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医療・介護従事者に必要な“臨床倫理の視点”とは?

東京慈恵会医科大学附属柏病院 総合診療部 診療部長/教授 三浦靖彦先生

“臨床倫理”とは、医療・介護の臨床現場で起きる問題を倫理的視点から検討するアプローチを指します。医療・介護に関わる者はどのような視点を持ち、日々患者さんやご家族と向き合うことが望まれるのでしょうか。長年臨床倫理の問題に取り組み、啓発・研修活動などを精力的に行う三浦 靖彦(みうら やすひこ)先生(東京慈恵会医科大学附属柏病院 総合診療部 診療部長、教授)にお話を伺いました。


医療・介護従事者が持つべき臨床倫理の視点とは?

前の記事でお話しした“医療倫理の4原則”、すなわち自律尊重・無危害・善行・公正を理解していただくとよいと思います。

自律尊重とは、患者さん自身の決定や意思を大切にして、患者さんの行動を制限したり、干渉したりしないことです。無危害とは、患者さんに危害を及ぼさないことと、今ある危害や危険を取り除き、予防することです。善行とは、患者さんのために善をなすこと、最善を尽くすことを意味します。医療従事者側が考える善行ではなく、患者さんにとって善いと思われることを行う原則です。公正とは、患者さんを平等かつ公平に扱うことです。限られた医療資源(医療施設・医療機器・医薬品・医療従事者など)をいかに適正に配分するかも含まれます。

この中でも特に現代は、自律尊重の原則が大切でしょう。この4原則を理解したうえで、“ジョンセンの臨床倫理4分割表”を常に頭に思い浮かべながら、患者さんとご家族にとっての幸福の最大値とは何かを考えることで、きっと倫理の視点を大切にした医療・ケア・医療コミュニケーションが叶うはずです。


「自分の親でも同じ答えになるか」が臨床倫理の1つの指標

臨床倫理コンサルテーションや相談ができない場合の簡易的な評価方法として、“目の前の患者さんが自分の親だったとして、それでも同じ答えになるか”を考える方法があります。その答えがイエスなら、およそ80点の答えは出ているでしょう。しかし答えがノーであれば、一度立ち止まって考える必要があります。“自分の親にはしたくないこと”をしているとしたら、それは再考の余地があるのです。

 

写真:PIXTA


意思決定能力を評価する際の注意点

人生の最終段階における医療・ケアを行う際には、医療従事者から本人やご家族へ適切な情報提供がなされたうえで、介護従事者を含む多職種で十分に話し合い、本人の意思決定を基本として進めなければなりません。

本人の意思決定能力を評価する際の注意点として、以下の4つのポイントがあります。

 

✔︎ 認知機能の低下や精神疾患の既往だけで意思決定能力の欠如を判定してはならない

✔︎ 年齢、病名、外見、行動、社会背景から判定されるものではない

✔︎ 評価の前に意思決定能力を高める(エンパワーメント)

✔︎ 求められる意思決定能力のレベルは、状況や内容よって異なる

 

つまり単に認知症であるというだけで「意思決定能力がない」と判断してはならず、評価の際には認知機能(意思決定能力)を高めるエンパワーメント(能力開花)に努めなければならないということです。そして、求められる意思決定能力については、たとえば手術の選択としてAとBどちらを受けるのかという高度な意思決定は難しい場合でも、口から食事をするかは決められる可能性があるため、それを踏まえて意思決定支援をしなければならないということです。

 

2016年から厚生労働省委託事業として市民が人生の最終段階における医療・ケアについて気軽に相談できるよう、患者さんの意向を尊重した意思決定のための相談員研修会(通称E-Field:Education For Implementing End-of-Life Discussion)」を全国47都道府県で実施しました。こちらでは、その研修会資料が公開されています。

※ACPの前段階で必要なALP(アドバンス・ライフ・プランニング)については次の記事をご覧ください。

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