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患者さんの栄養管理は、管理栄養士の知識なしには難しい――飯田達能先生の思い

みなみ野病院 院長 飯田達能先生

東京都八王子市みなみ野に位置する医療法人社団永生会 みなみ野病院は、入院患者さんに医療、看護、介護、リハビリテーションを提供する病院です。院長の飯田達能先生は、長期的に入院する患者さんが多いからこそ、患者さんの栄養や食事を大切にしようと説き、管理栄養士からの意見や提案を積極的に受け入れて業務に反映させる環境づくりに尽力されています。

今回は、飯田達能先生から、現場で働く管理栄養士をはじめとした、職員の皆さんへのエールを伺いました。


患者さんの栄養状態の改善は、医師の知識だけでは難しい

当院に赴任する前は、医療法人社団永生会 永生病院の院長を務めていました。入職した1991年頃は、永生病院の医師と管理栄養士の間にあまり接点がなかったことを覚えています。私は、入院患者さん一人ひとりに合わせて、栄養に関する細かいオーダーを出すには、この環境では少し限界があると感じていました。

しかし、2000年代に入った頃から、管理栄養士が自ら病棟を訪れて、「この患者さんは、体重と身長、さらに、病気の状態から考えると、これくらいのカロリーと水分量が必要ですよ」と、積極的に医師に提案してくれるようになったのです。そういった積極性が出てきた背景としては、管理栄養士の学校教育において“チーム医療”や“病態別栄養管理”などのカリキュラムが強化されたと聞いています。また、その頃永生病院が委託給食形式に切り替わり、病棟栄養管理業務にさらに専念できる体制が整えられ、管理栄養士の熱意を行動につなげられるようになったという変化もあったと考えています。

このように、管理栄養士が積極的に医師に提案する文化ができたことで、患者さんの栄養状態について医師と管理栄養士の間で分業ができるようになり、医師の負担がかなり減りました。今、社会全体で盛んに検討されている“働き方改革”に対し、永生病院の管理栄養士の皆さんは、10年以上も前に取り組んでくれていたのだなと思います。


病院の枠組みを超えて活躍する管理栄養士の活動

食に関する危機管理連携会への参加

八王子市には、事故や災害への対応策として、市内の病院が連携して組織する“食に関する危機管理連携会”があります。この連携会は、栄養科業務が停止するような事態が生じた場合でも、近隣の施設が協力して、患者さんに安全で適切な食事を提供するという目的で設立されました。市内の病院に勤める栄養科のスタッフが定期的に集まり、衛生研修会や見学会、年間2~3回のサポート訓練などを実施しています。

永生病院の管理栄養士もこの連携会に参加し、そこで得た情報を病院に持ち帰り、共有してくれました。診療部の医師たちは、「うちの管理栄養士は、病院の外でも活躍しているんだね」と驚き、刺激を受け、さらに、管理栄養士から聞いた情報から患者さんの栄養管理に興味を持つようになったようです。

 

誤嚥性肺炎を患う患者さんを減らしたい――八王子嚥下調整食研究会の活動

八王子市では、患者さんに適した食形態の表現が、病院や施設ごとにばらばらだという課題がありました。たとえば、施設で暮らす患者さんが誤嚥性肺炎を起こして入院されたときには、病院では患者さんへの治療の提供とともに患者さんに適した食事の提供を行い、患者さんの容体が回復したら元の施設に戻っていただきます。このときに、食形態に関する情報を病院と施設との間で共有できていなければ、また誤嚥性肺炎を起こして入院してしまうことがあるのです。

この課題に危機感を持った永生病院の医師と管理栄養士が、市内の施設や病院との連携を図るため、2015年に“八王子嚥下調整食研究会”を立ち上げました。八王子市内の医師、言語聴覚士(ST)、管理栄養士が集まり、“嚥下調整食一覧表”の作成に取り掛かりました。この表は、八王子市内のほかの病院や施設に転院しても前と同じ食事形態が提供できることを目指して作られたものです。嚥下調整食一覧表は2016年に完成し、各施設での運用が始まりました。このような病院や施設の枠組みを超えて、”ずっと安心して食べ続けることができるまち”を目指した取り組みは、管理栄養士たちの努力により今後もますます広がっていくと思います。

 

認定栄養ケア・ステーションの開設

これまで、病院や施設に行かなければ管理栄養士と会ったり相談したりすることが難しいことは、地域における栄養ケアの課題だと考えられてきました。そこで、地域で栄養ケアを提供する拠点となる栄養ケア・ステーションが立ち上げられ、東京都内では48か所に認定栄養ケア・ステーションが設置されています(2019年9月1日時点)*。永生病院も、2019年4月に病院併設型の認定栄養ケア・ステーションを開設しました。

認定栄養ケア・ステーションで行われている事業の1つが訪問栄養指導です。在宅で療養されている方のご自宅に訪問し、療養に必要な栄養指導を行います。そのほか、地域における食育や健康づくり、病気の予防、治療から介護まで、“切れ目のない食生活の支援”を提供する体制が整っています。認定栄養ケア・ステーションでは、管理栄養士がご相談に応じますので、お気軽にお問い合わせください。

【永生病院認定栄養ケア・ステーション】

TEL:042-661-4141

*公益社団法人日本栄養士会が2018年度から栄養ケア・ステーション認定制度を開始


病院食は“おいしい”を最優先にしたい

 

病院食はおいしくない、というイメージをお持ちの方もいらっしゃると思います。しかし、私は、病院食は栄養が確保されていて、なおかつ、おいしくなくてはいけないと思っています。

私が院長を務める、みなみ野病院の栄養科では、2018年4月の開設当初、“安心と栄養”というキーワードを目標に掲げていました。しかし、私から、「まず“おいしい”を掲げてほしい」とお願いしました。今では、“目で見て楽しく、おいしい食事”で始まる目標になっています。数日の入院ではなく、月単位で長期入院することが多い慢性期の患者さんには、特に食事のおいしさを楽しんでいただきたいと思っています。“楽しい”“おいしい”食事は、患者さんにとって素敵な思い出になるはずです。自宅で過ごしているときよりも楽しみが少ない入院生活だからこそ、大事にしたいものです。

当院の管理栄養士の皆さんには、安心と栄養をきちんと確保した食事であることと同時に、退院された患者さんに「あの食事、おいしかったなあ」と思っていただける料理を提供して欲しいと思います。


医師も管理栄養士もそれぞれの専門性を発揮し、お互いに協力することの重要性

私たち医師は一般的な栄養の知識には詳しく、生活習慣病の患者さんに対する一般的な栄養指導を行うことはできますが、患者さん一人ひとりに合った栄養管理をすることはなかなかできません。だからこそ、自分の目の前にいらっしゃる大切な患者さんについては管理栄養士に任せたい、その方が患者さんにとってよりよい治療につながるはずだと私は考えます。そのような考えをするようになったのは、患者さんの栄養管理について安心して任せられる環境を、永生会の管理栄養士たちが築いてくれたからだと思います。

患者さんやご家族にとっても、管理栄養士から直接話を聞くことは価値があるだろうと思っています。当院では、患者さんやご家族を含めたカンファレンス(症例検討会)を行っています。そこで管理栄養士が病院の食事の内容や、食事のときに気を付けていることなどを詳細に話し、医師や看護師などそのほかのスタッフもその情報を共有していることが、ご家族の安心につながっているようです。

今では、管理栄養士だけではなく、リハビリテーションスタッフ、看護師、介護士など、それぞれの立場から患者さんに必要なことを話し、医師もしっかりと聞いています。「一人ひとりの患者のために、病院の皆さんが一生懸命考えて、協力して対応している」ということが、患者さんやご家族にきっと伝わるだろうと思っています。

それぞれの職種が自分の力を十分に出し合い、ほかの職員がそれを尊重して協力しているからこそ、このような環境が実現できたのだろうと思っています。これからもこのチームワークを生かして、一人ひとりの患者さんに真摯に向き合ってまいります。

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