています。
“健康寿命”をいかに延ばすのかが課題
平均寿命が延伸するなかで重要なポイントは、“健康寿命(日常生活に支障のない期間)”をどのくらい延ばせるかという点です。
通常、高齢になると体の調子が徐々に悪くなり、日常生活自立度が低下してフレイル(加齢に伴い運動機能・認知機能などの予備能力が落ち、ストレスに対する回復力が低下した状態)に陥る可能性があります。日常生活自立度が低下する要因として、骨折や脳卒中(脳の血管が破れる、あるいは詰まって脳に血液が届かなくなり脳の神経細胞が障害される病気)、心筋梗塞(しんきんこうそく)(心臓の血管に血流障害が起こり体へ必要な血流を送り出せない状態)など、さまざまなきっかけが挙げられます。高齢の方は元々体力が低下していたり基礎疾患を持っていたりすることから、病気やけががきっかけでフレイルになり、さらには寝たきりの状態に陥ってしまう可能性があるのです。
以下のグラフは、日本人の平均寿命と健康寿命を示したものです(2016年データ)。
参考:https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/gaiyou/s1_2_2.html
このグラフから、要介護となる期間が男性はおよそ9年、女性はおよそ12年もあることが分かります。長生きできたとしても、介護を要する状態では自分の思うように生活しにくく、社会参加も十分にできません。本人が幸せに生きるためには自立した生活を送れることがとても大切です。さらに、少子高齢化が進む日本では“支えられる世代”の増加により社会保障給付費の増加が問題となっており、社会全体で見ても、いかに健康寿命を延ばすかは非常に重要な課題といえるでしょう。
“ずっと元気で自立した生活”を送るために
以下の図表をご覧ください。これは60歳代以降(男性)に自立度がどのように変化していくのかを示したグラフです。
参考: https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoujo/jisedai_healthcare/sinjigyo_wg/pdf/001_04_00.pdf
縦軸では上から、日常生活に支障のない自立した状態、買い物・乗り物など一部の日常生活動作に支障が出ている状態、食事・排泄など生活の基本動作に支障をきたした状態、そして死亡までの変化を表し、横軸が年齢を示しています。
7割ほどは70歳代から自立度が落ちていき、徐々に生活に支障をきたして援助が必要な状態になっていきます(グラフのオレンジの線)。また、2割ほどは70歳代で急激に自立度が低下し、早いうちに援助が必要な状態に陥ることが分かりました(同紫の線)。しかし一方で、残りの1割ほどは80歳代後半になっても自立し、日常生活を支障なく過ごすことができています(同緑の線)。
私たち“元気100倶楽部”は、この1割の人のようにずっと元気で自立した生活を送るためには何が必要なのか、元気な人は実際にどのような生活を送ってきたのか、その元気の源を探り、普及させる活動を行ってきました。次の記事では、その考え方と具体策についてご説明します。
※お話の続きは、こちらの記事をご覧ください。