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標準治療に加えて行う「腸内環境に着目した栄養ケア」の考え方とは?

目白第二病院 副院長 水野英彰先生

かつてないスピードで高齢化が進む日本。このような流れのなかで、水野英彰先生(目白第二病院 副院長)は、高齢の患者さんに対するフレイル対策に関する研究・実践を進めています。記事2では、経腸栄養管理の方法についてお話しいただきました。本記事では、腸内環境に着目した栄養ケアについてお話を伺います。


腸内細菌(腸内環境)に着目した栄養ケア

人の腸内には数千種類の腸内細菌が生息しており、そのバランスが体の状態や病気の原因などに関わりを持つことが知られています。腸内細菌の理想的なバランスは、有用菌:有害菌:日和見菌=2:1:7と言われています。

高齢になると、たとえ健康であっても、腸内環境のバランスが崩れ、悪玉菌が増加する傾向があります。さらに、何らかの病気を発症し、入院している状態では、禁食などの影響により腸内環境の乱れが起こりやすくなります。また、高齢者の場合には、腸内環境が乱れてしまうと、その後リカバリーするのに時間を要します。このような点から、病院では、標準治療と同時に腸内環境を整える工夫・ケアが必要であると考えています。

 

腸内環境を整える1つの考え方として、1)プロバイオティクス、2)プレバイオティクス、3)バイオジェニックスの3つの方法があります。

プロバイオティクスとは、「腸内フローラ(腸内細菌叢:腸内にさまざまな細菌が生息する様子を指す言葉)のバランスを改善することによって宿主の健康に好影響を与える生きた微生物」と定義されており、アンチバイオティクス(抗生物質)に対して提案された言葉です。一定の条件を満たすことが科学的に証明された特定の菌がプロバイオティクスであり、一般的には、乳酸菌やビフィズス菌、納豆菌などが知られています。

プレバイオティクスとは、「腸内フローラのバランスを改善する難消化性食品成分」と定義されています。プレバイオティクスには、プロバイオティクスと同じように一定の条件があり、たとえば、オリゴ糖や食物繊維などが該当します。

バイオジェニックスとは、「腸内フローラを介することなく、直接生体に作用し、免疫賦活、コレステロール低下作用、血圧降下作用、整腸作用、抗腫瘍効果、抗血栓、造血作用などの生体調節、生体防御、疾病予防・回復、老化制御などに働く食品成分」で、乳酸菌体ペプチド、DHA、ビタミンA・C・E、β-カロチンなどの食品成分が当てはまります。

 

私は、高齢の患者さんに対する医療・ケアにおいて、この3つの手法をうまく組み合わせて腸内環境を整えるようはたらきかけることが重要であると考えています。

その具体的な方法として注目しているのが、乳酸菌などの有用菌を含有する「発酵乳(ヨーグルト)」です。発酵乳は、発酵によってつくられた栄養成分が手軽に摂取でき、また、短鎖脂肪酸(脂肪酸のうち炭素の数が7個以下のもの)のはたらきが腸内環境の改善や免疫力の向上に寄与する可能性があります。

 

時代は移り変わり、医療を取り囲む状況にも変化が訪れています。標準治療だけでは医療を完遂することが難しいこともあるでしょう。このような流れのなかで、私は、標準治療に加えて適切な栄養管理・ケアを行うことで、よりよいアウトカムを目指したいのです。医師が今以上に栄養ケアについて知見を深め、その知識や技術を武器にする時代がくることを期待しています。

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