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急性期病院とシームレスにつながり鹿児島の医療を守る、キラメキテラスヘルスケアホスピタルの取り組み

医療法人玉昌会 キラメキテラスヘルスケアホスピタル 副院長 田島 紘己さん

鹿児島市高麗町に2023年に誕生した複合施設“キラメキテラス”には、2つの病院があります(2024年10月時点)。回復期・慢性期医療を担う“キラメキテラスヘルスケアホスピタル”と、高度急性期・急性期医療を担う“いまきいれ総合病院”です。2つの病院はアトリウム(室内連絡通路)でつながり、患者さん一人ひとりに適切な診療をスムーズに提供すべく、密接に連携して地域医療を支えています。

今回は、医療法人玉昌会 キラメキテラスヘルスケアホスピタル 副院長の田島 紘己(たじま ひろき)さんに、キラメキテラスへの移転の経緯やいまきいれ総合病院とのシームレスな連携体制、今後の展望についてお話を伺いました。


キラメキテラスのはじまり―― “JOYタウン構想”を拡大して

“キラメキテラス”とは、鹿児島市交通局跡地の再開発事業で誕生した複合施設です。外資系ホテル、小売店、エネルギーセンター、立体駐車場、分譲マンションなどの施設が集まり、2023年5月に全面開業しました。先行して、医療法人玉昌会 キラメキテラスヘルスケアホスピタルと公益社団法人昭和会 いまきいれ総合病院がキラメキテラスに移転・開院したのは、2021年のことです。

実はキラメキテラスの構想が立ち上がる前から、医療法人玉昌会は創業60周年記念事業として、鹿児島市内で運営していた高田病院(キラメキテラスヘルスケアホスピタルの前身)の移転を計画していました。また、姶良(あいら)市内で運営する加治木温泉病院も移転を検討しており、加治木温泉病院の建て替えと併せた街づくりプラン“JOYタウン構想”をまとめていたところでした。2015年には、内閣府のまち・ひと・しごと創生本部で行われた日本版CCRC構想*有識者会議でも、“JOYタウン構想”が取り上げられています。このような構想がすでにあったなかで、鹿児島市が交通局跡地を売却するとの話が出てきました。

そこで、地元総合商社である南国殖産株式会社を幹事会社とし、公益社団法人 昭和会とコンソーシアムを構成し、我々が姶良市で検討していた“JOYタウン構想”をベースに、より人口の多い鹿児島市バージョンに拡大するような形で作り上げたのが“キラメキテラス構想”です。我々としては複合施設全体を1つの街として捉え、街づくりプランとして検討を進めてきました。そして、高田病院はキラメキテラスへの移転を機に、キラメキテラスヘルスケアホスピタルと名称を変更し、新たな一歩を踏み出したのです。

*日本版CCRC構想:東京圏の高齢者が自らの希望に応じて地方に移住し、地域社会で健康でアクティブな生活を送り、医療や介護が必要な時には継続的なケアを受けることができる地域づくりを目指す構想。CCRCはContinuing Care Retirement Communityの略。


鹿児島の医療課題に向き合う

医療機関は、地域の特色に応じた医療を提供することが求められます。鹿児島県は人口当たりの病床数が全国で2番目に多く(2022年10月時点)、また鹿児島市は病床数の少ない小規模病院が多いこともあり、医療従事者のマンパワーが分散しやすい地域です。労働人口に占める医療・介護分野就業者の割合は、鹿児島県は約19%*と高いのですが(全国平均は約14%)、 1955年には200万人を超えていた鹿児島県の人口は、2023年時点で約154万人にまで減っています。2045年には約124万人**になるともいわれており、人口減少のスピードは急激に加速すると予想されています。これはつまり、受診される患者さんにも働く医療従事者にも、必要とされ選ばれる医療機関になる必要があるということだと考えています。

*2020年国勢調査 男女別就業者数及び人口構成比[産業別](15歳以上就業者)より
**令和5(2023)年推計 日本の地域別将来推計人口 鹿児島県より


温かみを感じながら過ごしていただける環境づくり

当院は移転前から回復期機能と慢性期機能を備えていましたが、キラメキテラスに移転して以降、特に回復期機能の拡充を図ってきました。これは、鹿児島市を含む鹿児島保健医療圏では高度急性期・急性期病床が5,959床あるのに対し、回復期病床は2,516床と少ないという地域課題に応えるためでもあります。現在では移転前の2倍を超える入院患者さんを受け入れるようになりました(2024年10月時点)。

特に、生活期につながるリハビリテーションには力を入れて取り組んでいます。スタッフを増員し多職種が連携しながら、患者さん一人ひとりにこれまで以上に手厚いケアを提供できるよう努めています。建物2階に位置するリハビリ室は広いテラス(リハテラス)に面しており、窓を開けて外の空気を感じながらリハビリテーションに取り組んでいただけます。

建物3~6階の病棟フロアは、陽光が差し込む建物東西の外側部分にゆったりと窓を大きく設計した“縁側廊下”があります。病室は“縁側廊下”に沿って配置していますので、室内には柔らかく日差しが差し込みます。一方で、病棟中央部の通路は全体をスタッフエリアとして、各病室をスタッフエリアと直結させています。これにより、医療スタッフの動線が限りなくゼロに近い“ゼロ動線病棟”となり、より患者さんに寄り添った見守りができるようになりました。“縁側廊下”と“ゼロ動線病棟”というこれらの設計は、病院建築物としては初めて特許庁に意匠登録されています。

“縁側廊下”と“ゼロ動線病棟”

 

当院のような回復期病院では、急性期病院と比較して患者さんの入院期間が長期にわたります。その分、患者さんとスタッフ同士あるいは患者さん同士のコミュニケーションが深まりやすくなります。日差しが差し込む明るいフロア、“縁側廊下”の大きな窓から見渡せる外の景色などを生かし、温かみを感じながら過ごしていただける環境づくりも大切にしていきたいと考えています。


いまきいれ総合病院とのシームレスな連携

当院は同じくキラメキテラス内にあるいまきいれ総合病院と、アトリウムと呼ばれる室内連絡通路で建物同士がつながっています。2つの病院は経営母体も異なる別々の病院なのですが、密接に連携しながら地域医療への貢献を目指しています。

基本的には、高度急性期・急性期医療を担っているいまきいれ総合病院が救急搬送された患者さんなど急性期の患者さんを受け入れて治療し、状態が安定してきたら回復期・慢性期医療を担う当院に転院いただき回復を目指し療養を支援していくという役割分担です。近隣にはほかにも急性期医療を担っている病院が多数ありますので、当院は地域のいわゆる後方連携先として役割を果たしていきたいと考えています。

当院といまきいれ総合病院のスタッフは、日々密接にコミュニケーションを取りながら業務にあたっています。たとえば、2週間に一度はランチミーティングとして両院の理事長と院長が一堂に会して、一緒に昼食を取りながら現状の課題を共有し今後の方向性について話し合う機会を設けています。現場レベルでは、いまきいれ総合病院の救急外来のカンファレンスに当院の医師と入退院支援看護師が毎日参加し、前日に受け入れた患者さんの情報や治療計画、入院ベッドの空き状況などを共有しています。また、いまきいれ総合病院の診療科別のカンファレンスや褥瘡(じょくそう)回診などにも当院のスタッフが参加しています。そのほかにも、スタッフの知識・技能を高めるための勉強会や講演会を共同で開催したり、入職希望者の病院見学や献血者の受け入れに一緒に対応したり、“かごしまの風と光とナポリ祭”など地域イベントに合同で救護スタッフを派遣したりと、あらゆる場面で日々連携を行っています。

それぞれの病院にこれまで築いてきた文化がありますので、それらを大切にしながら双方にとってよりよい未来へ進んでいけるよう、今後も努力を重ねていきたいと考えています。

合同カンファレンスの様子


「キラメキテラスに行けば何とかなる」を目指して

2021年に移転してからの約2年間は、新型コロナウイルス感染症への対応で本当に大変な日々が続きました。2023年ごろからようやく、本来当院が地域で果たすべき役割を連携という形で担えるようになってきたのかと思っています。

当院は、地域の人々にとって「どんなときでもキラメキテラスに行けば何とかなる」と思っていただける存在になりたいと考えています。そのために、いまきいれ総合病院と当院が保持する電子カルテのデータの閲覧・共有できるようにすることを考えています。また、鹿児島県は高齢者人口に占める独居者の割合が全国で3番目に高いのです(2020年時点)。当法人(医療法人玉昌会)では介護サービスも展開していますので、何か困ったことがあったときにはひとまずご相談いただければ、解決に向けた道筋を探るためのお手伝いができるのではないかと思います。地域の人々に信頼され、安心して暮らせる街づくりに貢献できるよう、これからもさまざまな取り組みを進めていきたいと考えています。

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