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中国から来日し看護師として働く沈樹敏さんのあゆみと思い【前編】

富家病院 看護副主任 沈樹敏様

少子高齢化と人口減少が進む日本で、年々増加する外国人労働者*。その数は約166万人(2019年)にのぼり、さまざまな分野で人材不足を解消する手立ての1つとして重宝されています。国籍としては中国がもっとも多く、約42万人(全体の25.2%)といわれています。そのようななか、埼玉県ふじみ野市にある富家病院では50人以上の外国人スタッフが医療・介護の現場で活躍中です(2021年3月時点)。2016年に中国四川省から来日して同院に看護師として入職、2019年に看護副主任となった沈 樹敏(しん じゅびん)さんに、これまでのあゆみと思いを伺いました。【前編】

*2006年以降、雇用対策法に基づき、全ての事業主に対して外国人の雇用と離職に際してその方の情報や在留資格等を確認し、厚生労働大臣(ハローワーク)へ届け出ることが義務付けられています。


沈樹敏さんの故郷、中国四川省について

故郷である四川省は、三国志で有名ですね。三国時代の国の1つ“蜀漢(しょくかん)”にあたる場所です。長い歴史があり、伝統的な建物・文化と現在のものが融合していて、面白いと思います。中国の南に位置し、複雑な地形のためにさまざまな植物が育ちます。私が幼い頃にはどの家にも果物の木があって、お店で果物を買う必要がありませんでした。

 

中国四川省の成都市 写真:PIXTA


なぜ看護師になろうと思ったのか

私が幼かった頃、祖父ががんを患ってしまいました。当時、中国では家族を自宅で看取ることが多く、私たちも最期まで自宅でお世話をしていたのですが、末期がんだったこともあり、祖父がつらそうにする姿を目の当たりにしました。自分たちに看護・介護の知識がなかったので褥瘡*(じょくそう:いわゆる床ずれ)ができてしまったことを覚えています。苦しそうな祖父を見てつらく、「自分にもう少し専門的な知識があれば――」と本当に悔しく思いました。

それからも親戚の中で病気になる人がいて、自分が何もできないことがとても苦しかった。幼少期からのそんな思いが積み重なり、大学の進路選択で「看護師になる」と決めたのです。

*褥瘡:寝たきりの状態が続くことにより体重で圧迫されている部分の血流が悪化し、皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができること


日本で働こうと思った理由

両親が仕事の関係でいろいろな場所に住んでいたので、子どもながらに新しい世界を見るのが楽しかった記憶があります。また、12歳くらいから寮生活をしていて、その頃からずっと海外に行くのを楽しみにしていました。

 

寮生活をしていた頃の沈樹敏さん(写真中央)

 

日本人の友人からたくさんの話を聞き、「きれいな国だよ」と教えてもらいました。そのため海外で働こうと思ったとき、日本という選択肢が自然と頭に浮かんできましたね。その後、人材支援のプロジェクトを通じて日本の先進的な医療技術や医療制度のことを知り、「日本で看護師として働きたい」と思ったのです。


日本で看護師として働くまでの道のり

中国人が日本で看護師として働くためには、大きく3つのステップがあります。

1つ目のステップは、中国で看護師の資格を取ること。そのための方法は2通りあります。専門学校で3年間勉強して(最後の1年は実習)卒業後に国家試験に合格するか、4年制の大学で勉強して(同じく最後の1年は実習)卒業後に国家試験に合格するかです。次に、日本語能力試験のN1(もっとも難しいレベル)に合格し、最後は日本での看護師資格を取得する必要があります。

日本語能力試験N1に合格しなければ、日本の看護師国家試験の受験資格はもらえません。私の場合、大学4年の頃から少しずつ日本語の勉強を始めて、大学卒業後に日本に来てから1年間集中して勉強しました。その後N1を取得しましたが、日本でアルバイトをしてたくさんの人と話したことで、会話の能力が上達したと思います。


海外から来日して働く人へのアドバイス

自分が慣れ親しんでいる環境を離れてほかの国で働くというのは不便なことも多く、大変だと思います。言葉も文化も違うも違いますし、飲食の習慣も違いますから。

私の経験では、“新しいものを受け入れる心の準備”がもっとも重要だと感じました。それから、やはり言語ですね。その国で生活するためには、会話や読み書きがある程度できないと不便な思いをすると思います。私の場合、日本語能力試験のN2を取得してから周りとコミュニケーションをとりやすくなったような気がします。

*お話の続きは次の記事をご覧ください。

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