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体内病院の実現に向けた研究を進めるナノ医療イノベーションセンター――施設内を紹介

ナノ医療イノベーションセンター コミュニケーションマネージャー 島﨑 眞さん/企画・コミュニケーション担当 山本 美里さん

次世代の医療に用いる科学技術を生み出しているナノ医療イノベーションセンターは、さまざまな設備が整っています。4階建ての建物はフロアごとに実験エリアが分かれていて、基礎実験から臨床実験まで実施可能です。ナノ医療イノベーションセンター コミュニケーションマネージャーの島﨑 眞(しまざき まこと)さんと企画・コミュニケーション担当の山本 美里(やまもと みさと)さんに、施設内を案内していただきました。


施設内各フロアの概要――工作室や各段階実験室、ラボなどを完備

ナノ医療イノベーションセンター

 

当センターは4階建てで、フロアが上がるごとに基礎研究から実臨床に近い研究へと変わっていく構造です。

1階は2階~4階とは毛色が異なり、ナノレベルでの材料加工が可能な工作室があって、診断機器や半導体を作ったり加工したりしています。さらに、半導体を使った医療機器の製造に必要不可欠なクリーンルームも完備しており、1㎥の空間にほこりの数が1,000個未満という条件をクリアした室内で機器や半導体の製造を行っています。

2階から4階は創薬に関わる設備が整っていて、2階で開発した薬の細胞実験を3階で、動物実験を4階で行うといった流れになっています。

2階にはナノ医薬品の創薬を行う合成系の実験エリアだけでなく、センターの専属研究員やアカデミアからの研究員、企業関係者の居室もあります。

3階は細胞実験を行う研究室があり、メッセンジャーRNAの作成も可能です。研究室に加えて、スタートアップを支援する“BioLabs”というシェアラボも用意されています。4階にはマウスやラットなどの動物実験エリアがあり、専属の獣医師が全ての動物を管理しています。


各フロアの設備と研究内容

センター内には、それぞれ特徴のあるさまざまな部屋が設けられています。実験をするための部屋だけでなく、研究者が交流できるようなスペースも設けることで、何気ない会話から新しいアイデアが生まれることもあります。

 

動物実験エリア――一定環境下でマウスやラットを管理

ナノ医療イノベーションセンター_ 企画・コミュニケーション担当 山本美里さん

 

動物実験エリアの飼育室では企業やセンターの研究員が使うマウスやラットの管理が行われていて、2022年11月現在、マウスを1万3,000匹以上、ラットを2,500匹以上飼育可能です。掃除や給餌は専属の業者に依頼していて、一定の環境下で動物を管理しています。飼育を各自で行うと、各自で少しずつ動物の扱い方が異なるため、飼育環境や動物にかかってくるストレスの度合いにどうしても差が生じてしまいます。ストレス値が違うとそれがデータにも影響してしまうので、一律の条件を整えるという意味でも専属の業者が飼育を行うのは非常に重要なのです。

 

生物系実験エリア――共焦点レーザー顕微鏡による細胞観察

生物系実験エリアには、細胞1つを生きたまま観察できる共焦点レーザー顕微鏡があります。

電子顕微鏡での観察だと、細胞がすぐに死んでしまうため動画撮影ができません。また、細胞は通常何層にも重なっているためはっきりと見えないのです。一方、この顕微鏡を使うと細胞が一層に並ぶように映るので、がん細胞に抗がん剤を搭載したナノマシンが取り込まれてがん細胞が死滅していく様子をリアルタイムで確認し、鮮明な動画を撮影することが可能です。

共焦点レーザー顕微鏡

 

抗がん剤を搭載したナノマシンは、がん細胞の中に到達したときだけ抗がん剤を放出するよう工夫が施されています。ナノマシンと抗がん剤が“ひも”のような物質でつながっていて、ナノマシンががん細胞の中に入ったときだけ、この“ひも”が切れる仕組みになっているのです。がん細胞は酸素が少ない環境下で生き延びるため、正常な細胞よりも乳酸が多くでき、細胞内が酸性になります。これに対して正常な細胞内はアルカリ性~中性です。“ひも”は酸性の環境で切れるようになっているので、正常な細胞の中では抗がん剤が放出されません。

 

ナノ医療イノベーションセンター コミュニケーションマネージャー 島﨑 眞さん

 

実は、ナノマシンの大きさにも秘密があります。血管には酸素や栄養素などを通すための穴が空いていて、正常な細胞とがん細胞では穴の大きさが違うのです。正常な細胞はゆっくりと形成されるため、血管構造が密になっており、分子が1つ通る穴が空いている程度です。これに対してがん細胞は短期間にどんどん成長していくので、突貫工事で血管を作ります。そのため、正常な細胞の血管よりも作りが雑で、血管の穴が大きくなっています。この違いに着目して、ナノマシンはがん細胞に通っている血管の穴だけを通れるような大きさにしました。つまり、がん細胞だけに抗がん剤を届けるために、二重の工夫がされているのです。

 

生まれたばかりの企業研究者が研究を行うためのシェアラボ

シェアラボの室内

 

センター内には、企業に場所を貸し出しているシェアラボエリアもあります。実験をするために企業内で一通りの機器をそろえようとすると、莫大な費用がかかってしまい、起業したての企業は大変です。そこで、このエリアの一角を月額で貸し出して、当センターにある機器や設備を共有で使えるようにしています。企業にとっては、先行投資を抑えて実験に取り組めるのが大きなメリットです。

 

材料評価エリア――共通機器室での物性解析

物性解析系機器で研究を行っている様子

 

材料評価エリアは、当センターが作っているナノ医薬品の物理的・化学的性質を評価するための実験室です。病院の検査でも使われているMRIの仕組みを使って、物質の性質を調べています。たとえば、合成したナノ医薬品が狙い通りの構造になっているかどうかを評価することが可能です。

 

合成系実験エリア――合成実験室でのmRNAワクチン研究

合成実験室室内の様子

 

合成実験室では、さまざまな化学反応を実施しています。この部屋では、メッセンジャーRNAを使ったワクチンを室温で保管できるようにするための研究が行われているのです。現在のところは、種類によっては-75℃を保てる特別な冷凍庫がある環境でないとメッセンジャーRNAワクチンは保管できません。そのため、流通が大変だったり、ワクチンを接種できる場所が限られていたりします。室温でも安定的にメッセンジャーRNAワクチンを保存できるように、メッセンジャーRNAを凍結乾燥してパウダー状にして、常温で保管する方法の研究を進めています。

 

クリーンルームエリア――機械工作室での半導体製造

機械工作室内の様子

 

機械工作室は、ナノ精度で半導体を製造するためのエリアです。非常に細い注射針を作って、血管まで到達しなくても血液検査と同等な検査ができるような1本直径1mm未満のマイクロ針などを開発しています。糖尿病治療への応用も期待されており、皮膚の表面にこの機器を貼ることで自動的に血糖値を測定し、血糖値に合わせたインスリンが自動で投与されるようになれば、患者さん・医療従事者双方の負担を軽減させることができるでしょう。

 

マグネットエリア

マグネットエリア

 

マグネットエリアは、異なる分野の研究者同士が自由に交流できるスペースです。感染症が拡大してから中止になってしまいましたが、以前はワンコインパーティーのような気軽な交流会も実施していました。マグネットエリアは各フロアに設置されていて、フロアごとにコンセプトが異なります。


施設周辺の様子

当センターが位置するキングスカイフロントエリアには、民間企業や公的研究機関など、計70ほどの機関が立地しています(2021年1月時点)。私たちはセンター内だけでなく国立医薬品食品衛生研究所や企業のトレーニング施設、実験動物中央研究所など、キングスカイフロント内の周辺施設とも提携して研究を行っていて、たとえば、センター内で実施できない動物実験を実験動物中央研究所に依頼したり、国立医薬品食品衛生研究所にレギュレーションの相談をしたりしています。

マグネットエリアから多摩川を一望できる

 

多摩川スカイブリッジを渡ると羽田空港にもつながっていて、海外の医師が研修のためにキングスカイフロントを訪れることもあります。


島﨑さん、山本さんからのメッセージ

 

センター1階に展示されているナノマシンの模型

 

当センターは2045年の体内病院完成に向けて、これからも研究を進めていきます。ただ、誰もが病気を気にすることなく暮らせる社会を実現させるために必要なことは、医療技術の進歩だけではありません。健康や在宅でのケアに対する一人ひとりの知識レベルが上がってこそ実現できるものだと考えています。今後は川崎市看護協会とも連携しながら、市民の皆さんに向けた活動も実施していく予定です。

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