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自分が受けて満足できるサービスを目指して――地域医療を支え続ける光風園病院

光風園病院 院長 木下祐介先生

山口県下関市に位置する光風園病院は、患者さんを暖かな“光”で導き、よりよい医療とケアの提供を目指して新しい“風”を送り続けるという思いのもと、慢性期医療や回復期リハビリテーションの提供を行っている病院です。身体拘束しないケアをはじめとした、「自分が受けて満足できるサービス」を目指して、患者さんにとって適切な医療の提供を追求し続けています。

光風園病院の院長である木下祐介先生に、同院における慢性期医療の実践について、お話を伺いました。


光風園病院が実践する慢性期医療におけるポリシー

自分が受けて満足できるサービスの提供を目指す

当院は、「自分が受けて満足できる高度なサービスを提供する」を基本理念として掲げています。「もし、自分が患者さんの立場だったら、ご家族の立場だったら、いま自分が行っていることに満足するだろうか」という視点を職員全員が常に持ちながら、患者さんに接するように心がけています。そして、より質の高い医療を提供できるよう、スキルアップに励んでいます。

自分が受けて満足できるサービスとはどのようなものでしょうか。具体的な例の1つとして、身体拘束しない看護を実践しているということを挙げます。医療を提供するうえで患者さんの安全を守る目的で身体拘束を実施せざるを得ない場面はあると思いますが、患者さんの生命を守るためではなく「歩かれると困る」「管を抜かれると面倒」といった医療者側の都合による身体拘束は避けなければなりません。当院では30数年来、一切の身体拘束は行っていません。身体拘束を行った状態では、良質なサービスは提供できないという考えがベースにあるからです。

 

身体拘束しない看護の実践

安易な身体拘束に頼らずに、患者さんの安全を守るには何が必要でしょうか。私は、患者さんに満足していただけるサービスを提供しようとする思いと、トレーニングで培われた確かな看護技術、必要な人員配置、経営者と管理職の覚悟がそろってこそだと考えます。たとえば、苦しさや不安から人工呼吸器を自ら外してしまう患者さんに対して、自己抜管してしまいやすい夜間に、夜勤スタッフが付き添うという対応をとったことがあります。スタッフが懸命に対応した結果、患者さんの精神状態はやがて落ち着き、自己抜管せず過ごすことができるようになりました。この例のように、“自分が受けて満足できるサービスの提供”を目指しながら取り組んできた慢性期医療の実績と、それに対する自負が当院にはあります。それが当院の医療のベースとなっていることは間違いないでしょう。

近年は、病院を取り巻く環境が大きく変わり、慢性期の患者さんの医療依存度がますます上がってきています。そのようななかで、身体拘束に頼らずに患者さんの安全を守るにはどうしたらよいか、適切な医療を提供し続けるにはどうしたらよいかということを、これから議論していく必要があると考えています。


光風園病院が提供する医療とケア

窓からの光を感じる、広々としたリハビリテーション室

 

当院は、肺炎などの急性疾患をはじめ、悪性腫瘍や神経難病、リハビリテーションが必要な状態、認知症など、さまざまな病状の患者さんを受け入れ、人生の最終段階における医療(終末期医療)にも対応しています。光風園病院が、医療を提供するうえで心がけていることをお話しします。

 

高齢者の肺炎に対する配慮

一般的な肺炎は、薬物療法と呼吸管理を行うことで、回復につながるでしょう。しかし、高齢者の肺炎は治りにくく、さまざまなことに配慮が必要になります。たとえば、症状がはっきりしない、熱が下がりにくい、呼吸状態が改善しないといった、肺炎がもたらす高齢者特有の症状に加えて、肺炎の誘因となった嚥下機能障害の存在や、ひとりで食事ができない、歩けない、トイレに行けないといった日常生活の動作ができるか否かも考える必要があります。そのうえ、独居かどうか、家族がそばにいるかなど、患者さんの生活環境も考える必要があるでしょう。高齢者の肺炎には、これまで述べたようなさまざまなことに配慮する必要があるため、高齢者医療に詳しい病院が対応するべきだと考えます。

当院では、患者さんがなぜ肺炎を起こしたか、基礎疾患はあるのか、きちんと呼吸管理ができているかといったことに高齢者医療に詳しい医師が細かく気を配り、高齢者のケアの考え方と技術を学んだ看護と介護をはじめとした多職種で、力を合わせて治療に当たっています。

 

きちんと食べられる体づくり

当院では、きちんと食べられる体づくりを目標に、さまざまな取り組みを実施しています。

まず、患者さんが食事を口から食べられるようになることを目指して、歯科衛生士が徹底した口腔ケアを実施しています。たとえば、歯周病が進行した口では、食べ物の味が分からなかったり、口の中が痛くて食べ物を入れられなかったりするからです。

次に、理事長が食べることが好きだということもあり、当院では提供する食事の質をとても大切に考えています。見た目で思わず食べたくなり、食材の味がしっかりと感じられ一口食べると二口目も進むような美味しい食事を提供することを心がけています。これまで食事をうまく食べられなかった患者さんでも、当院に入院した途端に食事がすすむようになったという方もいらっしゃいました。

もちろん、リハビリテーションにもしっかり取り組んでいます。嚥下のリハビリテーションといえば、言語聴覚療法(ST)と考える方は多いと思いますが、当院では、はじめは理学療法(PT)が重要だと考えています。たとえば、首がした状態ではうまく飲み込めないので、椅子に座り姿勢を正して飲み込めるようにサポートして、きちんと食べられる体をつくっていきます。

 

寝たきり状態の改善

誤嚥性肺炎を繰り返して入院し、口から食べることは難しいと考えられていた患者さんのご家族が当院を頼って、入院を受け入れたことがありました。その患者さんは、入院していた病院では安静の指示を受けており、誤嚥を防ぐために絶食して中心静脈栄養を受けていました。また、失禁状態のためおむつを着用していました。そして、患者さんが点滴やおむつを外そうとする可能性があるので、身体拘束をされていました。

しかし、適切な評価に基づきケアを提供すれば身体拘束する必要はなく、当院入院時より身体拘束を解除しました。当院では、患者さんへの安静度の指示ではなく、ここまでなら負荷をかけてもよいと活動度の指示を出すよう心がけています。また、なるべく管を使わない治療を行うようにしました。口腔ケアの徹底、身体機能改善と摂食嚥下の訓練、トイレへの積極的な誘導なども心がけました。そのような治療の結果、1か月もせずに患者さんは車椅子に離床して食事が食べられるようになりました。

 

指示理解が困難な患者さんに対するリハビリテーション

当院は元々、療養病床で重症患者さんの診療を行ってきた歴史があります。神経難病や認知症、重度の心不全、在宅酸素療法を行っている方が急性増悪を起こした場合など、さまざまなケースに対応してきました。リスク管理を徹底しながら、機能改善に向けた治療計画を立てる能力が、医師にもリハビリテーションスタッフにもあります。

指示理解ができなければリハビリはできないと思われがちですが、指示理解が困難な認知症の患者さんに対して、患者さんの心と体の状態を理解した専門家が寄り添えば、その人に合わせたリハビリテーションを提供することは可能です。当院では、患者さんがどんなタイミングで歩きたいのかをリハビリテーションスタッフが把握し、患者さんの動きに合わせて介入することで、適切な運動療法や環境設定などを行うよう努めています。こうした対応はやはり看護・介護スタッフの方が得意であり、ディスカッションをしながら治療に当たっていきます。認知症の患者さんが安心して生活できるような医療とケアを、これからも提供してまいります。


慢性期医療の実践にかける思い

 

医療提供者としてのプロ意識を持つ

当院は、下関市にお住まいの方をはじめ、開業医の先生、急性期病院、介護施設など、地域の皆さんから信頼される病院でありたいと考えています。そのために、当院の能力で診療が可能な患者さんは受け入れを断らないということを徹底しています。

そして、入院していただいた患者さんには、できるだけよい状態で帰っていただきたいと思っています。当院に患者さんを託していただいた開業医の先生方の期待にも応えられるよう、しっかりと病状の改善を図ります。治療が難しい患者さんや、重い認知症の患者さんにも対応し、退院の際は引き受け先の施設や在宅チームとの連携も大切にしています。退院困難な患者さんに対しては、最期まで責任をもって治療とケアに努めます。

また、社会的入院*を引き受けないことも心がけています。病院に入院する必要がない軽い症状の患者さんからのご相談には、その状態に合わせて適切な施設を紹介したり、ケアマネジャーさんに連絡して支援方法を考えたりと、患者さんに適した生活の場をご案内できるようお手伝いしています。

*社会的入院…非医学的理由で入院すること

 

まじめにコツコツと取り組む

当院における医療とケアの提供は、「地道にまじめにコツコツと」ということを心がけています。重症の患者さんの治療と病状管理、生活機能を向上させる良質なケアとリハビリテーション、認知症の治療とケアや対応力など、患者さんにとって本当に必要だと思う医療を、正しく提供することが、当院の果たすべき役割だと考えています。

そうして、患者さんに真摯に向き合い続けていれば、どのような社会の変化にも対応していけると思っています。

 

職員に対し、やりがいのある仕事や教育を提供したい

近年では入院患者さんが増え、対応する病気も多様となり、現場のスタッフは大変だと思います。人員の確保が欠かせないなか、幸いにも当院は、看護師も、介護職も、積極的に応募していただいています。職員からの紹介も年間10名前後あり、親子や夫婦で働いてくれている職員もいて、大切なご家族を紹介してもらえることを嬉しく思っています。また、どうやら退職した職員のなかからも、「あの病院ではやりがいを持って働けた」「辞めることになったけれど、よい職場だった」と、当院に対するよい評判が口コミで広まっているようです。ありがたいことです。

これからも、患者さんに対してはより質の高いサービスを提供できるよう、そして、職員に対してはやりがいのある仕事や教育環境を提供できるよう、引き続き病院の運営に取り組んでまいります。

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