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地域密着型の病院として市民の生活に寄り添う康明会病院

康明会病院 院長 平井健先生

東京都日野市に位置する康明会病院は、“地域を支え、地域に支えられる医療”を理念とし、外来診療、入院、訪問診療など幅広い医療を提供する病院です。急性期経過後の患者さんや、ご自宅や施設で症状の悪化した患者さんなどを受け入れ、地域に貢献してこられました。

同院の地域包括ケアについて、2016年より同院院長を務める平井 健(ひらい たけし)院長に伺いました。


康明会病院の特徴と診療体制

地域包括ケア病床の提供

当院は元々、長期の療養が必要な慢性期の患者さんを対象とした、全床が医療療養病床の病院でした。2017年に、病床の半分を地域包括ケア病床に転換し、さらに地域のニーズに応える医療の提供に努めています。

地域包括ケア病床とは、(1)急性期からの受け入れ、(2)在宅・生活復帰支援、(3)緊急時の受け入れの3つの役割が期待されていますが、つまりは患者さんの退院後の生活を含めて支援する役割を担う病床です。入院期間が60日という点が特徴で、このことは治療から退院までに時間を要する高齢者などの医療に適していると考えています。それは入院してから認知症が進む、足腰が弱るなどの現象が起きやすい高齢患者さんそしてご家族に対して、退院後の環境に合わせたリハビリテーションなどの中で、患者さん一人ひとりにじっくりと向き合うことができるためです。

また治療のみならず、介護者や地域スタッフとの調整、将来の医療行為・療養場所などの意思決定支援も当病床の役割だと考えています。

 

医療療養病床の提供

長期間の入院が必要な患者さんに対して、医療療養病床を提供することも、当地域での役割の1つです。がんの末期など医療依存や介護負担などの理由で、介護老人保健施設(老健)などの入所が難しい患者さん、また最近では回復期病棟・包括ケア病棟での治療後も退院が困難とされた患者さんへの中長期的な退院支援などさまざまなニーズに対応しております。

 

神経難病の診療

私が当院に赴任したのは2016年です。それまでは、医療・看護・介護が必要となる筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)、パーキンソン病・関連疾患、筋ジストロフィー症などの神経難病患者さんの診療にフォーカスをおいた環境で、一脳神経内科医として多くの患者さんと関わっておりました。そのなかで、難病を特殊と考えているのは診る我々のほうであり、適当な支援を受ければ自分らしく自宅で生活することが可能だということを経験し、それを発信することも専門医の役割と考えるようになりました。これは住み慣れた地域で自分らしい生活を目指す包括ケアシステムの思想と一致しており、それを実践する場と考え現在の職場へ異動し、ほかの患者さんと同様に神経難病患者さんの診療を行っております。


康明会病院における地域包括ケアの実践

患者さんをできるだけ家に帰すこと

病院は“終の棲家(すみか)”として最適の場所ではないと私は思っています。中には長期での療養が必要な患者さんもいらっしゃいますが、原則として患者さんの“住みたい場所”を探すことが私たちの務めです。医療療養病床の役割も、60日を超えて医療が必要な患者さんへの地域包括ケア病床と考えています。

我々はますます進む少子高齢化の時代に、家族の介護によらない在宅療養のシステムを構築していかなくてはなりません。前述した筋萎縮性側索硬化症患者さんなどでは、人工呼吸器装着により24時間常時介護が必要でも本人の意思と周囲の支援の中で、在宅療養を継続している例が決して少なくありません。このような経験で得られた方法を活用し、地域のステークホルダー(関係者)と協働し、高齢単身者でもできるだけ退院して家に戻れる方法を探ることが求められています。

 

患者さん一人ひとりに合った治療とケア

地域包括ケア病床では、高齢患者さんがその中心となるため、フレイルや嚥下(えんげ)障害、認知機能障害などさまざまな合併症状への対応が必要になります。当院は病床機能を転換してまだ日が浅いものの、地域の医療機関と連携をいただきながら、依頼された患者さんはほぼ断ることなく、職員全員で奮闘し、よりよい医療を提供する努力をしております。

たとえば嚥下障害に関しては、言語聴覚士、作業療法士、栄養士、看護師と協働し、専門病院でなくとも質の高い医療を提供できるよう常に心がけています。当院では生活の質(QOL)の向上を重視して “食べたいものを食べる”を目指したケアを中心に行います。一方、胃ろうに関しても決して、単なる延命治療と捉えられるようなネガティブな手段としてではなく、よりよく生きるための手段と位置付け、嚥下障害が確認されたときより話し合いをはじめ、最終的に患者さん・ご家族が納得して意思決定を行えるよう、患者さん一人ひとりに合わせた対応を行っています。

認知症患者さんの受け入れは、地域包括ケアシステムを構築するうえで重要な役割の1つです。認知症患者さんに関わるということは、暴言・暴力などいわゆる周辺症状への対応も必要で負担も大きい業務です。しかし我々は“認知症とは私たちが生きる中で誰しも通る1つの現象である”という認識の下、認知症患者さんを地域から排除しないことを理念に受け入れを続けております。まだ専門家の集まりとはいえない我々でありますが、患者さんの訴え(声なき声を含め)を聴き、対応することがすなわち患者さんに寄り添った治療やケアになると信じ、病院をあげて引き続き努力していきたいと思っています。

 

住み慣れた地域で暮らし続けるために

当院は、包括ケア病棟の役割とされている集中医療は終了したが退院は困難なケース(ポストアキュート)や、自宅や施設で持病が悪化したケース(サブアキュート)にも積極的に対応しており、その中にはさまざまな患者さんが含まれます。食事が取れず命に関わる状態になって初めて運ばれてくる患者さん、重度の褥瘡(じょくそう)患者さん、廃用が進んで拘縮に至るような患者さんなどもおられます。そのような患者さんと関わるときにどうしてここまで……と感じるのですが、これらの患者さんでも一度は病院を受診し「検査では異常はない」とされ、そのまま徐々に悪くなる状況を見守っていた方も少なくなく、病気を治療するという現在の医療システムでは避けられないところなのかもしれません。

我々康明会グループでは、医療と連携し地域の総合相談窓口となる地域包括支援センターを運営しています。一人暮らしの方、高齢のご夫婦などを中心に、さまざまな原因で生活が困難となる前に、医療・看護・介護につなげ、住み慣れた地域で自分らしい生活ができるための支援を提供するべく、我々ならではのスタイルを作っていければと思います。


康明会病院 院長としての思い

 

当院が提供するのは、“人”に対する医療です。その意味では特別なことを行っているわけではありませんが、急性期病院では対応することが難しい時間のかかる医療を提供できるのは当院の強みだと考えています。また、地域の患者さんのために外来診療や在宅医療も実施しており、外来から入院、在宅、お看取りまで、患者さんの生活に寄り添った診療に努めてきました。元気なころから知っている患者さんの最期に関わることは、医療者としての責任の重さを感じさせられますが、地域のスタッフと知恵を絞り患者さんの生活を支えることには大きなやりがいもあります。

今後高齢化が進み患者さんが増えていけば、現在の方法では対応できず、さらなる拡充が求められるでしょう。時代のニーズに合わせて変化しながらも、“病院は終の棲家ではない”という思いを忘れず、地域包括ケア病床の充実を図ることに力を注いでまいります。

 

康明会病院 職員の皆さん

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