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「活動性を育む、攻めのリハビリテーション医療」の実践・実証

和歌山県立医科大学 田島文博先生

日本において、高齢化の進行と医学の発展によって平均余命は延伸し、障害を持ちながら生活する方が徐々に増加しています。そのような中、疾病や怪我の治療のみならず、患者さんの能力改善に取り組むリハビリテーションの必要性は徐々に高まっています。

和歌山県立医科大学や那智勝浦町立温泉病院で積極的に取り組まれている「攻めのリハビリテーション医療」は、どのように実践されているのでしょうか。


徹底的な高負荷運動療法「攻めのリハビリテーション治療」をするべし

  • 那智勝浦町立温泉病院での実証

2007年より、和歌山県の那智勝浦町立温泉病院でリハビリテーション医療の実証を行っています。

内面的な改革として、患者さん中心主義の徹底を浸透させ、また、ソフト面では、総合内科的治療のできる医師と運動機能診療ができる医師の設置、適切なリハビリテーション医療の活用(具体的には徹底的な高負荷運動療法)を実施しました。


  • 徹底的な高負荷運動−その具体例

徹底的な高負荷運動とは、たとえば、スクワット、歩行訓練、家庭復帰後の階段訓練などが挙げられます。

 

以下は、脳血管障害による片麻痺があり、自立歩行が困難な患者さんの例です。

心肺機能強化トレーニングとして自転車エルゴメーター30分、ハンドエルゴメーター20分を、筋力強化トレーニングとしてスクワット300回、ヒールレイズ(かかと上げ)100回、段差昇降100回、病棟自主トレーニング、さらに装具装着歩行訓練といったメニューを、午前・午後の2回行います。

 

このような徹底的な高負荷運動療法の効果は、実際に患者さんが回復することで徐々に示されています。


  • 高負荷運動療法における注意・前提

ただし、高負荷運動療法を行う際には、注意するべきこともあります。通常、運動に伴うリスクは大きくありません。しかし、以下のケースでは注意が必要です。

✓心臓弁疾患、未破裂大動脈瘤

✓血小板減少時

✓膵炎

✓炎症性疾患の急性期(診断が確定していない時など)

✓化膿性脊椎炎、脊椎や荷重骨が不安定な状態

など

 

繰り返しになりますが、治療としての運動療法の大前提は守ってください。少なくとも、疾病や傷害を持った患者さんの運動療法は、プロフェッショナルが施行することが必須です。

 

✓医師が患者さんを診察・診断し処方する

✓多職種でカンファレンスを行い、訓練前にメディカルチェックを行う

✓運動療法は熟練した理学療法士、作業療法士が行う

✓運動療法施行時は、医師が責任を担う

 

熟練されたリハビリテーション科の医師は「全身をみる」ことができます。リハビリテーション医療を円滑に行い、機能回復を実現するためには、全身状態をきちんと把握したうえで、一人ひとりの患者さんにあわせたオーダーメイドのリハビリテーション治療を処方する必要があるのです。

以下に、和歌山県立医科大学で実施している方法を提示します。

 

✓初診は必ず医師がシステマティックに診る

✓初診日夕に多職種カンファレンスを行い、問題点はすぐ解決する

✓毎朝の回診

✓診療科別・病棟別のカンファレンスへの参加

✓勉強会(症例検討会や英文抄読、画像カンファレンス、新患検討会、ランチョンレッスンなど)を職種関係なくそれぞれ毎週実施

✓訓練室回診、介助技術指導をすべての職種で実施

✓リハビリテーション科医、看護師、リハビリテーション関連職種で研究

 

「初診は医師が必ずシステマティックにみる」、これこそがリハビリテーション科医の真髄ともいえるでしょう。

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