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高齢化の進展でニーズが高まる総合診療医(総合診療科)−その意義とは?

東邦大学医療センター大森病院 院長 瓜田純久先生

わが国では、高齢化の進展によって複数の疾患を抱えた患者さんが増加し、これまでの「臓器別・疾患別」という枠を超えた、総合的な診療へのニーズが高まっています。このような状況を受け、2018年4月に新設された「総合診療科(総合診療専門医)」。その意義について、東邦大学医療センター大森病院 院長、同 総合診療・急病センター(内科)センター長を務める瓜田純久先生にお話を伺います。


総合診療科(総合診療専門医)新設の背景

臓器別・疾患別の枠を超えた「総合的な診療」の必要性

2018年4月の新専門医制度では、従来の基本領域専門医18診療科に加え、「総合診療科(総合診療専門医)」が新設されました。

この背景には、高齢化に伴い、複数の疾患を抱える患者さんが増加したことで、これまでの「臓器別・疾患別」という枠を超えた、総合的な診療へのニーズが高まったことがあります。


「総合診療科」−その意義とは?

総合診療科は、唯一の「断らないための専門診療科」

現在の医療における診療科システムは、高度に発達した専門領域がポツンポツンと点在しており、限られた受け入れ先を求めて患者さんが必死に渡り歩くようなイメージがあります。それはまるで、剣山のうえを歩くようなものです。

 

1人の専門医が対応できる患者数が限られていることもありますが、たとえば典型的な症状がみられない、あるいは併存症があるといった、各診療科で「ここでは診ることができない」と判断された患者さんは、どこへ行けばよいのでしょう。

 

そのような患者さんを受け入れるのが、総合診療医の役目です。ほかのすべての診療科が「うちの専門ではない」と根をあげたとしても、絶対に断らない。その意味で、総合診療科というのは、唯一断る理由がない、「断らないための専門診療科」ともいえます。


これを病院側からみると、ほかの診療科がそれぞれの専門に特化するために、剣山の間を埋めるようにして患者さんをみているのが、総合診療科です。

 

当院では、総合診療・急病センターが対応した喘息は、この10年間(2007年〜2017年)でおよそ6,800例にのぼります。大学病院の傾向として、シンプルな喘息よりも、併存症(たとえば心不全など)がある難しいケースが多く、そのような場合には私たち総合診療科が対応することがあります。

 

とはいえ、どの診療科も「患者さんを断るために」専門の称号を使ってはいけないと思います。たとえ自分たちの専門領域以外の疾患であっても、できる限りの対応策を考えることが大切です。

 

たとえば、循環器内科にかかっている方が肺炎を起こした、あるいは糖尿病内科にかかっている方が発熱したようなときに、すぐに総合診療科を頼らず、目の前の患者さんに何ができるかを考える。その積み重ねが、臓器別・疾患別を超えた診療の一助になることでしょう。さらに、専門領域の診療の幅が広がったり、どこかで思わぬ研究テーマにつながったりすることもあります。ぜひ、そのようなセレンディピティ(思いがけぬ偶然の出会い)を追求していただきたいものです。

 

  • いくつかのニーズに合わせて変化できるハイブリッドな診療科

総合診療科とは、ニーズに合わせて変化できる診療科といえるでしょう。私はよく「ハイブリッド」あるいは「二刀流」という表現をしますが、いわゆる家庭医(主に診療所に勤め、患者さんやご家族の健康問題や地域の予防医療にかかわる医師)でもあり、救命救急センターでも働ける、そのような総合診療医が理想的です。

 

次の記事では、総合診療医の魅力についてお話を伺います。

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