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医療法人社団和風会における慢性期医療の実践

医療法人社団和風会 理事長 橋本康子先生

医療法人社団和風会は、香川県で地域のニーズに応え地域医療を守る病院を運営しながら、2007年からは大阪府でリハビリテーションに特化した病院をスタートしました。同法人理事長を務める橋本康子先生は、患者さんとそのご家族に「自分のことが自分でできる幸福」を届けるべく、日々奮闘しています。


医療法人社団和風会における慢性期医療の実践

  • 栄養ケア−まずは何かしら口にできることを重視して

リハビリでは運動を行うため、栄養状態を良好に保つことが非常に重要です。栄養が足りない状態でリハビリを行うと、状態は悪化しかねません。

 

このような視点から、当法人では、患者さんが食べられずに困っている場合には、まず何かしら口にできることを重視したメニューづくりをしています。たとえば、千里リハビリテーション病院のレストランでは、主菜3種類、副菜8〜9種類を好きな組み合わせで選ぶことができ、さらにカレーとラーメンは日替わりの味付けで提供しています。


一般的には「食欲がないときにはさっぱりしたもの」というイメージがありますが、実際には濃い味付けの料理を食べたい、と突然リクエストされることも多く、特に子どもの患者さんには、ポテトチップスが大人気です。ポイントは「味をすぐにイメージできて食欲が湧く、慣れ親しんだ食べもの」なのかもしれません。

 

栄養ケア−退院後にも継続できる栄養管理を実践

退院後には自宅でも毎日食事をしますから、そこで患者さんやご家族がうまく栄養管理をできるよう、退院後も継続して行うことのできる栄養管理、食事のコントロールを実践しています。たとえば、1日3食、朝昼夜の食事のトータルで栄養を管理する方法や、過不足の調整方法などを含めて、患者さんと共に実践していくことが大切です。

 

当院では毎食、カロリー、塩分量など9種類の値が打ち出されていますので、患者さんやご家族がすぐに栄養摂取量を確認できます。

 

排泄ケア−尿道カテーテルの抜去、トレーニングパンツの使用など

当法人では、定期的に泌尿器科の医師にみてもらい、不要な尿道カテーテルの長期留置による合併症やQOL障害を回避するよう努めています。

 

リハビリの視点からは、オムツを完全に外すよりも「トレーニング(リハビリ)パンツ」をすることで安心してトイレに行ける、あるいはその練習をするほうが適切なケースもあると考えています。なぜなら、急にオムツを外すと、尿もれを気にして何度もトイレに行く、トイレに間に合わず排泄への不安感が強まる、といったネガティブな要素が強まることがありますが、トレーニングパンツを履いていれば、少しの尿もれは気にせずにトイレの練習ができますし、結果的に患者さんの活動性が向上する可能性があるからです。

 

羞恥心や自尊心は、何歳になっても変わらないものです。そのため、カンファレンスの際にスタッフが患者さんの報告をする際、「尿もれ」や「尿失禁」などの直接的な言葉を使わないよう徹底しています。

 

認知症ケア−不必要な身体拘束を行わないことを徹底している

私自身は、大学病院から香川の橋本病院へ戻ってからすぐに、全国抑制廃止研究会に入りました。当時あまり認知症には詳しくなかったので、認知症を専門的にみている全国の病院をまわりました。そのなかで「縛らない高齢者医療、看護」をする上川病院にも行き、そこで実践されている認知症ケアに影響を受けました。

そのような経緯があり、当院では、不必要な身体拘束を行わないことを徹底しています。人間を縛るなんて、決して認められることではないからです。

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