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「慢性期医療は、人の人生に伴走する医療」−進藤晃先生の思いとこれまでのあゆみ

大久野病院 院長 進藤晃先生

東京都西多摩郡にある大久野病院は、徹底的なリハビリによって患者さんを日常生活に戻すことをポリシーに掲げ、地域医療に貢献しています。院長の進藤晃先生は「慢性期医療は人の人生に伴走する魅力的な医療」と語ります。その思いとこれまでのあゆみについて、お話を伺いました。


進藤晃先生のこれまでのあゆみ

  • 祖父から続く医師の家で育ち、自然と医師を志した

我が家は祖父、父ともに医師で、幼い頃から「いつか医者になる」という自身の道がはっきりと見えていたように思います。祖父は救急病院を、父は慢性期病院を運営していました。病院運営のみならず、地域住民の安全や健康にかかわる仕事もしており、地域の方々から頼りにされていました。そんな彼らの姿を見て「医者というのは、みんなから信頼される仕事なのだ」と、誇らしく感じたものです。

 

ある時期までは、内心「自分は医者に向いてないかもしれない」と考えていました。しかし高校3年生の頃に父が急逝し、一族が路頭に迷わないようにと、心を決めて医師の道を志しました。

医学生の頃は、内科と小児科医どちらかに進もうと思っていました。小児科に興味を抱いたのは、小児科のNICU(新生児集中治療室)での治療を見て、やりがいを見出したからです。しかし、実家の病院を継ぐことを考えたら内科のほうが適切だろうと考え、「決着が早い分野にしよう」という思いから循環器内科を選択しました。


医師4年目。経営を立て直すために大久野病院へ戻る

大学病院に勤めて4年が経った頃、実家から「経営がどうにもならない。帰ってきてくれ」という連絡が届き、1992年に大久野病院に戻りました。当時の病院運営はかなりひどいものでした。医療制度や診療報酬などが大きく変化していたにもかかわらず、時代の流れに対応せずにいたため、寝たきりの高齢者ばかりが入院する典型的な「老人病院」になっていたのです。

 

私は、とにかく経営を安定させて病院を存続することを急務ととらえ、地域で必要とされている役割を担うべく、地域の特別養護老人ホームなどから病状が急変した患者さんを受け入れるよう働きかけました。すると、ベッドの稼働率は一気に上がり、病棟は慌ただしくなっていきました。

 

  • 現状を変えるため、とにかく現場の不満を聴くことに

急に入院患者さんが増えたことで現場は忙しくなり、看護師さんたちからは大きな反発が起こりました。「なぜ今のままではいけないのですか」という不満の声も多く、何か1つ新しいことを始めるのも一苦労でした。しかし、経営視点から見れば、現状を変えない限り病院として生き残れないことは明白だったのです。そこで私は、とにかく職員の不満を聴く時間をつくろうと考えました。名付けて「不満を聴く会議」です。

 

  • いったん全てを受け入れることの大切さを学んだ

そこから時間をかけてじっくりと職員の意見に耳を傾け、徐々にこちらの考えを理解してもらうことができました。この経験を経て、まずは相手の意見を受け入れることの大切さを学びました。何かを変革するときには、既存の文化をすべて壊してゼロから構築するのではなく、いったんは全てを受け入れ、そのうえで余分なものを排除し、さらに足りないものを追加したらよいのだと身をもって知ることができました。

 

紆余曲折を経て、現在は、徹底的なリハビリで患者さんを日常生活に戻すことをポリシーとして、大久野病院の経営にあたっています。


進藤晃先生が考える慢性期医療の可能性とは?

  • 人生に伴走し必要な医療を一緒に考えて行く役割を担っていく

医学や医療技術の進展によってあらゆる病気が治癒するようになり、さらに高齢化が進んだことで、障害や慢性疾患を持ちながら生きる方が増加しています。そのようななかで、ただ病気を治すだけではなく人生に伴走する医療、すなわち慢性期医療の必要性が高まっていることを感じます。

 

私たちは、患者さんがどのように生きたいのか、人生で何を大切にしているのかをきちんと話し合い、理解したうえで治療をしなければなりません。たとえば、舌がんの患者さんがいるとします。がんを切除すれば余命は伸びますが、話せなくなる。このような状況で患者さんは、「余命を伸ばすよりも、話したい」という選択をされるかもしれません。

このようなとき、長期間にわたる治療あるいは緩和ケアを行い、最期に「ありがとう」という思いを口にして亡くなる、という患者さんの人生に伴走することができるのは、慢性期医療の醍醐味だと思います。

 

さらに、このような視点から、これからの慢性期医療は、あらゆる選択肢を患者さんに示して必要な医療を一緒に考えて選択してもらう役割を担っていくのではないかと期待しています。

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