介護・福祉 2018.11.21
介護医療院、創設の経緯−介護医療院協会会長 鈴木龍太先生より
鶴巻温泉病院 院長 鈴木龍太先生
2018年4月、住まいと生活を医療が支えるあらたなモデルとして創設された「介護医療院」は、利用者の尊厳を最期まで保障し、個々の状態に応じた自立支援を念頭に置いた長期療養・生活施設です。介護医療院の創設には、どのような経緯があるのでしょうか。2018年8月に日本介護医療院協会 会長に就任された鈴木龍太先生にお話を伺います。
*日本介護医療院協会は、2018年4月、日本慢性期医療協会の中にあらたに創設されました。
介護医療院とは?
- 住まいと生活を医療が支えるあらたなモデル
介護医療院は、「住まいと生活を医療が支えるあらたなモデル」として創設されました。
利用者の尊厳を最期まで保障し、個々の状態に応じた自立支援を常に念頭に置いた長期療養・生活施設です。さらに、施設を補完する在宅療養をサポートし地域に貢献する存在として、地域包括ケアシステムの深化・推進に資する社会資源でもあります。
介護医療院 創設までの経緯
- 高齢者医療の無料化によって社会的入院が増加
1973年、老人福祉法の改正によって、高齢者医療が無料化されました。それに伴い、いわゆる老人病院(入院患者の7割以上を65歳以上が占める病院)が増え、医師・看護師の配置が薄い病院が増加。いわゆる「社会的入院(入院治療の必要がなくなったにもかかわらず非医学的理由で入院していること)」の発端となりました。
- 社会的入院を減らすべく特例許可老人病院が制度化された
1983年には、社会的入院を減らすことを目的として、特例許可老人病院が制度化されました。これは、老人病院を医療法上の「特例許可老人病院」と位置づけ、医師・看護師の配置を減らして介護職員を多く配置し、さらに、診療報酬を一般病院より低く設定する制度です。
- 介護保険法の施行により療養病床の一部は介護療養病床に
1993年、一般病院における長期入院患者の増加に対応し、長期療養を必要とする患者を入院させる療養環境を有する「療養型病床群」が創設されました。
2000年には、介護保険法の施行によって、療養病床の一部を、長期にわたり療養を必要とする要介護者に対して医学的管理、介護などを行う「介護療養病床」として位置づけました。また、医療法の改正によって、療養型病床群と特例許可老人病院を再編・一本化した「療養病床」が創設されました。
- 2011年までに介護療養病床を廃止することが決定された
ところが、2006年には、介護療養病床の廃止が決定されました。これは、病床の実態調査を行った結果、医療療養病床と介護療養病床で入院患者に大きな差がない、つまり、医療の必要性が高い患者と低い患者が混在していることがわかり、医療保険と介護保険の役割分担が課題として明確化されたからです。
- しかし介護療養病床の廃止はうまく進まなかった
当初2011年までと設定されていた介護療養病床の廃止(老人保健施設への転換)はうまく進まず、転換期限は2017年まで延長されました。それでも、2016年時点で介護療養病床は6.3万床残っており、完全な転換には至っていません。
- 医療・介護と長期療養のニーズに応えるあらたな形が必要に
2016年に「療養病床のあり方等に関する検討会」が開かれました。その中で、介護療養病床の患者の多くは高齢者であり(平均年齢80歳以上)、平均在院日数が1年半と長く、死亡による退院が4割もあるという現状が明らかになりました。
このことから、医療・介護と長期療養のニーズに対応するあらたな形が必要であることがわかり、住まい機能の強化が提案されました。
- 医療・介護と生活施設の機能を兼ね備えた「介護医療院」の創設
上記の流れを受け、2018年に「介護医療院」が創設されました。介護医療院とは、長期的な医療・介護のニーズを併せ持つ高齢者に対し、医療・介護機能と「生活施設」としての機能とを兼ね備えた施設を指します。
記事2では、介護医療院に転換する意義や介護医療院協会会長としての思いを伺います。