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平成医療福祉グループの成長を支えた3つの戦略――そのポイントとは?

平成医療福祉グループ 代表 武久敬洋先生

1984年、徳島県に開院した博愛記念病院を皮切りに、現在は全国に26の病院(合計4,000床ほど)と複数の介護施設、看護・介護の専門学校を展開する平成医療福祉グループ。これまでわずか37年の間に拡大と成長を続けてきました。創業者である武久洋三先生はグループの「拡大」を先導し、ご子息の武久敬洋先生は「質の向上」に努めてきたといいます。グループ代表を務める武久 敬洋(たけひさ たかひろ)先生に、グループの成長を支えた3つの戦略とその思いについて伺いました。


26病院全体で「質を高める」ために

一言でいうと父はグループの「拡大」を支えた経営者であると思います。そこで2010年から入職した私は「質を高める」ことに専念しようと考えました。

当グループには病院だけで26(合計4,000床ほど)あり、東は千葉から西は山口までさまざまな地域で慢性期医療*を提供しています(2021年11月時点)。このような大規模な組織において全体が足並みをそろえながら質を向上し続けるのは簡単なことではありません。そのようななかで我々が力を入れているのが「IT化」「人事・広報」「教育・研究」です。

*本記事における「慢性期医療」は「回復期医療」を含みます。


IT化による連携体制の整備と活用

1つ目の「IT化」は、2010年にグループに入職してまず課題に感じた点です。当時は病院間の連携に電話とファックスしか使っておらず、PCでメールを送受信する機能さえもそろっていませんでした。その時点でかなり遅れていたので、IT化を早急に進めました。

現在ではGoogle Workspaceによるメールやウェブ会議での情報共有、タスク管理、講習などを行っています。グループ全体の役職者が即時に連携できる基盤を整えたおかげで、コロナ禍という有事においても主要メンバーが迅速に集まり情報を交換し、必要に応じて現場に駆けつけるという対応が実現できました。今回の感染対策で、平時からの連携体制の重要性をあらためて感じましたね。


広報活動で円滑な人事・採用をサポート

2つ目の「人事・広報」も、2010年から力を入れている部分です。提供する医療・サービスの質を向上させ、安定的に稼働させるには結局「人」が何よりも重要です。そのためグループのホームページには取り組みの詳細や背景、どんな人がどんな思いを持って働いているのかなどを積極的に掲載し、グループの雰囲気を知ってもらえるよう心がけてきました。また、インスタグラムFacebookなどのSNSでも定期的に情報の発信を行っています。

求人に応募してくださる方々はホームページやSNSなどに目を通してから面接に来てくれることが多いですね。特に「絶対に見捨てない。」というグループの理念に共感してくださる方が多く、そのような時は広報活動の効果を実感します。

 

ホームページ掲載「ひとプロジェクト」の一部


慢性期医療の教育と研究――エビデンス構築に向けて

3つ目の「教育・研究」については医療界・日本全体での課題感があり、近年グループ内で積極的に進めようとしている部分です。課題感というのは、日本の病床の4割ほどが慢性期病床(回復期含む)であり、特に回復期は今後さらに需要が増えると見込まれるなかで、医学教育や看護教育では急性期医療のことばかり教えているという点です。この傾向は研究についても同様で、慢性期医療に関する研究はかなり不足していますし、研究自体が少ないのでエビデンスが不足するという状況が生まれています。日本全体の教育を変えることは難しくとも、せめてグループ全体で慢性期医療の教育・研究に取り組み、ひいてはエビデンスの構築に寄与したいと考えているのです。

教育に関しては、グループ職員のうち役職者への講義を高い頻度で行っています。本当は一人ひとりに講義ができればよいのですが、職員数が多いため役職者から各現場に浸透させるようにしています。また研究に関しては「平成医療福祉グループ総合研究所」を設立しました。グループ全体で26病院4,000床ぶんの診療データがありますから、それを活用しない手はありません。特別養護老人ホームなどの介護施設も含めるとそのデータは膨大です。このグループ規模を生かして良質なデータを集め、研究とエビデンス構築に貢献する方法を模索しています。


質の高さを極め、世界に慢性期医療の輸出を

平成医療福祉グループの病院部門は今年、「慢性期医療の分野で他の追随を許さないレベルにまで質を高める」という新たなビジョンを設定しました。良質な慢性期医療の提供を徹底し、さらに教育・研究を積極的に進めることで日本一といえるレベルに到達し、ひいては日本全体の医療の質向上に貢献したいと考えています。

また、将来的な国内の人口動態の変化や東南アジアにおける高齢化の進行を見据えて、慢性期医療の輸出にも注力しているところです。実は2019年にインドネシアの南ジャカルタにリハビリテーションを提供する通院型クリニックを開院したのですが、新型コロナウイルス感染症の影響でいったん運営を停止している状況です。そのクリニックを再開することはもちろんのこと、慢性期医療をこれから必要とする国・エリアに日本の慢性期医療の拠点を作りたいと考えています。

 

南ジャカルタの街並み 写真:PIXTA

 

国内では人口減少とともにマーケットが縮小していくことは確実であり、当グループとしても今後伸びていくと予想される世界のマーケットに可能性を見出すことが重要と捉えています。それは職員のモチベーション維持・向上にもつながるでしょう。実際、海外事業は面白いのです。日本の常識がまるで通じないことは多々ありますし、現地のカルチャーに驚きの連続です。それは日本だけで事業をしていたら得られない刺激的な体験になります。これから高齢化が進み慢性期医療が必要となる他国で、当グループの職員が活躍してくれることを期待しています。

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