介護・福祉 2019.04.10
人工知能『MAIA』の開発者 岡本茂雄氏が語る、介護×AIのポイントとは?
元 株式会社CDI 代表取締役社長 岡本茂雄氏
介護を必要とされる方の自立支援を目指すケアデザイン人工知能『MAIA*』。開発者の岡本茂雄氏(株式会社CDI)は「日本から世界に、介護のあり方を発信できると信じている」と語られます。その思いやこれからの展望について、お話を伺いました。
*©Activity Recognition, Inc.
※2019年4月25日を以って、岡本茂雄氏は株式会社CDI 代表取締役社長を退任しました。
介護×AIにおけるポイントとは?
AIは実証開発こそが重要
AIは「知能」ですから、現場での実証こそが重要です。研究室の中だけでは進化の限界がありますから、私たちはAIを「子ども」の段階から実際に現場で使ってもらうことにしています。
このような考えに基づき、2017年より豊橋市でMAIAの稼働を開始しました。当初は思考支援機能のみを活用していましたが、上記の考えに基づき、実証評価をスタートしました。2019年2月現在、複数の自治体、事業者、さらに社会福祉法人・医療法人などでMAIAを導入し、現場での実証を展開しています。
*MAIAの実証開発については、記事2をご覧ください。
AIはデータこそが重要
AIの活用において、インプットにどのようなデータを使い、アウトプットを何にするかを決定する際には、利用する分野の高い知見が必要です。決して「どんなデータでもいいからAIにインプットすれば賢くなる」というわけではないのです。このような視点から、当社は、アドバイザリー・ボードとして医療・介護分野の高い知見を有する学識者、現場の方々を配置しています。
日本の医療・介護における現状の課題、これからの展望
AIを認知症に対しても活用していきたい
現在は要介護度の改善にフォーカスして実証開発を行っていますが、それとは別軸で、これからは認知症に対するAIの活用も大きなテーマだと捉えています。
多くの場合、認知症そのものが問題になるのではなく、BPSD(認知症の行動・心理症状)があらわれることでさまざまな問題が生じます。そのため、AIによって具体的にBPSDの発症予測(たとえば1時間後に徘徊が始まる、など)ができれば、それを防ぐためのケアを効果的に施すことができると考えています。
「自立に向けた介護」という考えを当たり前にしたい
これだけ高齢化が進み、余命が延伸するなかで、健康な時間、自立した生活を過ごせる時間をいかに長くするかは、私たちにとって非常に重要なテーマです。
このような視点から、介助によって機能補填をするだけのケアは必ずしも正解ではなく、「自立に向かう介護」が前提として存在するべきだと考えます。
日本から世界に「介護のあり方」を発信できると信じている
これまでの日本における介護に関する考え方を変えたい、日本の介護サービスを革新したいと思い、これまで懸命に進んできました。
「自立に向けた介護」を確立することができれば、日本は、これまで蓄積した介護に関する膨大なデータと高齢者医療の知見をもって、介護のあり方を世界に発信できるでしょう。私たち日本は、介護分野において世界でリーダーシップを取るべきだと思います。