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中国から来日し看護師として働く沈樹敏さんのあゆみと思い【後編】

富家病院 看護副主任 沈樹敏様

少子高齢化と人口減少が進む日本で、年々増加する外国人労働者*。その数は約166万人(2019年)にのぼり、さまざまな分野で人材不足を解消する手立ての1つとして重宝されています。国籍としては中国がもっとも多く、約42万人(全体の25.2%)といわれています。そのようななか、埼玉県ふじみ野市にある富家病院では50名以上の外国人スタッフが医療・介護の現場で活躍中です(2021年3月時点)。2016年に中国四川省から来日して同院に看護師として入職、2019年に看護副主任となった沈 樹敏(しん じゅびん)さんに、来日されてからの出来事と思いを伺いました。【後編】

*2006年以降、雇用対策法に基づき、全ての事業者に対して外国人の雇用と離職に際してその方の情報や在留資格等を確認し、厚生労働大臣(ハローワーク)へ届け出ることが義務付けられています。

*お話の前半はこちらの記事をご覧ください。


日本で働くうえで苦労したこと

外国人が日本で働くうえで一番苦労するのは、やはり“言葉”だと思います。私の場合は話すよりも聞き取るほうが得意です。会話のなかで相手の言っている意味が分かったとしても、その返答でうまく表現できず、もどかしい思いをしましたし、相手にも申し訳なく感じることがあります。また、医療の現場にいますので、専門用語が分からないときや薬剤のカタカナが覚えられないときもありますね。医師への報告でも、伝えたいことを全部伝えられないことがあり、そのときには非常に落ち込みました。しかし、周囲の人たちはとても優しく、単語だけでも理解してくれることがあります。そのように優しくサポートしてもらえたときは非常に嬉しく、ありがたいですね。

富家病院には外国人スタッフが50人ほどいます(2021年3月時点)。中国はもちろん、ベトナム、フィリピンなどさまざまな国籍のスタッフが働いているので、言葉の面で困ったときには同じ国の先輩に相談してサポートしてもらうこともあります。困ったときに相談できるのは心強いですね。

 

 

自分の経験から、会話の能力を上達させるには日本でアルバイトするのがよいと思います。私はラーメン屋、コンビニエンスストア、スーパーマーケットなどいろいろな場所でアルバイトをして、接客したり同僚と話したりすることが非常に勉強になりました。言葉だけでなく、人と交流するなかで日本にどのような習慣があるのか、何が礼儀とされているのかという“文化”を知るよい機会になったと思います。


日本に来て驚いたこと

来日してから生活するうえで驚いたのが、路上にゴミ箱が少ないことです。中国やほかの国では路上にゴミ箱がたくさん置いてあるのですが、日本にはあまりないですよね。しかも、道にゴミが落ちていないのがすごいと思います。友人から聞いた「日本はきれいな国だよ」というのを実感しました。


日本で看護師として働くやりがいや喜び

2016年から富家病院で看護師として働いています。当院の理念は「されたい医療、されたい看護、されたい介護」です。この理念にとても共感しており、今こうして働けることにやりがいを感じます。患者さんの身体抑制もなく、患者さんとご家族の思いを大事にしている病院なので、誇りを持って働けます。同僚や先輩なども皆さん優しくて、自分の日本語が未熟なときにも丁寧に教えてくれます。怒られたことはほとんどありません。根気よく皆さんが教えてくださるので、今の自分があると思います。

 

 

看護師として喜びを感じるのは、入院時につらそうだった患者さんに笑顔が戻ったり、ADL(日常生活動作)が回復して元気になって退院されたりするときですね。「歩いて帰れるのが嬉しい」という言葉をもらうこともあり、そのようなときには感動します。また、患者さんが退院される日やお誕生日などにはメッセージを書いて贈ったり、写真を一緒に撮ったりするのですが、そのときには患者さんの喜びを感じて、自分もとても嬉しくなります。

いつも明るく挨拶するように心がけていて、患者さんたちから「元気だね」「朝からパワーをもらいましたよ」などと言ってもらえるのが嬉しいです。患者さんと長い時間を共有できるのは、慢性期病院で働く看護師としての醍醐味かもしれません。


病院内での勉強会に参加して知識を深める

新型コロナウイルス感染症の影響で、今は大人数で集まることができなくなってしまいましたが、以前は病院内で勉強会が行われていました。多いときには毎日、昼食時に集まって勉強していました。テーマは事前にアンケートで募集します。治療法や薬剤に関することなど、リクエストに応える形で院内のさまざまな職種の人が講師になり、互いに教え合うのです。講師となるのは院内の医師や看護師、リハビリテーションのスタッフ、介護士、薬剤師など多彩で、自分の分野以外のことも学べるので非常に勉強になります。

 

病棟スタッフの方々と沈樹敏さん(写真中央)


慢性期医療の“特定行為研修”に挑戦

2016年に富家病院に入職し、3年間は回復期病棟で働きました。そろそろ違う環境に身を置いて勉強したいと思い、ほかの病棟に異動できないかを上司に相談したのです。そして、看護師特定行為研修*を受けるチャンスをいただき、それから研修を受けています。目下の目標は、この研修を無事に修了することですね。現在は地域包括ケア病棟で働いており、新しい環境での挑戦が楽しいです。

*看護師特定行為研修:看護師特定行為研修制度とは、本来医師しか行えない医療行為を、医師の手順書に基づき実施できる看護師を養成する国の研修制度。

*日本慢性期医療協会の看護師特定行為研修についてはこちらをご覧ください。


看護副主任への抜擢

地域包括ケア病棟に異動して半年後の2019年6月に、看護副主任を任命されました。その頃までは「外国人として入職して、きちんと皆の役に立てているだろうか」と心配していた部分があり、お話をいただいたときには少しほっとしましたね。少しでも役に立てていたのかなと感じて嬉しかったです。

ただ、嬉しい反面「看護副主任という責任ある役割を全うできるのか」という不安もありました。それでも先輩や周りの人たちがいろいろと相談に乗ってくださり、サポートしてくださったおかげで乗り越えることができました。

業務内容として変わったのは、看護師としての仕事に加えて、主任(師長)が不在のときに病棟の人員配置などの管理業務を任されるようになったことです。病棟全体のことを見る役目があるため、責任を感じながら日々の業務に向き合っています。


これからの目標

一番近い目標は、看護師特定行為研修を無事に終わらせることです。そして看護師としてレベルアップしたいと思います。その先のことは実はまだ明確には決めていなくて、今は目の前のことに一生懸命取り組みたいという気持ちで日々を過ごしています。

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