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言語聴覚士として、管理者として、チャレンジの気持ちを忘れない――河島 早苗さんの思い

松山リハビリテーション病院 言語療法科科長 河島早苗さん

学生時代から“言葉”を扱う仕事に興味を持っていたという河島 早苗(かわしま さなえ)さんは、当時国家資格になったばかりの言語聴覚士の試験を受け、地元から離れた愛媛県の松山リハビリテーション病院で言語聴覚士の職に就き、活躍してこられました。河島さんに、20年間にわたって言語聴覚士を続けてきた原動力や、言語聴覚士としての思いについてお話しいただきました。


言語聴覚士になったきっかけ

私は元々、大学時代は文学部で日本文学を専攻していました。言語聴覚士になることを考えたのは、ある作業療法士の方との出会いがきっかけです。学生時代、障害を持つ子どもたちと遊ぶボランティアをしているときにお会いして、言語聴覚士という仕事があることを教えてもらったのです。その方の紹介で、病院の言語聴覚士の仕事を見学させてもらい、「こういう仕事をやりたいな」と考えるようになりました。

作業療法士ではなく言語聴覚士を選んだのは、やはり“言葉”に関わることが好きだったからだと思います。大学卒業後に地元で、言語聴覚士を養成する学科の2期生として入学し、学びました。


言語聴覚士の大先輩に鍛えられた日々

私が言語聴覚士になったのは、言語聴覚士の国家試験が初めて実施された1999年です。そのため、言語聴覚士の資格を得ても働き口は豊富ではなく、同級生たちが地元で勤め先を探すなか、「私は県内にこだわらないで探そう」と考えるようになりました。そのとき、ちょうど当院とのご縁があったのです。“松山リハビリテーション病院”といえば、同級生の間でも名前が知られていましたし、「ここならきっと成長できる」と思いました。

入職後は、四国最初の言語聴覚士として活躍されていた久保田 鈴香(くぼた すずか)さんをはじめとする先輩方の指導を受けました。先輩方は、“松山失語症 友の会”という、失語症の患者さんが退院された後の生活をサポートする活動を立ち上げて、運営を担われていました。その友の会の活動を通じ、失語症の患者さんとご家族の退院後の生活に接することで、患者さんの5年後、10年後の生活をイメージする力が身についていきました。


入院から在宅へスムーズにつなげられた経験

入職して1番印象に残っているのは、入職3年目に嚥下(えんげ)障害を伴うワレンベルグ症候群の患者さんを初めて担当したときのことです。

ワレンベルグ症候群は、食道入口部が狭窄(きょうさく)することによって嚥下障害がみられる病気です。バルーンカテーテルを食道入口部に挿入し、バルーンで強制的に病変部を膨らませたあと引き抜くという訓練が必要になります。口に管を入れて行う訓練のことは授業で聞いて知っていたものの、当院で実施することが初めてだったこともあり、担当を任された私にとって最初は不安もあり勇気が必要でした。しかし、主治医や看護師と連携のもと訓練を行うことで患者さんは口から食べることができるようになり、無事に退院していただくことができました。

患者さんが退院する際、地域連携によってスムーズに在宅へ移行していただけたことも、印象に残っている理由の1つです。当時、言語聴覚士の訪問リハビリを行っているところはなく、患者さんをどのように在宅へつなげていくかが課題でした。そこで、訪問看護師の方に協力を依頼し、患者さんがご自宅で訓練を行う様子を見守っていただけるようにしました。訪問看護スタッフとうまく連携し、退院後のサポートを実現できたことは、貴重な経験となりました。


回復期リハビリテーション病棟に勤めるやりがい

回復期リハビリテーション病棟の患者さんは、入院時と退院時で症状の変化があります。よい変化を推進するようなリハビリテーションが奏効するときには決まって、「今、このタイミングで、このリハビリテーションを行えてよかった」というポイントがあると思っています。チーム全員が同じ方向を向いて、うまく役割分担でき、それぞれが専門家としてうまく機能したな、という瞬間が訪れるのです。そのとき、大きなやりがいを感じます。

また、チームがしっかりと機能してリハビリテーションが奏効したときほど、在宅生活にうまくつなげることができるように思います。急性期医療と在宅医療をつなぐ役目を担っていることも、回復期リハビリテーション病棟で働く言語聴覚士としての面白さの1つだと思います。そのなかで、“退院後も元気に過ごされている”という報告を聞けるのは、とても嬉しいことです。


言語療法科科長としての思い

私は、2019年に言語療法科科長に就任し、管理者の立場になりました。今後は言語療法科全体のことを考えて、新人の育成に力を入れていくつもりです。今のところ、いろいろな教育システムや研修システムづくりを検討しています。

しかし、やはり、担当する患者さんごとに学んでいくというのが、言語聴覚士の醍醐味(だいごみ)です。個々が学んだことを科内で共有しながら、言語療法科全体のスキルアップにもつなげていければと思っています。

そして、時代の流れに合わせて、さまざまなことにチャレンジし続けていきたいとも考えています。最近では、週に一度の音声・嚥下外来を始めました(2019年11月時点)。音声嚥下に詳しい耳鼻咽喉科の医師が週に1回来てくださり、音声障害のリハビリテーションが実施できるようになったのです。こうした新しい取り組みを始めて、どんどん軌道に乗せていけるよう、頑張っていきたいです。

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