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病院薬剤師という仕事にやりがいを感じて――熊野 晶子さんの思い

鳴門山上病院 薬剤科主任 熊野晶子さん

徳島県鳴門市にある鳴門山上病院は、地域の医療、介護、福祉連携の充実に貢献することを目指し、主に高齢の患者さんに対するリハビリテーションと療養を提供する病院です。同院の薬剤師主任を務める熊野 晶子(くまのしょうこ)さんは、患者さん一人ひとりに寄り添った服薬管理に努めるとともに、異なる職種のスタッフと協力しながらチームで患者さんをサポートすることに注力されています。

学生時代から病院薬剤師を志し、鳴門山上病院で働き続ける熊野 晶子さんに、病院薬剤師という仕事を選んだきっかけと、病院薬剤師としてのご経験について伺いました。


父にすすめられて薬剤師を目指した学生時代

父が設計士だったので、さまざまな住宅を目にする機会の多い環境で育ちました。高校生の頃までは私も父と同じ設計士になりたいと思っていましたが、父に「女性の設計士は少ない」などの理由で反対され、設計士の夢を諦めることになりました。その代わり、薬剤師は「女性も働きやすいやりがいのある職業だ」とすすめてくれたのです。これが薬剤師を目指したきっかけになりました。

元々私は理系の科目があまり得意ではなかったので課題はたくさんありましたが、実際に薬剤師として働くようになってみると、薬剤師は非常にやりがいのある仕事だと分かりました。父のすすめに従ってよかったなと、今では本当に感謝しています。


鳴門山上病院に入職したきっかけ

薬剤師の就職先には、病院、調剤薬局、企業などさまざまな選択肢があります。私は、その中から病院に就職しようと在学中から決めていました。患者さんの状態を確認しながらそばでサポートできる病院薬剤師の仕事に魅力を感じたからです。また、迅速な対応が求められる急性期病院よりも、患者さん一人ひとりの処方を毎回しっかりと関わることのできる慢性期病院のほうが、自分に向いていると思いました。

転機が訪れたのは、就職先の病院を検討していたときのことでした。母校の教授が「鳴門山上病院という慢性期の病院が、夏祭りのボランティアを募集している」と声をかけてくれたのです。私は早速、鳴門山上病院に問い合わせ、申し込みました。

夏祭り当日、病院のスタッフとおそろいの法被(はっぴ)を貸していただき、私は出店のたこ焼き係を担当しました。そのときお店にいた介護士さんが、すごく元気のいい方で、店全体が活気に満ちていたことをよく覚えています。その介護士さんと一緒にたこ焼きを作りながら、「楽しい病院だなあ」と思ったことが、鳴門山上病院に就職する決め手になりました。


薬をきちんと服用してもらうために工夫した日々

これまでにもっとも印象に残っている患者さんは、私が入社して2年目に担当した回復期病棟に入院された高齢の患者さんです。その患者さんの持参された薬は種類も量もすさまじく、下剤については数百錠も持っていました。その下剤を風邪薬だと勘違いして、風邪が治ったからと自己判断で服用を中止していたのです。そして、便秘になり、別の下剤を家族からもらって飲んでいましたが、それでも本人はきちんと管理できているつもりだったという、思い込みの強い患者さんでした。

当院では、適切な服薬管理のため、入院患者さんには薬を一包化して調剤しています。そのため、その患者さんの処方薬も一包化してお渡ししました。すると、入院から数日経ったある日、患者さんが「自分で薬を出して飲みたいのに、どうして一包化するのですか。何の薬が入っているのか自分では分からなくなってしまった」と、訴えてこられたのです。

そこで、それぞれの薬の情報を書き記した、写真付きの“お薬カード”を作り、包みの中にどのような薬が含まれているか、患者さんご自身が分かるようにしてお渡ししました。それでも数日後にはまた、患者さんは「自分で薬を管理したい」とおっしゃいます。そこで、次は薬をシート包装のままお渡しましたが、それでは自分で管理しているという感覚を得ることは難しかったようです。その次には、“お薬玉手箱”と名付けた薬箱に、1週間分の薬を入れて管理してもらうように提案しましたが、服薬状況の確認に行くなかで、次第に薬に関する意欲の低下が見られ、だんだんと自己管理が困難になってきたようでした。

その患者さんは幸いにもお喋りが好きな方だったので、私が頻繁に顔を出しているうちに少しずつコミュニケーションを取れるようになり、やがて一包化での管理を受け入れていただきました。また、退院するまでの間に、“お薬玉手箱”を使った服薬管理の練習に励んでもらうことも叶いました。


画一的な対応ではいけないと学んだ経験

前述の患者さんは、後日、通所リハビリテーションを利用することが決まり、通所リハビリテーションのスタッフがご自宅での状況を確認するようになりました。一人暮らしとお聞きしていたため、退院後も患者さんの服薬状況を確認できる環境ができたことにホッとしました。また、顔を合わせるたびに、お薬玉手箱を活用してくれていることを報告して下さいました。

私は、慢性期の患者さんには処方薬を一包化すべきだ、それが薬剤師としてのよいサービスだ、と思い込んでいたのかもしれません。しかし、「自己管理したい」という患者さんの思いにどのように寄り添ったらよいだろうか、退院後の服薬管理はどのような形が一番適しているだろうかと悩んだ経験から、入院中から患者さんの服薬管理を支援し、そして、患者さんが退院された後のことを見据えて退院支援を行うことが大切であることを実感しました。

患者さんが薬を飲む状況を想定し、どのような調剤が適しているのか、その薬が本当に合っているのかを考えることができれば、患者さんにもっとも適した薬物療法を提供しようとする姿勢が身につきます。自分が担当している病棟の患者さんではない場合には、担当病棟の薬剤師に情報を共有してもらうことを心がけ、病院全体で協力しながら患者さんのサポートに徹することも重要だと考えています。


多職種と協力して働く病院薬剤師の魅力

 

看護師やリハビリテーションスタッフなど異なる職種のスタッフとのやり取りが欠かせない病院薬剤師の仕事には、難しさを感じることもあります。一方、患者さんのそばでサポートしたり、すぐに患者さんの状態を確認したりすることは、病院薬剤師の魅力のひとつであり、私にとって大きなやりがいを感じられることです。

また、薬に関わる業務だけにとどまらず、病院全体の安全や管理を考える業務に携わる機会もあります。私自身、目の前のリスクに注目して病院全体に対する視点がおろそかになってしまうこともありますが、病院全体を意識できる薬剤師になりたいと思い、日々勉強を重ねています。

これからも、病院薬剤師として地域に貢献するとともに、当院の主任薬剤師として次の世代を引っ張っていけるよう、頑張っていきたいと思います。

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