介護・福祉 2021.06.24
元気村グループの沿革――「地域に恩返ししたい」という思いを原点に
社会福祉法人 元気村グループ 理事長 神成裕介先生
1993年に埼玉県鴻巣市に1つ目の施設を開設し、今では全国で多数の介護事業を展開する元気村グループ。人材採用・育成に力を入れ、家族主義・現場主義という理念を体現しながら“感動介護”を提供し続ける同グループの始まりとターニングポイントとは――。理事長の神成 裕介(かんなり ゆうすけ)先生にお話を伺います。
グループの沿革におけるターニングポイント
「地域に恩返ししたい」という創業者の思い
元気村グループは1993年、埼玉県鴻巣市に翔裕園という介護施設をオープンしました。これは介護保険制度が施行される7年前です。私の父でありグループ創業者の神成 裕(かんなり ゆたか)が別会社で株式上場をした際に「お世話になった地域の方々に恩返ししたい」という思いを抱き、それが創業のきっかけになりました。父は「キャピタルゲイン*は個人のものではなく社会に還元するもの」という考えを持っていました。
また、人口動態の流れはよほど効果的な政策が打ち出されない限り変わらないという前提において、当時から「将来は人口ピラミッドが釣鐘型になる」「2015年頃には団塊の世代が65歳以上になる」といった大まかな将来推計は可能でした。そのような将来の動向を見据え、介護の需要が増加する時代において高齢の方が困らないようにする、地域に貢献できる事業を始めたいと考えた一面もあるようです。
*キャピタルゲイン:株式や債券など、保有している資産を売却することによって得られる売買差益。
元気村グループ 東京都 竹の塚翔裕園の外観
全国での施設展開と海外への“介護輸出”
社会福祉法人元気村グループは1993年に62床の1施設からスタートし、現在ではグループ介護法人(サンガジャパン等)をあわせると、全国各地で97の施設を展開、居宅介護支援事業所を16拠点で行っています(2021年6月時点)。
また、2011年には株式会社サンガホールディングス(現;株式会社サンガジャパン)を立ち上げ、日本で培った介護事業の経験・ノウハウをアジアへ輸出するための活動を精力的に行っています。元々中国とは創業者の事業の関係で医師などの人的交流がありました。そして、近年東アジアでも日本と同様に高齢化が進んでいる背景があり、介護人材の育成や拠点づくりの必要性を感じたことから、別法人での事業をスタートしたのです。このように私たちは元気村グループとサンガグループという2つの事業体が核となり、活動を続けています。
※介護のアジア輸出については、こちらの記事をご覧ください。
“百年企業”を目指す神成 裕介先生の思い
創業時には数十人の単位だった元気村グループも、今や数千人規模の組織となりました。小さな規模なら1人の強烈なリーダーシップで人々を牽引することが可能ですが、規模が大きくなるとそれもなかなか困難です。組織が大きくなった今、私は創業当時から変わらない理念をしっかりと受け継ぐこと、よりよい介護を提供し、その結果として“百年企業”になることを目指しています。
介護という仕事は、関わった方に直接「ありがとう」と言っていただける素晴らしい仕事です。介護の世界で働くスタッフは皆頑張っていますし、素敵な方が多いです。皆さんに楽しくやりがいを持って働いていただけるよう全力を尽くしたいと思っています。
写真:PIXTA
医療の視点を介護の現場に生かす
保険制度と報酬システム上で医療と介護は別のものですが、一人ひとりの人生を考えたときに医療と介護は延長線上にあるもので、その間が分断されていてはなりません。そのことは、国が住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を推進していることからも明らかです。
地域において患者さんの治療・ケアを切れ目なく行うことはもちろん、介護施設で医療のノウハウを活用することも重要です。たとえば、ある施設において入所時に骨粗しょう症の検査と転倒のリスクアセスメントを行った結果、転倒やそれに伴う入院の件数が半減したという例もあります。そのような医学的視点からの介入も、よりよい介護の提供には必要だと実感しました。さらに今後は、IoT化やAI(人工知能)の活用によって医療と介護をつなげる仕組みをつくりたいと考えています。
介護施設を選ぶ際のポイントは?
もっとも大事なことは、ご自身の目で見て判断することだと思います。たとえば施設に入ったときの雰囲気がよいか、スタッフがどのように対応してくれるかを確認してみてください。多くの施設を見てきた身から思うのは、その場で利用者さんとスタッフの間に幸せそうな笑顔や空気感があることは、大切なポイントです。
人と人の相性はもちろんありますし、実際に入所してみないと分からないことも多くあります。ただ、家選びと一緒で、実際に施設を見たうえでご自身が感じることを信じて選ぶことが重要だと思います。
※お話の続きは、次の記事をご覧ください。