病院運営 2018.11.21
鶴巻温泉病院における慢性期医療の実践
鶴巻温泉病院 院長 鈴木龍太先生
2018年4月、住まいと生活を医療が支えるあらたなモデルとして創設された介護医療院。同年8月には、鈴木龍太先生が日本介護医療院協会の会長に就任されました。鈴木先生は、院長を務める鶴巻温泉病院でどのように慢性期医療を実践されているのでしょうか。
*日本介護医療院協会は、2018年4月、日本慢性期医療協会の中にあらたに創設されました。
鈴木龍太先生はなぜ慢性期医療に携わることになったのか?
- もともとは脳外科医。徐々にリハビリに興味を抱いた
私は、もともと脳外科医です。急性期の医師として脳卒中の患者さんをたくさん診ていました。脳卒中は治療後に後遺症が残ることも多く、リハビリテーション(以下、リハビリ)が必要になります。しかし、急性期の治療に携わる医師は、なかなか患者さんのリハビリまで長期的に関わる機会はありません。
当時私が勤務していた病院には、付属のリハビリ病院が隣接していました。その付属病院へ頻繁に通ううち、リハビリに興味を抱くようになり、リハビリに関わる認定医や専門医の資格を取得しました。
2009年から鶴巻温泉病院に移り、本格的に慢性期医療とリハビリに携わるようになりました。慢性期治療を適切に行うことで、年齢に関係なく患者さんが元気になっていく。そのような経験をいくつも経て、慢性期医療の奥深さや面白さを実感しています。
鶴巻温泉病院の紹介
当院の二次医療圏は、平塚市、大磯町、二宮町、伊勢原市、秦野市を含む湘南西部地区です。
✓診療科目:内科、リハビリテーション科、神経内科、歯科✓病床数:一般・療養病床 591床(定床)
✓病棟の種類:回復期リハビリテーション病棟、療養病棟、地域包括ケア病棟、障害者・難病リハビリ病棟(障害者施設等、特殊疾患病棟)、緩和ケア病棟
2018年4月に、本館3階西病棟の39床が「地域包括ケア病棟」となりました。地域包括ケア病棟とは、急性期治療後に、病院で治療やリハビリをした方がいい患者さん、あるいは在宅や介護施設で過ごしている方が、肺炎や脱水、熱中症などになった際、一時的に入院して必要な治療とリハビリを受け、また自宅へ戻れるようにケアを行う病棟です。
鶴巻温泉病院における慢性期医療の実践
- 摂食・嚥下ケア−嚥下外来を実施
当院では、2000年より嚥下障害に対するリハビリを始め、2016年には「嚥下外来(完全予約制)」をスタートさせました。
嚥下外来では、口から食べてはいるけれどむせてしまう、いまは口から食べていないけれども少しでも口から食べたい、といった方の相談をお受けし、医師、認定看護師(摂食嚥下障害分野)、言語聴覚士、管理栄養士などが協働して、検査や指導を行います。ケースによっては1泊入院などで嚥下造影検査を行い、必要に応じてリハビリを開始することがあります。
- 認知症ケア−認知症看護 認定看護師を含むチーム医療を行う
当院では、認知症看護 認定看護師を含むチームで、認知症ケアを行っています。また、定期的に認知症サポーターの講習会を行っています。現在(2018年10月時点)200名ほどのスタッフが認知症サポーターの資格を有しており、さらに、スタッフ全員が資格取得を目指しています。
- 栄養ケア−管理栄養士に積極的に介入してもらう
当院では、管理栄養士に積極的に介入してもらい、栄養ケアを行っています。管理栄養士は栄養に関する専門家ですから、管理栄養士がチームカンファレンスに参加し、その提案を医師が確認するという形が理想的です。
このような取り組みを通じて、それぞれの専門職にどんどん活躍していただき、強固なチーム医療を実現したいと考えています。
慢性期医療に関するこれからの課題
- 良質な慢性期医療を行う病院への第三者評価システムの構築
高齢化が進む日本で、慢性期医療はこれからますます重要なテーマになるでしょう。このような流れの中で、良質な慢性期医療を実践する病院に対する第三者評価システムの構築や、評価に耐えうるQI(Quality Indicator)の活用が必要だと考えています。
なぜなら、きちんと第三者評価を行うこと、QIを利用者である患者さんに公表することは、慢性期医療の質を高め、さらに、患者さんが良質な医療にたどりつくための指標になると考えるからです。