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東京都大田区における新型コロナウイルス感染拡大の影響

京浜病院 院長 熊谷賴佳先生

新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、多くの医療機関で患者数が減少しています。それによる収入減で近い将来、存立の危機に直面する病院も少なくないとみられています。

今回は、新型コロナウイルス感染拡大により医療機関がどのような影響を受けているのか、特に大田区の現状について、日本慢性期医療協会常任理事、京浜病院院長の熊谷 賴佳(くまがい よりよし)先生に伺いました。


新型コロナウイルス感染拡大による医療機関への影響とは

2020年4月、東京都大田区内の開業医から「患者さんの中に新型コロナウイルスの感染者がいた」と聞きました。その診療所は、陽性者が発見されてすぐ保健所に連絡し、外来を休診にし、職員全員と当日の外来患者さんにPCR検査を実施したそうです。幸いにも当該患者さん以外のPCR陽性者がおらず、院内ではマスク着用と手洗いを励行(れいこう)していたことから“濃厚接触者はゼロ”と判断され、わずか5日間の休業の後に診療を再開できました。しかしこの期間の収入がなくなり、その後も外来患者が減ってしまいました。国からの財政支援・補填(ほてん)はありません。

 

同じ頃、当院でも微熱が続いて休んでいる職員がいました。呼吸器症状は見られないものの、微熱のある期間が5日間を超えて倦怠(けんたい)感を訴えていました。当院を受診させたくても、もしも感染していたら、職員や外来患者への感染リスクがあります。それはできる限り避けなければと思い、保健所に連絡を入れたところ、まずは診察を受けてからとの返事でした。近隣の病院でも「保健所経由でないとPCR検査はできません」と断られ、自宅待機。結局、新宿区の病院に検査を依頼して、結果はPCR陰性。ホッとしたのもつかの間、敗血症が見つかり緊急入院となりました。もしそのまま自宅待機を続けていたら、命が危なかったでしょう。


民間病院は倒産の危機

新型コロナがどれだけ病院経営に影響しているか、具体的に説明しましょう。

新型コロナの患者を受け入れているある大学病院の減収は、毎月5億円におよぶと聞き及んでいます。全国の病院も、毎月1割程度の収入減*となっています。診療報酬が振り込まれるのは2か月後ですから、4月分の診療報酬が振り込まれる6月時点で1割の収入減。減収分を翌月の収入から補填すると7月は2割不足……と、ダメージが積み重なり、10月には累積で約5割減となります。秋ごろには資金繰りに困難が生じる医療機関も出てくるでしょう。早急に資金の補塡が必要です。

しかし現在、日本では医療機関に損失補填をする動きはなく、このままでは民間病院の多くが破綻してしまいます。そうなると新型コロナウイルス感染の第2波が来たときには病床が使えず、機能不全を起こすのではないかと危惧しています。

 

*新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況緊急調査(最終報告)、日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会、20200527


大田区における新型コロナウイルス感染症の対策事例

院内感染対策に力を注いできた大田区入院医療協議会

前述の診療所が、わずか5日間で診療再開できた背景には、大田区の保健所における、感染症に関する知識レベルの高さがあると思います。

大田区では十数年前に“大田区入院医療協議会”が立ち上げられて以来、入院医療に関するさまざまな勉強会を行ってきました。その中でも、私が2代目部会長を務めた“院内感染対策専門部会”は、院内感染を防ぐ目的でインフルエンザ、ノロウイルス、多剤耐性菌の問題などについて学んでいる部門です。院内感染対策における消毒液の使用や手洗いの徹底など、スタンダードプリコーション(標準予防策)の重要性についてコンセンサスを得た集団であり、そこに大田区の保健所も参加していました。

2月に設置された大田区の“三医師会新型コロナウイルス感染症対策調整委員会”でも、積極的に緊急の対策会議を開催しています。提案された院内感染対策のアイデアは迅速に反映され、メンバーはリアルタイムの情報を常に把握しているという状況に恵まれました。

 

京浜病院が実践する院内感染対策

京浜病院 床に敷き詰められた消臭・除菌タイル、空気清浄機

 

私が院長を務める京浜病院の感染対策についてもお話しします。

当院では、光触媒技術を取り入れた消臭・除菌製品を導入し、院内感染対策を徹底しています。光触媒とは、光に触れると消臭や殺菌消毒の作用を持つ物質のことで、酸化チタンなどが知られています。

光触媒を用いた技術は、学校のトイレや養豚場の消臭対策などとして幅広く応用されていますが、医療機関で実用化するためには、空気に触れたり菌と接触したりする面積の確保が課題とされていました。そこで空気との接触面積を増やすために小さな金属の点を打ち出す技術を開発したのが、株式会社フジコーです。同社の光触媒技術に感銘を受けた私は、院内の空気清浄機や床のタイルに光触媒技術を取り入れることを決めました。

現在、京浜病院の床や廊下の大半に、この光触媒技術を応用したタイルを敷き詰めており、病院内の不快な臭いがほぼ消えるという効果を実感しています。また、新型コロナウイルスの院内感染ルートとして、靴底についたウイルスから広がる可能性が考えられていることからも、落下した菌やウイルスを24時間にわたり殺菌消毒可能な状態にしておくことは有用だと考えています。

新型コロナウイルス感染対策としては、普段の手洗いなども非常に重要ですが、このような環境を整えたこともプラスになっているのではないかと思っています。今後、医療の現場では、新しい技術の導入も含めてさまざまな感染対策をとっていく必要があると考えています。

 

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