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管理栄養士の業務を“見える化”する重要性とは? 永生病院主任管理栄養士の思い

永生病院 栄養科主任管理栄養士 松葉杏子さん

東京都八王子市にある永生病院は、一般病床と療養病床の機能を併せ持つケアミックス病院です。同院の栄養科で主任管理栄養士を務める松葉杏子さんは、管理栄養士の業務が“数字で見える”体制を整え、病院内における管理栄養士の立場の確立にも貢献してこられました。

松葉杏子さんと、医療法人社団永生会法人本部栄養統括管理部長である佐藤高雄さんに、栄養科の取り組みと、管理栄養士の魅力について伺いました。


管理栄養士の主な業務内容

当院の管理栄養士は、外来と病棟において栄養ケアを行い、栄養管理と給食管理の両面で患者さんをサポートしています。具体的な業務内容としては、入院患者さんの栄養状態のアセスメント(評価)と治療のために必要な栄養計画の立案、病棟栄養指導やカンファレンスへの参加、外来栄養指導の実施やその広報活動などです。それ以外の時間は、看護師や介護士、リハビリスタッフと患者さんの状況を共有したり、院内の委員会関連の業務や各担当病棟ならではの必要書類の作成を行ったりしています。


主任管理栄養士の業務――業務の“見える化”と目標の達成

栄養科の主任管理栄養士としての主な業務は、目標を明確に設定し、目標達成のためにチームを導くことです。当院の管理栄養士には、外来と病棟での業務それぞれについて、賞与の評価にもつながる業務ごとのノルマを定め、各自達成に向けたスケジュールや問題の共有、課題の抽出を課しています。

管理栄養士の業務は、“美味しく安心できる病院食の提供”、“治療効果を高める栄養療法の実践”、“生活環境において、健康的に食事を楽しむための栄養食事教育”などです。

各管理栄養士が実践している業務やサービスを、数字で示したいと考えていましたが、実際管理栄養士の賛同を得るまでには時間がかかったように思います。

そこでまずは、個人の目標を担当病棟の回転数などから大まかに設定し、達成の可否に関する考察を共有することから始めました。2年目は、前年より目標値を高く設定することで、スケジュール感覚や課題抽出力を高めるトレーニングを図りました。特に栄養指導については、徐々に従来の実施件数を超えるようになり、3年目である今年は歴代最高の指導件数を達成しました。それとともに各管理栄養士の意識も成長していると感じます。


管理栄養士がマネジメント感覚を持ち、自ら発信する姿勢の重要性

 

業務の“見える化”を進めるなかで、営業的、広報的な感覚や、数字を残し成長していくというマネジメント的な感覚、自ら発信するマインドを持つことがポイントだと感じました。

たとえば、栄養科では行事食やご当地メニューを考案していますが、食事提供にとどまらずに病院ホームページ上でも発信するという広報活動は重要であると考えています。私たちの取り組みを、面会へいらっしゃることが難しいご家族や地域の方に知っていただき、安心していただくツールとなるからです。

このような活動をするなかで、目標となる“数字”を達成するためには、マネジメント感覚が必要なのだと学びました。たとえば、外来栄養指導は医師の指示のもとで行いますが、指示を待っているだけでは、対象の患者さんに十分に管理栄養士が関わることができないと考えます。医師に直接、「この患者さんは食事の話をよくされていますね。管理栄養士の介入はいかがですか」などと上申することで、管理栄養士に任せようかと考えてもらいやすくなります。

特に主治医との関係をしっかり築いておくことで、情報の獲得がスムーズになり、食事内容の変更や、経管から経口への移行などを提案しやすくなります。当院では、管理栄養士全員がPHSを持ち、連絡があればいつでも対応できる環境を整えています。


管理栄養士に必要なスキルとは?

患者さんに心を開いてもらうコミュニケーションスキル

管理栄養士に何を相談したらよいか分からないという患者さんは多くいらっしゃると思います。たとえば、「年をとって痩せてきた。でも年齢的なものなので仕方ない」と思うと相談する必要性を感じないかもしれません。しかし、低栄養の状態になってしまうと、できていたことができなくなり、持病の悪化などにもつながってしまう恐れがあるので、「痩せたな」「食が細くなったな」という段階で、ご相談いただきたいのです。

そのためにはまず、患者さんに信頼してもらうことが必要です。患者さんに心の扉を開いてもらえるかは、管理栄養士のコミュニケーションスキルにかかっていると考えています。

 

否定せず、言い方を工夫して丁寧に伝えること

食事は各家庭内で完結させることができるものなので、食生活に問題があっても気づかないまま過ごしている方は多いと思います。たとえば、朝は何も食べないご家庭もあれば、朝は菓子パン、夜はお菓子を食べるというご家庭もあり、子どもには給食で栄養をとってもらえばよいと考える親御さんも珍しくはありません。

そこへ管理栄養士が「そのお食事は間違っていますよ」などと指摘したら、その方がこれまで楽しく過ごされてきた思い出を否定してしまう可能性があります。ご家庭内で「こんな食生活はいけないよね」と笑いながら言い合っていたとしても、管理栄養士に指摘されれば腹が立つこともあると思うのです。

管理栄養士は、一人ひとりの食生活を否定するようなことを言ってはなりません。そのうえで、問題のある食生活を続けるとどのような病気になる可能性があるのか、言い方を工夫して丁寧に伝える責務があると思っています。

たとえば、患者さんと外来栄養指導でお話しするときは、初回は食事についてほとんど話さないことも多いです。継続して来ていただいて初めて、意識や行動に変化が出て、患者さんも「経済的な事情があってね」、「子どもがこんな風でね」といった、医師には言いづらいような話題に触れてくださることもあります。患者さんが食品の選択を変えることができるようになってきたり、患者さんの不安が少しでも和らいだと感じられたりしたとき、大きなやりがいがあると感じます。


管理栄養士という仕事の魅力

食生活に問題のある患者さんでも、栄養について何かしら心がけていることがあるものです。たとえば、健康のために朝1杯の牛乳を飲む、野菜を先に食べる、夜はお菓子を食べないよう気をつけているなど、健康のためにご自身ができることを選択できているのです。管理栄養士からのアドバイスも、それと同じように「これならできそうだ」と感じていただければ、やがて習慣になっていくのではないかと思います。

患者さんが楽しみにされている“食事”と、患者さんが望まれている“健康”とを結び付けて提案し、不安を和らげられること。それが管理栄養士の魅力だと感じます。

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