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“諦めないリハビリテーション”を地域に提供し続けたい――理学療法士 田辺 有香さんの思い

富家病院 理学療法士 田辺 有香さん

理学療法士は長期間療養をされている患者さんや、介護サービスの利用者さんの自立支援を担うリハビリテーションの専門職であり、医療・介護においてなくてはならない重要な職業です。今回は、富家(ふけ)病院 療養病棟に勤務ののち、現在は富家デイサービスセンターで活躍されている理学療法士の田辺 有香(たなべ ゆか)さんに、理学療法士のやりがいや日々のリハビリテーションの中で大切にしていること、今後の展望などについてお話を伺いました。


理学療法士を目指したきっかけとこれまでのあゆみ

病気やけがで困っている人の役に立ちたいとの思いから「将来は医療系の仕事をしてみたい」と考えていました。医療系の仕事を調べていくうちに理学療法士という職業があることを知り、高校生の時に職業見学をさせていただく機会を得ました。そこで患者さんに優しく寄り添っている理学療法士さんの姿を見て、患者さんの生活に長い期間貢献できる仕事であると感じ、理学療法士を目指すことを決意しました。

理学療法士になってからは富家病院の療養病棟で勤務をしていましたが、2023年11月より富家デイサービスセンターに異動し、リハビリ(機能訓練)を担当しています。現在の具体的な業務内容としては、利用者さんの身体機能の評価、パワーリハビリマシンの利用時の介助・運動指導、日常生活における簡単な歩行練習や生活動作練習などです。また、福祉用具の提案や他職種のスタッフへ介助方法の指導も行っています。当施設の利用者さんは要支援1~要介護5の人までさまざまなので療養病棟勤務の時と大きな変化は感じていません。1つ違いを挙げるとするならば“ご自宅での生活を中心に考える”点です。デイサービスの利用者さんは普段ご自宅で生活をされている人たちですので、自宅環境なども考慮したリハビリを提供できるよう心がけています。


患者さん、利用者さんの“ポジティブな姿”や“変化”がやりがい

リハビリを行い、利用者さんの身体機能の向上につながったと感じた時は自分のことのようにうれしいですし、リハビリを楽しみながら前向きに取り組んでくださっている姿を見ると「理学療法士になってよかったな」と感じます。

これまでリハビリを担当させていただいた中でも特に印象に残っている人が2人いらっしゃいます。1人は療養病棟を担当していた時の患者さんです。コロナ禍で患者さんとの面会の機会がなかったため、ご家族は心配されていました。普段はベッド上での生活がメインの患者さんだったのですが、日々のリハビリとしてリクライニング車椅子で離床する時間を設けていました。その結果、コロナ禍が明けてようやく面会がかなった時に患者さんの表情の変化がみられたのです。リハビリを続けたことでよい変化がみられたことはもちろん、ご家族に安心いただけたこともとてもうれしかったです。

もう1人は現在勤務しているデイサービスの利用者さんで、ご自宅では転倒の危険性が高く入浴が難しかった人です。デイサービスに通うにあたり、歩行器の選定や歩行練習を行った結果、歩行が安定し安全に移動ができるようになりました。デイサービスを利用いただくことで入浴もできるようになり、患者さんのよりよい生活に貢献できたと感じます。


理学療法士としての展望――傾聴を大切にしながら地域に貢献したい

理学療法士として日々利用者さんと接するなかで、お一人おひとりの話に耳を傾けることの重要性を実感しています。ゆっくりお話を伺うと利用者さんのこれまでの人生や好きなことなどを知ることができますし、それらはよりよい関わり方を考えるヒントになります。利用者さんの今までどおりの生活をかなえるため、身体機能の変化はもちろん心理面の小さな変化も見逃さず、より適したリハビリを提供できればと思っています。

療養病棟のリハビリに携わっていた時には、患者さんに残された身体機能を維持できるよう、患者さんとスタッフが一丸となり“諦めないリハビリ”を目指して取り組んでいました。退院すると必要なリハビリを継続できなくなってしまう患者さんも一般的には少なくありませんが、富家病院ではグループ内にデイケア・デイサービス(当施設)・訪問リハビリがあるため、退院後も在宅生活を維持しながら、よりよい生活を送れるようサポートできる体制が整っています。この体制を十分に生かして、これまでと同様患者さんの“希望”に向かって一緒に取り組み、地域に貢献できる理学療法士を目指していきたいです。


慢性期医療の担い手を目指す方へ――田辺さんからのメッセージ

慢性期医療は長い期間利用者さんと関わることが多いこともあり、関係構築が大切だと考えます。“リハビリテーション”というと急性期・回復期の身体機能の向上がメインというイメージを持ちやすいかもしれませんが、慢性期・生活期のリハビリでは患者さんや利用者さんの基本的な欲求・尊厳についてより深く考える必要があり、“その人の人生”そのものに関われることに面白さがあると私は思います。さまざまな病気についての知識を幅広く学ぶ必要もあるため大変さはあると思いますが、慢性期医療に興味を持つ人が増え、残された身体機能を生かす方法を共に模索していける仲間がさらに増えたらうれしいなと思います。

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