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慢性期医療とは? 超高齢社会で増すその重要性

一般社団法人 日本慢性期医療協会会長 武久洋三先生

後期高齢者(75歳以上)が人口の3割を占め、世界でも類をみない超高齢社会となった日本。高齢の患者さんはさまざまな臓器の機能が低下している傾向にあり、短期間で治療が完了しないケースも多くみられます。このように患者さんが変化するなかで、「慢性期医療」の重要性は高まり続けています。


日本における医療の現状は?

  • 慢性期医療は「ほんの付け足し」という認識が強かった

残念ながら、これまで「慢性期医療」といえば「ほんの付け足し」といった認識が強くありました。医療とはおもに急性期の医療であり、療養病床で行う慢性期医療は余分なもの—。そのような認識は、医療界だけでなく厚生労働省にさえ存在していました。

 

  • 高齢化する社会で患者さんは変化している

世界でも類をみない超高齢社会となった日本において、患者さんは変化しています。その多くは、急性期医療で完治するような方ではなく、75歳以上の方(後期高齢者)です。

高齢の方は加齢に伴いさまざまな臓器の機能が低下しているため、病気にかかったときに随伴症状が起こり、短期間ではなかなか治らないことも多い。そのようなケースは、ここ20年間で何倍にも増加しています。

 

  • 患者さんを「臓器別」にみるのには限界がある

しかし、これまで患者さんを「臓器別」にみていた急性期病院は、このような変化に対し十分な適応ができていません。急性期病院でそれぞれの臓器だけをみて治療すると、ほかの機能が低下することがあります。結果として、患者さんが「よくならない」「退院できない」といった状況に至るのです。

現在の医療において、患者さんを臓器別でみることには限界があるといえるでしょう。


日本の医療における課題とこれから目指すべき姿

  • 慢性期病院における「社会的入院」をなくす

前項でお話しした現状に対して、2006年の診療報酬改定で療養病床の再編制が行われ、「慢性期医療の療養病床では重症患者さんをみる」という国の方針が示されました。

さらに2018年の診療報酬改定では、療養病床の看護配置基準は20:1に一本化され、医療区分2・3*1を5割は入れるという条件が加えられました。この条件がクリアできない病院については、2年間の経過措置が取られます。この改定には「療養病床は、慢性期の治療病棟として機能するべき。社会的入院*2をなくしていく」という国の意図があると考えます。

 

*1・・・医療区分について

  • 医療区分2・3:医師および看護師により、常時監視・管理を実施している状態や、難病、脊椎損傷、肺炎、褥瘡等の疾患等を有する者。
  • 医療区分1:医療区分2・3に該当しない者(より軽度な者)

*2・・・社会的入院とは:医学的な必要性が小さいにもかかわらず、新規に入院をする、あるいは入院を継続すること。たとえば、肺炎で入院した患者さんが、治療後に退院できる状態であるにもかかわらず、家族側の理由などにより入院を継続している状態。

 

  • 地域包括ケア病棟で急性増悪した患者さんを受け入れる

現在、軽度・中度の救急患者さんのうち高齢者の占める割合が増えています。高齢者の場合、たとえば腹痛だけでも自分で動くことができず、救急車を呼ぶ方もいます。今後さらに高齢化が進めば、老老家庭や高齢者の独居が増えていき、必然的に高齢者が救急車を呼ぶケースは増えるでしょう。

そのとき、いわゆる「県下一の救急医療センター」に軽症から重症まで患者さんが玉石混交で救急搬送が集中すれば、救急のスペシャリストや医療資源が有効に活かされない事態に陥ります。そこで厚生労働省は2014年に、地域で救急患者さんを受け入れられるよう「地域包括ケア病棟」を新設しました。地域包括ケア病棟の役割の1つは、「在宅や介護施設で療養している患者さんの急性増悪を受け入れる」ことです。

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