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知っておきたい巻き爪ケア・対策――ペディグラスによる補正や足の環境改善法とは

巻爪レスキューつくば オーナー/看護師 右田 貴子さん

多くの方が悩んでいる巻き爪。特に高齢者の場合、自分で観察することが難しく、巻き爪から思わぬ弊害を生むこともあるため、周囲の協力は不可欠で早めに対処することが大切です。巻き爪の対策には足を取り巻く環境の改善が重要です。また最近は、少ない痛みで補正できる「ペディグラス」という巻き爪補正技術が登場しています。ペディグラスによる補正と足の環境改善に取り組んでいる、巻爪レスキューつくば オーナーの右田 貴子(みぎた たかこ)さんに、巻き爪ケアと対策について伺います。


「ペディグラス」による巻き爪補正

補正方法――足の環境改善も大切

ペディグラスとは、プラスチックの器具を爪の表面に貼り付けながら巻き爪を補正する特許取得技術のことです。保険診療でよく行われる外科的な処置と異なり、爪を抜いたり切ったりする必要はなく、施術時の痛みもほとんどありません。貼り付けたペディグラスは爪と一緒に伸びてくるため、ご自身でやすりを使って長さを調整することができます。

 

また、巻き爪を悪化・再発させないためには補正に加えて、足を取り巻く環境を改善することも重要です。まずは補正により疼痛(とうつう)を改善したうえで、その方の生活スタイルや履物、こだわりなどを詳しく伺いながら、その方が無理なく行える足の環境の改善方法について一緒に検討していきます。

 

ペディグラスは医療の資格がなくても扱える技術なので、爪白癬(つめはくせん:いわゆる爪水虫)の感染や爪周囲炎などの炎症が起こっている方など、医療的な問題がある場合は医療的な介入が優先されます。そのため医療機関とも連携をとりながらペディグラスの実施について検討しています。

 

メリット・デメリットは?

ペディグラスの大きなメリットは仕上がりが綺麗で装着による違和感も少ないことです。見た目も器具をつけているかどうか分からないほどです。また、ペディグラスの器具にはさまざまな種類があるので、陥入爪や変形爪、欠けている爪や肥厚爪など幅広い爪の状態に対応できます。線ではなく面で補正できることも大きなポイントです。

右田さんご提供

 

デメリットは、保険が使えず自費になるためコストがかかることです。また、ペディグラスは医療的な資格がなくても取り扱える技術のため、施術者が医療従事者ではないケースもあります。巻き爪の患者さん(特に高齢者)は、白癬や慢性的な基礎疾患など巻き爪に関わる合併症を持っている方も多いため、医学的な知識を持たない方が施術できるという点は、デメリットといえるかもしれません。


ペディグラスとの出合い

私がペディグラスに出合ったのは、日本フットケア学会(現「日本フットケア・足病医学会」)に参加した時のことでした。当時私はリウマチケア看護師として、リウマチ患者さんのフットケアに力を入れていました。フットケア指導士の資格は取ったものの、巻き爪に対するよい対処法が見つけられていませんでした。ドイツ式のワイヤー補正*の技術を習得した際、ワイヤー装着中の違和感が強く靴下や布団に引っかかる不便さも感じていました。

 

そんな時、学会でペディグラスが出展されており、その補正力や即効性、何より見た目の綺麗さに惹かれました。当時茨城県内の総合病院に勤務していた私は、ペディグラスを扱っている施設に患者さんを紹介しようと考えたのですが、近隣にはそうした施設がありませんでした。それならば自分でやるしかないと思い、ペディグラスの技術を学び資格をとりました。その後クリニックに移りフットケアに力を入れ、巻き爪の補正を行っていましたが退職することになったため「巻爪レスキューつくば」を立ち上げました。

 

巻き爪でお悩みの方の中には、爪の形を気にしている方も多くいらっしゃいます。先日施術した方には「今まで爪の形が悪くて見るのも嫌だったけれど、みんなと同じ四角い爪になれてとてもうれしい。サンダルで出かけるのが楽しみになった」と喜んでいただけました。

 

*ドイツ式のワイヤー補正:ORAシュパンゲライセンス ワイヤーを爪に引っかけて補正する技術


巻き爪を悪化・再発させないための足の環境改善

正しい靴の選び方・履き方

先ほども少しお話ししましたが、巻き爪の予防・再発防止には足の環境改善も重要で、特に意識していただいたいのは「靴の選び方・履き方」です。実は歩くときには、体重の1.2倍の圧力が足にかかるといわれています。日常的にあまり歩かない方でも1日に100~200歩程度は歩いていると思いますが、その一歩一歩に相当な圧力がかかっているのです。

みなさんは1日に何歩歩くでしょうか。体重×歩数と単純計算しただけでも、かなりの負担を足が担っていることが分かると思います。

 

靴を選ぶときはインソールを抜いて踵に合わせて足を置き、つま先に0.5~1cmの隙間ができるものがよいでしょう。大きすぎても小さすぎても巻き爪の原因になります。また高齢者ではスリッポンタイプの靴を履いている方も多いですが、足をきちんと固定するためには、紐やマジックテープで調節できるタイプのものをおすすめしています。

 

理想的な靴の履き方は、まず靴をかかとにフィットさせることです。その状態で足の甲を紐やマジックテープでしっかりと固定します。紐で固定する際は、一番上の紐だけを引っ張るのではなく、下から全体的に同じ圧で締めましょう。締めるときに圧力が一か所に集中してしまうと、血流が悪くなったり不快感につながったりするためです。面で支えることにより、サポート力がアップして足の甲に対する圧力も分散されます。かかとと甲で靴を固定することにより、常に指先と靴の間に空間ができ指先が圧迫されない状態をキープすることができますし、足先をしっかり使うことができます。

右田さんご提供

 

正しい歩き方を意識――インソールによるサポートやストレッチで改善することも

歩くときに足がうまく使えているかどうかも巻き爪に影響を与えます。理想的な歩行方法は、かかとからつま先にかけて流れるように地面につけて歩くことです。しかし巻き爪の方では、足の前側が上手に使えていない方が多くいらっしゃいます。その結果、足指の付け根を横に結んだ「横アーチ」を支える筋力が低下しアーチが崩れて指が横に広がった開張足(かいちょうそく)の状態に陥ります。開張足は、浮き指や外反母趾の原因になります。横アーチが低下している方には、横アーチサポートがあるインソールの使用や、筋力トレーニングを推奨しています。

 

また、足の裏側(足首から太ももにかけて)の筋肉が硬くなっているとスムーズな歩行ができなくなるので、硬い場合にはその部分のストレッチも巻き爪対策として有効です。

巻き爪になっている方は、痛みを避けるためにつま先を地面につかないようにして歩いていることも多いです。足先がつかない歩き方を長年続けている方は、踵からつま先への体重移動を意識しつつ、遠くを見ながら大股、速足であるいてみる。それが難しいときには壁から1mくらい離れてつま先立ちで壁を押してみるなど、つま先を使う感覚を確認してみましょう。もし痛みがある場合は無理して行わないでください。

 

爪の切り方・衛生管理

爪の切り方も大切です。ポイントは、指先と同じ長さでまっすぐ切る(スクエアカット)ことです。まっすぐカットすると角の部分が外に出るので、角はやすりで削りましょう(スクエアオフ)。爪を指先より短く切ったり、角を爪切りで切り込んだりしてしまうと、端までしっかり切れないこともあり、切った部分に新たな角ができてしまうことで陥入爪(かんにゅうそう:爪の先端が皮膚に刺さり炎症を起こした状態)や爪周囲炎の原因になることがあります。やすりで角を削るときには皮膚側からやすりがけすると角が取れやすくなります。

「巻き爪になっているからわざと伸ばしている」という方もいらっしゃいます。しかし、爪はもともと巻こうとする性質をもっているため、指先より長くなればなるほど巻きが強くなってしまいますので、指先と同じ長さに爪の長さを保っておくことは大切です。

 

入浴時には柔らかいブラシで爪周囲にたまった汚れを優しくかきだしたり、泡で洗浄しシャワーで流したりするなど、清潔に保つことは爪周囲炎の予防に役立ちます。爪の中には皮膚が代謝されて出たゴミのようなものがたまってしまいます。これが巻き爪の痛みの要因になることもあるので、特に高齢者の場合は爪周りの汚れを取ってあげることも大切なケアの1つです。


足の傷は早めに対処を――積極的なフットケアが生む効果

巻き爪を含め、足にできた傷は高齢者にとって命取りになることがあります。しかし、視力の低下や柔軟性の低下から足の状態を十分把握することが困難になるため、周囲のサポートが欠かせません。また足に痛みがあるとストレスになるばかりではなく、足を使わなくなって筋力低下を招き、体が思うように動かなくなると好きなことができなくなって生活の質も低下してしまいます。ですから日頃から足を観察し巻き爪などのトラブルがみられたときには、早めに対処しましょう。

 

足の観察や保清や保湿、爪切りなどのフットケアが不要な高齢者はいないと考えています。フットケアを通じてスキンシップによる癒し効果も手伝って信頼関係が深まりやすく、普通に話しているだけでは聞くことができない本音がこぼれてくることもよくあります。フットケアによる保険点数の見直しも行われ、少しずつフットケアを実施できる環境が整いつつあります。ぜひ一緒にフットケアの楽しみを実感してみましょう。レッツトライ! 

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