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「未知の領域があり、世界最先端で活躍できる」山田正仁先生が語る認知症研究の魅力

金沢大学附属病院 山田正仁先生

高齢化が進展する日本において、認知症の患者さんは年々増加しています。金沢大学神経内科学で教授を務める山田正仁先生は、恩師の提案によってアミロイド(アルツハイマー病にかかわるタンパク質)の研究を始めてから、一貫して認知症というテーマに向き合われてきました。認知症の研究には、どのような魅力があるのでしょうか。


山田正仁先生と認知症研究 これまでのあゆみ

恩師との出会いをきっかけに、アミロイド研究を始める

「認知症」という病気にかかわるようになったのは、塚越廣先生との出会いがきっかけです。塚越先生は東京医科歯科大学 脳神経病態学(神経内科)分野の初代教授であり、私の恩師でもあります。

 

記事2でお話ししたように、認知症の原因の多くを占める「アルツハイマー病」は、アミロイドβの異常蓄積を認めます。

私は塚越先生のお導きによりアミロイドの研究を始め、1985年、認知症専門病院で「認知症とアミロイド」に関する臨床研究をスタートさせました。アルツハイマー病の患者さんや剖検させていただいた脳を数多くみせていただくなかで、自然と認知症に携わる機会が増えていきました。

 

いつの間にか、認知症は自身の大切なテーマ

恩師の導きで始めた認知症の研究。しかし、いつの間にか、自身の医師人生で一貫して向き合う大切なテーマになりました。

 

実は、1980年代はまだ認知症に対する医学が進展し始めたところで、神経内科医が認知症診療や研究の道に進むなど「ありえない」ともいわれる時代でした。高度な認知症で問題が生じた場合、多くは精神科病院へ行っていました。

 

しかし、高齢化が進展するなかで、認知症は医学的にも社会的にも重要なテーマとして、徐々に注目が高まり、現在では、神経内科(脳神経内科)、精神科、老年科など多岐にわたる分野で、多くの専門家により認知症の診断・治療の研究が積極的に行われています。

 

金沢大学ではじっくりと時間をかけて認知症コホート研究を実施

2000年に、金沢大学へ移りました。1980年に医学部を卒業したので、現時点では、おおよそ医師人生の半分を東京や留学先のカリフォルニアで、残りの半分を金沢で過ごしたことになります。

 

金沢大学では、じっくりと時間をかけて認知症に関するコホート研究を実施してきました2006年よりスタートした石川県七尾市中島町における「なかじまプロジェクト」を起点に、実験的研究や介入研究などへ発展させ、さまざまな研究成果を出してきました。

詳しくは記事3をご覧ください)

*コホート研究・・・現時点(または過去のある時点)で、研究対象とする病気にかかっていない人を大勢集め、将来にわたって長期間観察し追跡を続けることで、ある要因の有無が、病気の発生または予防に関係しているかを調査する観察研究


山田正仁先生が考える、認知症研究の魅力とは?

未知の領域が残り、世界最先端で活躍できる可能性がある

世界でも類を見ない超高齢社会となった日本。

認知症の研究は、日本が世界のトップを走っている分野です。つまり、いま認知症の領域で何かをスタートしたら「世界最先端」で活躍できる可能性があるのです。

 

認知症の原因の多数を占めるアルツハイマー病などの神経変性疾患については、いまだ根本的な治療法が確立されていません。つまり、医学的に大きな未知の領域が残されています。認知症は可能性が大きく広がっている研究テーマです。*2018年現在

 

世界の先頭に立って、未知の領域を開拓し、認知症で困っている数多くの患者さん・ご家族を救うことができる可能性がある—。それが認知症研究の大きな魅力ではないでしょうか。

 

地域に密着し、多面的に研究できる

「なかじまプロジェクト」のようなコホート研究は、特定の地域で長い時間をかけて多面的に研究を行います。私たちの研究デザインは明確です。地域で発見したことに対し、研究室で作用機序や分子機構などを解明し、科学的な根拠を明確にします。

さらに、そこでエビデンスが得られたものを、実際に介入研究で実証することにより地域に還元していくのです。

 

疫学から、研究室での試験管内実験、動物実験、予防介入試験まで、あらゆるステップの研究を行える点も魅力です。このように、地域に密着し、あらゆる面から認知症を解明していくことは、やりがいも大きく、刺激にあふれていると感じます。


山田正仁先生からのメッセージ

あらゆる領域で「認知症のエキスパート」が求められている

医師や関係者のみなさんには、ぜひ認知症の領域に参入し、活躍していただきたいと考えています。これまで、私自身の研究活動にフォーカスしてお話ししましたが、認知症には、多数の領域でさまざまな視点から認知症克服に向けた取り組みに貢献できる可能性があります。

 

実際の現場での診療やケア、治療・予防法の開発、社会的基盤の整備など、今、あらゆる領域で「認知症のエキスパート」が求められています。

 

私たちは、認知症のプロフェッショナルを育成するために、「認プロ」という文部科学省の事業を2014年度から実施しています。認プロでは、ウェブ上で認知症のe-ラーニング講義(40コマ)や症例検討会(毎月)に参加することが可能です。

地域認知症専門医研修コースやメディカルスタッフeラーニング講座は、全国どこからでも医師・歯科医師や看護・介護・リハビリ等の関係者の参加が可能ですので、ご活用いただければ幸いです。

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