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リハビリテーション治療と運動メカニズム−現場からの最新研究

和歌山県立医科大学 田島文博先生

高齢化の進行と医学の発展によって、徐々に平均余命が延伸する日本。障害を持ちながら生活する方が徐々に増加する中で、疾病や怪我の治療のみならず、患者さんの能力改善に取り組むリハビリテーションの必要性は徐々に高まっています。

田島文博先生は、和歌山県立医科大学で「攻めのリハビリテーション医療」に取り組むと共に、リハビリテーションの医学的発展にも努めています。リハビリテーション医学と運動メカニズムに関する研究についてお話を伺いました。


「運動」とは? 現在進めている研究について

  • 一般的な運動とは、意志による筋緊張・収縮を指す

一般的な「運動」とは、随意運動です。随意運動とは、意志による筋緊張・収縮を指します。ヒトは、大脳皮質運動野から「錐体路(すいたいろ)」を使い、随意的に骨格筋を緊張・収縮させます。その一方で、不随意的な骨格筋の緊張・収縮は、「錐体外路(すいたいがいろ)」を通じて行われます。


  • 骨格筋のうち、傍脊柱筋(ぼうせきちゅうきん)は錐体路によって支配されない

基本的に、運動野における足部の支配領域に腫瘍があれば下肢が麻痺しますし、手を支配する運動神経一次ニューロンという部分が障害されると手が麻痺を起こします。

 

しかし、骨格筋のうち、傍脊柱筋(ぼうせきちゅうきん)は、錐体路による支配が極めて少ない筋です。傍脊柱筋は、脊柱起立筋と多裂筋で構成され、腰椎の保護と安定性に寄与する筋肉です。運動時において、姿勢の維持と合理的な運動遂行のために、「意識せずに」緊張・収縮するはずですが、どのようなタイプの運動で収縮するかわかりません。傍脊柱筋は主として錐体外路で動いているからといえます。


  • 随意筋でない傍脊柱筋をどのように鍛えるべきか

「意識せずに」動く傍脊柱筋の筋収縮を惹起する運動を調べるために、もっとも一般的に行われているエルゴメーター(回転式の運動負荷機器)運動で検証しました。エルゴメーター運動はご存じのように、たとえば60Wに設定すれば、誰が漕いでも60Wの負荷量になります。等負荷の運動を患者さんに与える場合に、もっとも有効な運動方法といえます。

上肢と下肢で、エルゴメーター運動時の多裂筋の表面筋電図を測定したところ、上肢でも下肢でもエルゴメーター運動時でさえも脊柱起立筋を使っているという結果が出ました。


私たちはこのような研究を進めることで、リハビリテーション治療における運動の重要性を医学的・科学的に証明していきたいと考えています。

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