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美原記念病院における摂食嚥下リハビリテーションと栄養管理の取り組み

美原記念病院 院長 美原盤先生

群馬県の南部、伊勢崎市にある美原記念病院は、1963年の設立以来、脳・神経疾患の患者さんを中心として、急性期からリハビリテーション、在宅復帰まで、一貫した医療・介護を提供するケアミックス型病院です。同院では、嚥下摂食リハビリテーションと栄養管理に精力的に取り組んでいます。言語聴覚士の腰塚洋介さんと栄養士の星野郁子さんに、その取り組みの内容についてお話を伺いました。


美原記念病院における摂食嚥下リハビリテーションの取り組み

全ての入院患者さんに対して看護師による嚥下評価を実施

当院では、患者さんが経口摂取できる状態を目標として、入院患者さんに対し、病棟看護師が「嚥下機能評価」を実施しています。

 

 

このような嚥下機能評価の取り組みは、2005年に当院でNST(栄養サポートチーム)委員会が発足したことに端を発します。その際、嚥下スクリーニングチームを設置し、まずは嚥下機能評価を行う看護師のコアメンバーを育成しました。その後、コアメンバーから各病棟のメンバーを教育し、嚥下機能評価に関する知識と技術を伝えました。現在、質の担保を図るために定期的に勉強会を開催しています。また、当院に入職される全ての看護師に対して、嚥下機能評価の指導を行っています。

 

当院では、病棟の種類を問わず、嚥下スクリーニングに関する共通のフローチャートを使用しています。

 

美原記念病院で使われている嚥下機能評価のフローチャート

 

患者さんの食事形態や栄養管理プランを多職種が協働して検討

当院では、実際に患者さんが食事をされる場面において、多職種協働による食事観察(ミールラウンド)を行い、嚥下機能評価を実施しています。具体的には、栄養士、看護師、OT(作業療法士)、ST(言語聴覚士)などが患者さんの食事の場面に立ち会い、摂食状態を把握したうえで、個々の状態に応じた食事形態や栄養管理のプランを検討します。

 


美原記念病院における栄養管理の取り組み

栄養管理の基本方針—「安心安全でおいしい食事提供」を目指して

当院の栄養管理は、主に院内の給食管理と臨床管理に大別されます。

給食管理のチームには栄養士、調理師などが在籍し、臨床管理の部門には管理栄養士が在籍しています。急性期から回復期までさまざまなフェーズで患者さんに適した食事を提供できるよう、病棟ごとに給食管理と臨床管理の担当者を配置しています。

 

 

当院における栄養管理の基本方針は、「安心安全でおいしい食事提供」です。

「安心」は、自宅に戻ったときにも続けられる食事の提供によって叶うものです。そのため、できる限りご家族と同じような食事内容で退院できることを目指します。

「安全」は、嚥下機能に問題があっても食べられる食事の提供によって実現します。そのために、飲み込みやすい、口の中でバラバラになりにくい、食べこぼしにくい食事を提供しています。

さらに、「おいしい」と感じていただける病院食を目指して、加工品の使用をできる限り控え、なるべく手作りの食事を提供しています。それは、たとえきざみ食、ペースト、ムースといった、食べやすさを考慮した食形態の場合でも同様です。

 

バリエーション豊富な食形態で、個々の状態に応じた食事を提供

当院では、一人ひとりの患者さんの状態に応じた食事を提供するために、主食では6種類、副食では9種類の食形態を用意しています。主食の食形態は、米飯、軟飯、粥、おにぎり、プチおにぎり、粥ミキサーです。副食の食形態には、常菜、軟菜、一口大、粗きざみ、きざみ、極きざみ、ペースト、ムース、串があります。

このような食形態と内容は、当院の医師、看護師、言語聴覚士、管理栄養士などが協力して検討しています。

 

 

回復期リハビリテーション病棟の栄養管理—①目標設定と実践

回復期治療中の栄養管理は、退院後にご家族と一緒の食事内容がとれることを目標とします。そのため、体重を適正に保ち、身体機能向上を図り、さらに、退院先(自宅など)を想定した食形態や栄養補給方法を検討する必要があります。

 

ここで、当院の回復期リハビリテーション病棟で実際に行っている栄養管理の2つのポイントについてご説明します。

まず、1つ目のポイントは、体重管理です。BMI20.0以下ならば体重増加を、BMI25.0以上ならば体重減少を目標とします。その際、目標とする体重の増減はまず±5%の値を設定し、体重の推移を確認しながら適切な体重を目指します。BMI18.6~24.9の場合には、体重の維持を目標とします。

2つ目のポイントは、食形態です。入院期間中から、退院後のことを想定して食事内容を考えます。退院後にできるだけご家族の負担が少ない食形態にすることを目標として、多職種同士で情報交換を行います。経管栄養をしている患者さんの場合には、1)経管と経口摂取の併用、2)経口と補助食品による必要栄養量の確保、3)全量経口摂取といった段階を経て、できる限り経口摂取を目指します。また、脳卒中の再発の予防を目標として、患者さんやご家族に対して入院中の栄養管理の目的をご理解いただくための栄養指導を行っています。

 

回復期リハビリテーション病棟の栄養管理—②ミールラウンドでのモニタリング

栄養管理を行ううえで、ミールラウンド(多職種による食事観察)で行うモニタリングは非常に大切です。モニタリングでは、患者さんの食事場面に立ち会い、提供した食事が食べられているか、食べこぼしはないか、どのくらいの時間がかかるかなど、いくつかの項目を確認します。

嚥下障害がある場合には、摂食嚥下機能に合った食形態や食事量の調整を検討し、喫食不良がある場合には、その原因を判定します。また、経管栄養の患者さんについては、消化器症状(下痢、嘔吐、便秘など)の有無を確認したうえで、必要に応じて、経口摂取に向けて食事内容の調整を行います。

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