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松谷之義先生に聞く――ノルディック・ウォーキングの健康増進効果とは?

松谷病院 理事長 松谷之義先生

ポールと呼ばれる杖を両手に持ち歩行する「ノルディック・ウォーキング」という運動をご存知でしょうか。1930年代フィンランドで発祥し、現在では日本でもその健康増進効果が注目され、近年の超高齢社会において健康寿命の延伸という観点で期待が集まっています。ノルディック・ウォーキングの成り立ちや歩き方のポイントについて、松谷 之義(まつたに ゆきよし)先生(全日本ノルディック・ウォーク連盟 学術委員長、松谷病院 理事長、日本ノルディック・ポール・ウォーク学会 名誉会長)にお話を伺いました。


ノルディック・ウォーキングの成り立ち

ノルディック・ウォーキング発祥の地は北欧フィンランドです。その起源は第2次世界大戦より以前の1930年代といわれており、元々はクロスカントリーの競技者が夏場に行うトレーニングの1つでした。その後、陸上競技者やボートレーサーといったアスリートたちがトレーニングに取り入れるなど、さまざまな形で活用されるようになりました。

国際的に「ノルディック・ウォーキング」という言葉が定義されたのは1997年です。日本でもその頃から普及し始めました。2000年に介護保険制度の開始に伴い「健康寿命を延伸するための体力づくり・生活習慣病の対策」への関心が高まり、そのような動きのなかでノルディック・ウォーキングも注目されるようになりました。このような社会的な変化も、日本におけるノルディック・ウォーキング普及を後押ししたと認識しています。

 

写真:PIXTA


3種類の歩行スタイル(松谷医師 考案)

ノルディック・ウォーキングには、歩き方や運動の強度によって3つの種類があります。

1つ目は「スタンダード」という基本スタイルで、ポールを握った手を胸のやや下に置いて前傾姿勢にならないように体をスッと前に進める方法です。2つ目は「アグレッシブ」といい、スタンダードよりも運動強度が高い歩き方です。ポールをまず前に出して、思い切り踏み切る感じで上半身を前に進めます。ポールを曲げて伸ばすという動きを繰り返すことで歩幅が広くなり、歩くスピードも上がります。3つ目は「ディフェンシブ」といってポールで体を支え守りながらゆっくりと歩くスタイルです。先の2つよりも運動強度が低く、体のバランスを取りながら歩行できるため、運動経験の少ない高齢者や膝などを痛めている方などに推奨されます。

ノルディック・ウォーキングを行う際には、それぞれの年齢や体の状態、病状などに応じて3つの歩行スタイルを使い分けることが重要です。腰痛症や膝関節症、神経難病の方のリハビリテーションにも応用できますが、病状などによって適切な方法が異なりますので、必ず主治医に相談のうえ行うようにしましょう。

なお、下り道では転倒しないようご注意ください。平坦な道と同じような感覚でポールを前のほうに出して体を支えて歩こうとすると転倒しやすくなるため、下り道ではポールを置く間隔を狭く、歩幅も小さくすることをおすすめします。

 


通常の歩行との違い、健康増進効果は?

ポールを両手に持つことで通常の歩行よりも姿勢がよくなり、腕を動かして体を支えるので筋力アップにつながります。この2つが通常の歩行と異なる点です。

また、日本のような超高齢社会においては健康寿命の延伸という点でも期待できます。健康寿命を伸ばすことは、すなわち介護を受ける期間を短くする(介護が必要となる時期をなるべく遅らせる)ということです。そのためには病気やけがの予防はもちろん、フレイル(心や体のはたらき、社会的なつながりが弱くなった状態)やサルコペニア(加齢に伴う筋肉量の減少)、ロコモティブ症候群(運動器の障害によって移動機能の低下をきたした状態)を防ぐことが非常に重要です。ノルディック・ウォーキングは筋力アップにもつながるため、フレイル予備軍の高齢者においても有用なトレーニングになります。

 

写真:PIXTA


ポールにもいくつかの種類がある

通常のポールに加えて、さまざまな種類のポールがあります。たとえば私が考案した伸縮性のある「エアーポール」は、グッとポールを押すと縮み、さらに中に空気が入っているので押し返されて元の長さに戻るポールです。ポールを押し込むことで上腕三頭筋(両腕の裏側にある筋肉)を使い、通常のポールよりも筋力アップが期待できます。そのほかにも、裾が広がっており地面と接触する面積が大きい安定性が高いポールや、水中歩行のトレーニングに使う「水中ポール」などもあります。


「誰でも、いつでも、どこでも」できる(松谷医師提案、キャンペーン)

ノルディック・ウォーキングの利点は「anybody, anytime, anywhere(誰でも、いつでも、どこでも)」できることです。自然の中で行うイメージがあるかもしれませんが、街中でもできます。実際、銀座でノルディック・ウォーキングをしている女性を見かけたことがあります。超高齢社会における健康寿命の延伸は、私たちの大きな課題です。体力づくりや筋力アップに向けて、ぜひノルディック・ウォーキングを楽しみながら実践してみてください。

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